第55話

「母親」
213
2025/02/03 11:40 更新
フブキ
フブキ
あなたの母の姫川フブキです。
息子がいつもお世話になってます。
先輩方と合流した後、食堂に案内された母さんが、そう言いながら深々と頭を下げる。灯部先輩は、「うひゃ〜!」と悶えながら母さんに詰め寄った。
修
ほほほ本当の本当に姫川教授だ〜!
てか頭上げて!
いつも比較的落ち着き払っている麗ちゃんでも、流石にこの展開は予想していなかったようで、めちゃくちゃ取り乱して、早口で母さんがどんな人かを説明しだした。
麗志郎
麗志郎
ひ、姫川教授といえば!このY学園の改修工事や新設エリアの企画、そして何と言っても「シン・ガッコウガーY」のシステムの生みの親であり管理責任者!めっちゃ大物じゃないすか!
フブキ
フブキ
フフン、私も世に名が知れてきたようね。
よほど褒めちぎられて嬉しいのか、母さんはえっへんと言わんばかりの嬉しそうな様子で出されたハーブティーをすする。
フブキ
フブキ
ん、この紅茶美味しい!
修
勿論でございます!そのお紅茶は、エマ様直々にブレンドした一級品ですので。
フブキ
フブキ
へえ、エマが…。
ふと、「あれ?」とまた母さんに対して違和感を感じる。
「エマ」という学園長の名を聞いた途端、母さんの表情が少し曇ったような気がした。前に聞いたことがある。Y学園の学園長と母さんは、中学が同じY学園で学園生活を共に過ごした同級生であり、ヒロイン役でのライバルであり(今でも意味がわからない)、親友だと。親友が作った紅茶なのに、なんでそんな表情をするんだろう。
ボルタ
ボルタ
姫川殿は、何をなさりにY学園へ?
いつもとは似ても似つかない冷静な声で敬語を使ったチョコボー会長にも別の意味で違和感を覚える。それはそれでギャップ凄すぎて推せる…!
フブキ
フブキ
シン・ガッコウガーYの定期点検と、現在研究しているもののレポートを提出するついでに、エマの顔を見に来たの。しばらく会ってないものでね。
フブキ
フブキ
そういえば、「百鬼姫」は何処どこかしら?最近あの子とも話してないのよねー。
母さんがいきなり話題を変えたかと思うと、意味不明な言葉を放つ。俺は首を傾げた。
(なまえ)
あなた
百鬼姫?
修
玄彗アイツのもう一つの前世だった
はずですけど…。
すると、ドアの奥から、階段を何かがギシギシと降りてくる音がした。当然、今まで部屋で寝ていた鬼頭副会長が降りてきたのだ。
修
げ、噂をすれば…。
麗志郎
麗志郎
ていうか、今の鬼頭副会長姫川さんの前に出して良いんですか?今日休日だからOFFモードになってるんじゃ…。
ボルタ
ボルタ
いつもの「キチキチテキパキ」じゃなくて「ゆるゆるだらだら」だからな〜。今のアイツなら、たとえ姫川殿であっても礼儀なんてもん重んじるはずがねぇ。
修
俺とボルタ会長で起こしに行った時は全然微動だにしなかったのに、なんでこんな時に…!
ゆったりとリビングのドアが開けられる。そこには、膝くらいまである長い髪をボサボサにして、目をパチパチさせて眠そうにしながら入ってきた鬼頭副会長がいた。
玄彗
玄彗
あ゙ー、まだねみぃ…。
まだ寝ぼけているのか、とてとてと歩幅を小さくしてふらつきながら歩いている。
すると、ソファに座っていた母さんが、鬼頭副会長を見るなり「あっ!」と嬉しそうに言う。
フブキ
フブキ
いた!百鬼姫ー!
母さんが鬼頭副会長に向かって手を大きくブンブン振る。それにやっと気づいた鬼頭副会長が、驚きの表情を少し浮かべた後、目をゴシゴシとこすって再度母さんを見た。
玄彗
玄彗
…フブキ姫、テメェなんでここにいんだ。
フブキ
フブキ
はは、相変わらずアンタも冷たいね!椿姫やビーチ姫とは最近連絡取り合ってる?東北Y学園とか南国Y学園とか、遠すぎて最近行ってないんだよねー。
玄彗
玄彗
まあ、すげぇ寒かったりすげぇ暑かったりするからな。元々の環境がキビいから行きにくいってのもあるし、最近は全然連絡取り合ってねぇわ。
玄彗
玄彗
極フブキ姫とはちょいちょいメール
送り合ってるけどな
フブキ
フブキ
あー、やっぱダーク属性同士
引かれ合っちゃった感じ?w
玄彗
玄彗
いや、アイツがヘビ子に惹かれたっぽい。
ヘビ子
ヘビ子
しゅぴー♡
(訳:アタシはあるじ一筋だけどねん♡)
フブキ
フブキ
え、色々むなしー…。
二人と一匹で盛り上がって談笑しているのを俺達はしばらく呆然と見ていたが、遂に我に帰った麗ちゃんがツッコむ。
麗志郎
麗志郎
いやそこ面識あったんかいっ!
修
てか何で今まで玄彗もあなたも黙ってたんだよ!?世間でも有名な天才発明家かつ医者だぞ!お前らが姫川教授の知り合いだとわかっていれば、いち早くお会いして科学や発明について共に語らいたかったのに〜!
次いで麗ちゃんのツッコミで我に返った灯部先輩が鬼頭副会長とあなたに迫ってつらつらと言葉を並べていく。
玄彗
玄彗
いや、だって、今までフブキ姫と知り合いなのか?って事を皆が聞いてこなかったから、じゃあ言わなくてもいいかなー、と思って…。
(なまえ)
あなた
右に同じくです…。
麗志郎
麗志郎
そりゃあ姫川教授と君らが知り合いだなんて夢にも思わないよ!
修
ハードル高すぎだわクソがぁ!
ワチャワチャバッタンバッタンと俺達が騒いでいる横で、チョコボー会長がティーポットを持って母さんの隣にやってくる。
ボルタ
ボルタ
うちのものがご無礼を、姫川殿。
おかわりはいかがなさいますか?
あのチョコボー会長が敬語を使っているあたり、やはりうちの母はかなり凄い人らしい。
それはそれとして…。
修
ぎゃぁぁぁ!?ボルタ会長紳士すぎ〜!!
(なまえ)
あなた
いつもとのギャップの差よ!!
マジで尊死するて!!
供給過多でタヒぬから!
修
「おかわりはいかがなさいますか」!?
ボルタ会長をおかわりしてぇっす!
ほんとO・SE・RU☆
あまりの衝撃に耐えられずに俺と灯部先輩が血を吐きながらバターンと後ろに倒れる。
すると、母さんがフフッと笑い出した。
フブキ
フブキ
あなたが楽しくやれてるようで、お母さん安心しちゃった。
そして、生徒会のメンバーに向かって姿勢を正した後、ペコリと頭を下げた。
フブキ
フブキ
こんな息子だけど、
どうか仲良くしてあげて下さいね。
麗志郎
麗志郎
めっちゃ恐縮ですよ。頭上げて下さい。
そして、麗ちゃんが顔を上げた母さんと目を見合わせる。
麗志郎
麗志郎
あなたには、いつも僕が助けられてるくらいです。彼の隣にいると、何故か悩みが全部吹き飛んじゃうっていうか。
修
それめっちゃ分かります!よく僕の実験代になってくれるくらい優しいし!
ボルタ
ボルタ
「修が無理矢理ラボに連れ込んでる」
の間違いじゃないのか?
玄彗
玄彗
まあでも、良いやつだよな。
(なまえ)
あなた
み、皆…!
麗志郎
麗志郎
かなり突っ走るからこっちも
苦労してるけどな。
(なまえ)
あなた
ゔ…すみません…
フブキ
フブキ
フフフ
また母さんが笑う。そして、俺の隣に来てポンポンと背中を叩いた。
フブキ
フブキ
聞いたわよ、関西行くらしいわね。
存分に暴れてやりなさい!
(なまえ)
あなた
おう、上等だ!
俺と母さんは、互いにニカッと笑った。
玄彗
玄彗
にしてもやっぱり似てたな、
あなたとフブキ姫
母さんが「学園長に用がまだあるから」と去っていき、皆で昼食のハンバーガーを食べていた時に鬼頭副会長はそう言った。あまりの不意打ちに、一瞬俺はきょとんとする。
(なまえ)
あなた
え?
麗志郎
麗志郎
たしかに、二人とも
どこか豪快だったもんね。
修
やっぱり姫川教授の息子って
感じですよね〜。
(なまえ)
あなた
え!?そんなに!?
参ったな。やっぱりあの違和感は気のせいだったのだろうか。だが、今はそれどころではない。明日は関西Y学園に行く日だ。バッチリ戦えるようにたくさん食っとかないと!
もう一方の春雨チーズ餃子ハンバーガーをシャクッと一口。くぅ〜!流石灯部先輩。今日の料理も格別に美味かった。
それから数十分後、学園長室にて。
コンコンコン。ドアノックが3回、学園長室に響く。
金髪のその女性は、飲んでいたハーブティーをコトリと皿の上に置き、「どうぞ。」とドアの奥にいるであろう人に声をかけた。学園長室に1つしか設置されていない両開きのふすまがガラリと開く。
フブキ
フブキ
久しぶりね、エマ。
フブキの顔を見た途端、学園長はパアッと明るく笑った。
大王路エマ
大王路エマ
フブキちゃん!久しぶり!
フブキ
フブキ
最近体調はどう?
大王路エマ
大王路エマ
ええ、だいぶ良くなったわ。
たまにあの時の事を思い出してしまって、気分が悪くなるときもあるけど、ハーブティーを飲んで己を落ち着かせてるのよ。
フブキ
フブキ
そっか。
フブキが、ふと学園長専用の机の隅にある花瓶に目をやる。そこには、白い花瓶に1輪だけ生けられたカンパニュラがあった。
フブキ
フブキ
……ねえ、エマ。
あれから、もう11年も経ったよ。
大王路エマ
大王路エマ
…ええ
フブキ
フブキ
まだ、あの子のもとに帰ってあげれないの?
フブキが温かくも心配そうな眼差しで学園長を見つめる。
大王路エマ
大王路エマ
……私なりに、考えてみたんだけどね。
もう、いいの。
大王路エマ
大王路エマ
今更私にあんな事を言われても、あの子が戸惑うだけよ。それに…、私には、あの子の隣にいてあげれる資格もないし、自信も、ないわ。
大王路エマ
大王路エマ
フブキちゃんには、いっつも迷惑かけちゃって、本当に、ごめんね…。
フブキ
フブキ
エマ…。
大王路エマ
大王路エマ
ごめん、また気分
悪くなっちゃったみたい。
今日はもう引き下がってくれないかしら。
フブキ
フブキ
…………分かった
学園長がニコリと微笑む。
大王路エマ
大王路エマ
今日は来てくれてありがとね。
嬉しかったわ。
ストンと学園長室の襖を閉めて部屋から出る。そして、さっきのエマの顔が、フブキの頭に蘇る。
フブキ
フブキ
……全く、あの子は昔っからシャイなんだから。自分の事を素直に吐き出せてない。
フブキ
フブキ
待ってなさいよ、エマ。
私達、親友でしょ。
そして、肩掛けカバンからスマホを取り出し、どこかに電話をかけ始める。
フブキ
フブキ
………もしもし、久しぶりね。
元気にしてた?
フブキ
フブキ
………そう。
実は、エマのことで相談したくって。
フブキ
フブキ
頼まれてくれないかしら、コマ君。

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