「お前の姿は今、魔術をかけた俺以外には
見えないのだからな。」
そう言ってカルエゴ先生は自身の机に座ってしまった。
試しに声を発してみるが、誰もこちらを見ない。
どうやら私の声も聞こえないようだ。
高度な認識阻害とは言っていたけれど、
位階8のカルエゴ先生によれば
こんな魔術すらかけれるのか と素直に感嘆する。
学年に二三人いるダリ先生ガチ恋勢とか、
絶対喜ぶだろうに、
私がこんな特権を手に入れるなんて
ほんの少し申し訳ない気持ちだ。
幽霊が存在するのなら、こんな気分?
案外私としては楽だし、生きやすい気分だけれど。
何もしないのは暇なので、うろちょろ職員室を
探索することにしよう。
職員室の机に置かれたテストの答案用紙を見たときは、
テストあったんだ と当然の如く他人事にそう思った。
マグカップに注がれた湯気の立っている珈琲からは
砂糖の色はなく黒一色なのをみたときは、
ほんの少し人間性が見えて親近感が湧いた。
「 対不審者 報告書 」
その書類を見たとき 私は何を思ったのだろうか。
「 生徒に心を開いてもらうには 」
そう付箋が沢山貼られた本が、警備教師さんの
机に置いてあった時、私は何を感じただろうか。
「 _年_組 虐めについて 」
それを見たとき、私は、報告書を見れたのだっけ。
「 花壇 修理費用 」
その言葉を見た時、私は罪悪感を感じたっけ。
いつかの日に 私にかけてくれたあの教師服が、
ダリ先生の椅子に掛けられていたのをみたとき。
私の声色が どうか震えていなかったことを
祈るばかりでしか あの時を思い出せなかった。
何故か捨てれず持っていた缶ジュースを、
潰さないように握りしめた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!