長尾side
レギュラー番組の収録が終わった。お疲れ様です、というスタッフさんの声に、メンバーも頭を下げながら楽屋へ戻っていく。
俺もそれに続きながら、誰にも気づかれないように小さく息をはいた。
…よかった。なんとか無事おわれた。
実は今日。誰にも言ってなかったけど、朝からちょっとだけ調子が悪かった。
とは言っても微熱とほんの少し体がだるいだけで、そんな大したことはなかってんけど。
途中で熱上がったりしたらどうしようってちょっと心配やったから、そうならなくて一安心。
今日は仕事これで最後やし、帰ったらすぐ寝よ。
…なんて思ってたのに。
西畑「あれっ、◯◯さん?」
藤原「うわー、お久しぶりです!!」
楽屋に帰る途中、大吾くんたちの声に顔を上げると、そこにはデビュー前からよくお世話になってた番組のスタッフさんたち。
最近はあんまりお仕事で一緒になることがなかったから、顔を合わせるのは久しぶりやった。グループ全体だと数年ぶりくらいかも。
なんて思いながら、年上組が中心に話しているのをぼんやりと眺める。
…そのうちに、どうやら会話が弾んでいて。
気づけば、今日この後みんなで飲み行かない?なんて誘われていた。
大橋「えー行きたいです!みんな行けるー?」
行きたい!俺も!なんて声が続く中、俺はすぐには答えられなくて。
大橋「謙杜は?行ける?」
長尾「…え、っと」
…ほんとのことを言うと、今日はもう早く帰って家で休みたかった。
微熱とはいえ、今もちょっとしんどい。
けどそんなこと、メンバーさえ誰も知らへん。俺1人断ったらノリ悪いって思われるかな、なんて。
そう思ったらもう、断る言葉は出てこなくて。
長尾「俺も行けるっ」
大橋「よしゃ、じゃあ全員やな!」
お店と時間を聞いて、俺らは一旦楽屋へ戻った。
行くって決めたのは自分なんやけど、帰れないって思ったら体がずんと重くなる感じがした。
長尾(…しゃーないよな。人付き合いって大事やし。)
体調もそんな悪いわけじゃないし、大丈夫。
明日だってオフだし。
大丈夫、大丈夫って頭の中で並べて、自分を奮い立たせた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!