あの後、鬼頭副会長が灯部先輩に話を通して、その日の放課後に資料室に来てくれることになった。「妖結界」というワードを聞いた途端、灯部先輩が興奮を抑えきれていなかったのが電話越しでも分かるほどだった。
灯部先輩と鬼頭副会長がバチバチと睨み合いを始める。そのままにしておくと殴り合い蹴り合いのいつもの喧嘩になりそうなので、僕があわてて止めに入る。
妖結界に興味津々な灯部先輩が、さっきまで火花を散らし合っていた鬼頭副会長を置いてそそくさと赤の資料棚の前に行き、ストンとしゃがむ。
しばらくそれを観察した後、不意に振り返ってこちらに視線を向けて、謎の妖結界について話しだした。
修の呼びかけで、彼の愉快な仲間の機械たちがそれぞれの行動に取りかかり始める。
それからすぐにアングリーとサッドが色々な器具が入った道具箱を抱えるように持ってきて、スケーリーとグラドがその器具を用いて何やら結界をコツコツといじり始めた。不思議なことに、解除の作業中はあの電流も走らなかった。やはり灯部先輩の科学の力か何かが効いているのだろうか。
あっという間に10分ほど経ったところで、灯部先輩から声が掛かる。
僕は朱雀の妖聖剣を取り出し、妖怪ウォッチに近づける。
カシャンとアークを回して鍵を開ける音が資料室に響き渡る。それと同時に、鍵穴から紫色の煙がシュワシュワと立ち上った。溢れ出てくる気持ちの悪い妖気を灯部先輩がいち早く察知して、素早く後ろの方に下がる。
横をちらりと見ると、鬼頭副会長の左手から水の玉がキュルキュルと音を立てて床に流れていて、右足からはその水を凍らすように黒い氷がパキパキとできていっていた。
鬼頭副会長が煙の怪異に向かって高圧縮した水を撃つ。見事に煙の怪異に命中した。だが、それもつかの間で煙の怪異がにたりと笑う。
次の瞬間、煙の怪異の周りを紫の電流が走ったかと思うと、それは水のビームを高速で伝って鬼頭副会長へ牙を向けた。一瞬で鬼頭副会長の体に紫色の電流が走る。
あまりのショックだったのか鬼頭副会長が地面に突っ伏す。その姿を見下ろしていた灯部先輩が高らかに笑い出した。
僕が変身の言葉を唱えて妖聖剣を突き刺す。辺りが一瞬でピンク色の光に包まれてすぐに消えたかと思うと、僕が自身の身に憑依させた剣武魔神・朱雀が現れた。
そして、二刀に分かれたスザク蒼天斬の柄と柄の端をくっつけてぐるぐると高速で回し始めた。すると、雷雲の怪異の周りだけに竜巻が起こり、あっという間に玉座の間に怪異は放り出された。
いつの間にか変身を終えて玉座の間に来たDeVAがスッと右手を上げたと同時に、アングリーとサッドの手のひらが怪異に向けられる。そして、何やら手のひらの中心にある水晶にエネルギーをためだした。
そうDeVAが唱えると、アングリーとサッドから炎が溢れ出て、怪異の体を蝕み始めた。
DeVAがにたりと口角を上げる。
シュワシュワと雷雲の怪異が蒸気を出し、跡形もなく姿が消えてしまった。ふと、怪異がいた場所の床を見ると、何やらキラキラしたものが落ちていた。
変身を解き、近づいてそれを拾ってまじまじと見る。
透き通ったその紫色の宝石の中心に、行書体で「雷雲」と書かれている。
変身を解いた灯部先輩が僕の隣に近寄って、宝石を覗き込むように見る。
そうこうしていると、資料室からひょっこりと鬼頭副会長が現れた。手には何やら分厚そうな本を2つ抱えている。
そう言うと、鬼頭副会長が抱えていた本二冊を僕達の方に見せる。表面は金属のような硬そうなものでできており、人魂の模様や所々に小さな宝石がある。少なくとも、僕達が一般に見ている本とは似ても似つかないものだった。
灯部先輩と鬼頭副会長が再びバチバチと火花を散らし合う。
再び二人の睨み合いを止めるべく、僕は先輩達のほうに駆けていった。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。