暫く時は経ち、2007年某日。
なんの突拍子もなく、
シアは突然そんなことを言い放った。
メキシコ?今メキシコと言ったかコイツ。
あまりにも急な申告に、
流石のあなたも驚きを隠せない __
__ わけもなく。
もう何年もこのイカレ具合に
付き合ってきているし、
そもそもが彼女自身もイカレている。
今更こんなこと一つで驚く筈も無い。
見事に順応して見せ、
挙句の果てには軽口を叩いて見せた。
全く、なんて奴だ!
仕事中、何があってもブレないその精神は
紛れもなく此処から来ているのだろう。
かなり常識外れな兄妹間の談笑も終わり、
少し刻は進み 彼の姿は日本から消え去る。
_ そして、次に彼の姿が目撃されたのは
曰く メキシコ - イスタパラパ。
世界一治安が悪いと称されるメキシコの中でも
凶悪犯罪発生率が高く、最も危険なエリアの一つ。
そんな 黒く淀んだ世界の屑籠に、
一人の白き猛獣が解き放たれた。
黒い歴史が 一気に塗り替えられてしまう、
決定的な瞬間のはじまりであった。
... 彼は、あなたの兄としてでなく
B.O.C.の社長として此処を訪れた。
そんな彼を少々慮り、
此処での彼のことは 彼の仮名、仕事名 __
Kissel loverと。そう 呼ばせて戴こう。
さて ... あの 狂人、Kissel loverでさえ
身構えてしまう様な空気感。
全身の細胞が叫ぶ、
此処は危険であるという警告。
しかし、来てしまったからには
引く訳にもいかないのであって。
まあ、どうだとしても
俺ならイケるからいいか♪と
陽気に歩みを進めるKissel lover。
... その背後から、忍び寄る影。
覚悟!なんて言ってくれない。相手は本業だ。
気配を殺し、静かに忍び寄り、
人影が彼の真後ろに現れた。
_ 刹那、パァンッ と 乾いた銃声が響き渡る。
立っていたのは、Kissel loverの方。
懐に隠し持っていたらしい拳銃で
見事に人影の脳天をぶち抜いた。
勿論ノールックで。殺しの才能があると思う。
暗殺を謀った人影は、
情けなく倒れて冷たくなっていく。
笑顔でまだ温かい死体を
解体し始める、
その姿を見 早くも情報屋の耳に入る。
” 新たに現れた白髪の男には要注意 ”
そうして、彼は 初日にして
着実に知名度と勢力を上げていった。
_ どのくらい経っただろうか、
1年?3年?はたまたもっと?
細かいことは 知らないが、
ある程度勢力も拡大してきた頃。
B.O.C.に 盗みを働いた青年がいた。
社員の手により拘束された
ベージュの髪をした青年は、
未だ 強い眼光を放ち 此方を見据えている。
外見を見る限り、20代と見受けられる。
いつ死ぬかも 目の前の悪名高い男次第。
怖い筈だ。
なのに、Kissel loverの目を
じっと見つめて離さない。
... そんな 異端なる青年に興味を持ったのか、
Kissel loverは 彼の口枷を外し
少し口角を上げ 会話を試みる。
_ と、Kissel loverが口を開く
その前に彼は話し出す。
いつものKissel loverなら
この時点で射殺してしまうのだが、
今日は 機嫌が良いのか知らないが
黙って聞いている。
そう言って目を閉じ、
青年は来るべく死を迎える __
_ 筈 、だった。
何故かは知らないが __
彼は青年を気に入ってしまった。
青年も驚き目を開ける。
Kissel loverは笑顔で言う。
メキシコ、貧民。
親なんて勿論ロクにいないし、
名前なんて大層な物も無いし、
夢見たことすらない。
腹も満たされなければ、傷も癒えない。
そんな物より、今日の飯の方が良い。
そんな彼が、この世に生を受けてから
20年以上経った今 名前を授かるのは
一体どんな心境なのだろうか?
それは、彼のみが知ることである。
一つ 溜息をついて、
彼は答えた。
その答えに、Kissel loverは
満足気に頷いた。
さて ... この日こそが
狂人社長Kissel loverの
忠実なる部下、右腕が
誕生した日である。
社長のいない本部に座り、
カフェオレを少し飲みながら
副長アンバーは溜息を吐く。
あれからかなりの歳月が経ち、
波乱万丈なKissel loverに
彼も散々こき使われてきた。
いつの間にか支部は世界各国へと広がり、
B.O.C.は 世界有数の大企業となった。
彼は偉大なる副社長として知られ、
その以前の姿を知るものは
次第にいなくなった。
正直、悪くないと感じている。
あの頃と比べたら 一目瞭然、
毎日飯にはありつけるし
雨風に晒されない寝床だってあるし
毎日違う服を着れる。
なんて良い暮らしだろう?
やはりあの時死を選ばなくて良かったと、
カフェオレの味も知らぬまま、
今世を絶たなくて良かったと思う。
... でも、人間 欲望が満たされたら
さらに貪欲になるらしい。
現に俺は、
我儘な思いを抱いてしまっている。
しかし、今更何をほざいても
何ら変わることもないので
社長用デスクの上の花瓶に
ただ飾るだけでは勿体無い様な
美しく咲き誇る 白いスイセンの花束を
少々乱雑にねじ込んだ。
愚痴を吐きながら、
またカフェオレを一口飲んで
ぼそっと呟き吐き捨てた。
そんな彼の一言は、
銃声、奇声、そんな喧騒に
沈み切って やがて消えてしまった。
さぁて、今頃シアは
日本への着陸準備を始めたところ。
本当は、アンバーの事情も知っていて
笑顔でカフェオレに口を付けているのは
また … 別の話。
お久しぶりです、覚えてますか?!
久々の開店となりました。🥂
あれ?変な時間帯に更新来たな、と
思っているそこの皆さん!
実はですね、今回 舞台に合わせまして
メキシコ イスタパラパにて1/13の午後11時に
時刻を合わせてみました♪
リアルの時差を感じながら
読んでいただけると幸いです🐾(⁉)
また、1/13は作者の私 そして
古酒desgracia、通称シア、又の名をKissel loverの
誕生日でした!煙草の日ですね🚬
アンバー君の用意した花、白いスイセンは
1/13の誕生花で、花言葉は ” 尊敬 ” らしいですよ。
(電話でおめでとうと言われてその日に
飛び立っているのにバースデーネタなんて
おかしい!ですが、どうしても
入れたくなってしまう性分でして ...
少々目を瞑っていただけると嬉しいです🙄)
これからもゆるゆる開店にはなると思いますが
ご愛顧いただけると幸いです🐾
それでは、またのお越しをお待ちしております。
追記:
シアに暴れまくって貰っていたら
遂にR18指定が来てしまいましたね 笑
一応解除申請は出しておきますが
申請が通ることはないだろうなと思います(













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。