授業なんて要らないんじゃないか、と内心思うけど、この子達はこう見えて高校生。
要らないにしろ学ばなきゃいけない。
悟も授業をするって聞いたけど、務まるのか...。
私に向けられたスマホの画面を見る。
3人の会話を聞きながら確かに、と納得してしまう。
生徒だからなのか悟の事を理解している。
悠仁にそう聞くとガタッ、と椅子から立ち上がった
恵からの鋭いツッコミに思わず笑ってしまう
私たちに携帯を向けてリップについて話す。
頭に浮かんだものを言おうとした時、前のドアから人の気配を感じた。
皆にしー、と人差し指を立てて静かにドアに近づく。
ガラ、とドアを開ける。
はは、と乾いた笑いをした悟。
あぁ...と青ざめた顔をした伊地知さんがすぐに頭に浮かぶ。
子供が泣きつくように私を強く抱きしめる。
後ろから聞こえる言葉に少しだけ笑う。
悟をはがし、手を握る。
一瞬で消えた悟に恵がため息をついた。
あんな所が可愛いんだけどね。
口元が緩み、よしっと意気込んだ。
END
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!