佐久間さんの話の飛び具体に驚きながらも、会話を聴く。
佐久間さんとの、人形の話でも出てきた『コア』。
これは人形の動力源である宝石のような物体のこと。
まだ詳しいことは判明していないが、なにしろ特別な力を持っているため、私たち人形師がつくった人形の心臓部分にはめ込むと、その人形を動かすことができる。
それが受賞した景品となっているのは、その希少性のせいだ。
魔法でも再現できないような不思議なもので、代々、ある家系が守っており、毎年この期間には少しずつ提供してもらっているそうだ。
命に手に入れるのに相応しい人形でないともったいないから、という理由でこの方法になったが、個人的には賢い考えだと思う。
だが実際に動かしてみないとどの人形が良いかわからないため、私たち出展者には1人1つ、そのコアのカケラが渡される。
とても小さくて、1日弱もつかどうかというほどのもの。
審査されるにはこれで充分だが、なるほど、佐久間さんのように人形ともっと過ごしたい人にとっては、受賞景品であるコアは欲しくてたまらないものなのか。
私にとっては受賞を重ねてプロになることの方が大切で、コアは貰えるから貰っておく、という程度のものだった。
価値感の違いを感じておもしろい。
気にしていなかったがゆえの初耳情報に驚いた。
私の表情が少し暗くなった事に気づいたのか、佐久間さんはうーんと唸りながら頭をガシガシとかいて、ふと笑顔をつくった。
次々に私の人形が置いてある方向に向かって歩き出す。
佐久間さんがこちらに差し伸べた手を取らない、なんてことはできず、しかたなく、駆け足でみんなを追いかけた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!