第31話

31話
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2024/07/20 03:04 更新
俺も紫耀じゃなきゃ意味がないくらいに、好きだと思う。


このまま、紫耀の言葉に頷けたら。


素直になれたら。


それでも、怖いのは、守ってきた何かが壊れてしまうんじゃないか。


一歩踏み込んでしまったら、もう取り戻せないものがあるのではないか、と不安になってしまうからだ。



「ホントに戻れなくなっちゃうよ……」


紫耀の手の平が温かくて、優しくて、キレイな目は俺をきちんと見ていて。




「戻らないよ。
一緒に、二人でこれから、作るんだよ…」



その力強い言葉は、新しい道を作り上げている紫耀だからこそ、嘘がなくて、キラキラして見えた。



……俺は?


寂しくて、慎ちゃんに縋ってしまうぐらい、弱くて、誰かのせいにしないと、ひとりで立てなくなってしまうほど、狡くて。


そういう自分を認めたくなくて、もがけばもがくほど、認めるしかなくて。



こんな俺に気がついたら、紫耀は離れていくんじゃないか。



不安なのは、紫耀にじゃなくて、自分に。


「俺、紫耀が思ってるようなヤツじゃない、よ…。」




本当の俺を知ったら、幻滅するよ、と続けると、紫耀は可笑しそうに笑った。



「俺だって、海人が思ってるようなヤツじゃないかもよ?」



「でも、俺、そういうの全部、海人と乗り越えたい」




俺の頬を両手で挟むと、まっすぐに俺を見て、そう続けた。



「どんな海人のことも、好きだよ。」



鼻と鼻がくっつくほど、紫耀が近くにいる。


「海人は?」



「………好きだよ」


息が唇にかかるほど近くて、誤魔化しても全て伝わってしまうほどで。


「どんな紫耀も、好きだよ…」


そっと紫耀の目をみると、嬉しそうで、すごく幸せそうで、その目を見れただけで、もう他に何もいらなかったことに気がついた。



触れ合うほど近かった唇は、当たり前のように重なって。


優しいキスがどんどん深くなっていって、気持ちが伝わってくる。



「もうさ、好き以外要らないくらい、好きなんだよ…」




唇が離れて、紫耀が少し苦しそうに、呟いた。



ゆっくりと抱きしめられて、背中にまわる腕は、どんどん強くなって、俺の肩が濡れていくのが分かった。



「もう、それだけで良くない……?」


泣きながら、俺を抱きしめる紫耀に、俺はかける言葉が見つからなくて。



苦しいのは自分だけだと思ってた。

紫耀は、とっくに前を見て、俺の事なんか過去にしているのだと思っていた。



俺が怖くて不安で、どうしても進めなかった事が、こんなにも紫耀を苦しめてしまっていた、なんて、想像もしていなくて。


俺が思うより、ちゃんと俺を想っていてくれてたんだと、実感して、嬉しいのに苦しくて。



俺にも、紫耀の側にいることが、何かできる事があるのかもしれない、と思える。



そうありたい。
強くなりたい。

そう思わせてくれる存在に出会えた奇跡に、ただ感謝する。






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