第51話

番外編 雀と亀③
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2025/01/10 14:47 更新
修
で、僕の出番ってわけですね!
あの後、鬼頭副会長が灯部先輩に話を通して、その日の放課後に資料室に来てくれることになった。「妖結界」というワードを聞いた途端、灯部先輩が興奮を抑えきれていなかったのが電話越しでも分かるほどだった。
玄彗
玄彗
ああ、くれぐれもヘマして爆破起こしたりするなよ。
修
誰に言ってんだっつーの!
こちとら「世紀の天才科学者」だぞ!
玄彗
玄彗
「ヲタ活中毒のマッドサイエンティスト」の間違いじゃないのか?
灯部先輩と鬼頭副会長がバチバチと睨み合いを始める。そのままにしておくと殴り合い蹴り合いのいつもの喧嘩になりそうなので、僕があわてて止めに入る。
麗志郎
麗志郎
お二人共、本来の目的を忘れないで下さい!妖結界を解除して学園の謎を解くんでしょ!
修
あ、そうだった!妖結界!
妖結界に興味津々な灯部先輩が、さっきまで火花を散らし合っていた鬼頭副会長を置いてそそくさと赤の資料棚の前に行き、ストンとしゃがむ。
しばらくそれを観察した後、不意に振り返ってこちらに視線を向けて、謎の妖結界について話しだした。
修
結界が張られてから十数年ほど経っているようですね。どこからかは分かりませんが、妖エネルギーを吸引して封印の糧にしているようです。かなり旧式のものなので、簡単に解除できると思いますよ。
修
アングリーとサッドは僕のラボから必要な器具を、スケーリーとグラドは封印解除のお手伝いをお願いします。
修の呼びかけで、彼の愉快な仲間の機械たちがそれぞれの行動に取りかかり始める。
玄彗
玄彗
どれくらいかかる?
修
解除自体は10分程度ですが、念のため二人共警戒してて下さい。
麗志郎
麗志郎
「警戒」って?
修
ものによっては解除した途端に怪異が解放されるケースもあるので、もしもの時の戦闘員になってほしいんです。
玄彗
玄彗
相分かった
それからすぐにアングリーとサッドが色々な器具が入った道具箱を抱えるように持ってきて、スケーリーとグラドがその器具を用いて何やら結界をコツコツといじり始めた。不思議なことに、解除の作業中はあの電流も走らなかった。やはり灯部先輩の科学の力か何かが効いているのだろうか。
あっという間に10分ほど経ったところで、灯部先輩から声が掛かる。
修
あとはこのアークを鍵穴に指すだけで、妖結界は解除されます。
玄彗
玄彗
鳥養麗志郎、臨戦態勢に入れ。
麗志郎
麗志郎
はいっ!
僕は朱雀の妖聖剣を取り出し、妖怪ウォッチに近づける。
修
では、参ります!
カシャンとアークを回して鍵を開ける音が資料室に響き渡る。それと同時に、鍵穴から紫色の煙がシュワシュワと立ち上った。溢れ出てくる気持ちの悪い妖気を灯部先輩がいち早く察知して、素早く後ろの方に下がる。
修
やっぱり、一緒に封印されていた怪異の妖エネルギーを吸って封印が成り立っていたんですね。どうりで、こんな旧式のもので十数年も封印が解けなかったわけです。
玄彗
玄彗
これはクロの怪異で確定だな。
横をちらりと見ると、鬼頭副会長の左手から水の玉がキュルキュルと音を立てて床に流れていて、右足からはその水を凍らすように黒い氷がパキパキとできていっていた。
玄彗
玄彗
鉄槌を下すお時間です
鬼頭副会長が煙の怪異に向かって高圧縮した水を撃つ。見事に煙の怪異に命中した。だが、それもつかの間で煙の怪異がにたりと笑う。
怪異
おやおヤ、亀が引っかかったナ
次の瞬間、煙の怪異の周りを紫の電流が走ったかと思うと、それは水のビームを高速で伝って鬼頭副会長へ牙を向けた。一瞬で鬼頭副会長の体に紫色の電流が走る。
玄彗
玄彗
ぐっ……!?
麗志郎
麗志郎
鬼頭副会長!
修
……そうか、あれは「煙の怪異」なんかじゃない!「雷雲らいうんの怪異」ですよ!
修
雷属性と水属性は相性が悪すぎる。つまり、鬼頭副会長は水を無闇に出せないし、水が必要な「黒氷ブラック・フリーズン」も実質使うことは不可能になったってことですね…。
玄彗
玄彗
なんとか得意の足技で乗り切ることは…!
修
相手は雲なんでノーダメージです!
玄彗
玄彗
いや鉄槌下せんのかい!さっき「鉄槌を下すお時間です」とかかっこよく決めちゃったのに下せんのかいっ!
あまりのショックだったのか鬼頭副会長が地面に突っ伏す。その姿を見下ろしていた灯部先輩が高らかに笑い出した。
修
んじゃ鬼頭副会長の手柄は僕がもらいますね!僕達が戦ってる間、せいぜい黒氷でかまくらでも作っておねんねしてろよ〜。それではお大事に〜w
玄彗
玄彗
修、後で覚えてろよ…(ーー゛)
修
それじゃ、鳥養君。剣武魔神・朱雀を憑依させて、強風であの怪異を資料室から出してくれませんか?ここでの戦闘はあまりにも狭すぎる。
麗志郎
麗志郎
分かりました。とりま、生徒会室玉座の間に移動させます!
僕が変身の言葉を唱えて妖聖剣を突き刺す。辺りが一瞬でピンク色の光に包まれてすぐに消えたかと思うと、僕が自身の身に憑依させた剣武魔神・朱雀が現れた。
剣武魔神・朱雀
剣武魔神・朱雀
事情はアヤツから聞いている。
私に任せよ!
そして、二刀に分かれたスザク蒼天斬の柄と柄の端をくっつけてぐるぐると高速で回し始めた。すると、雷雲の怪異の周りだけに竜巻が起こり、あっという間に玉座の間に怪異は放り出された。
剣武魔神・朱雀
剣武魔神・朱雀
玉座の間にあやつを移動させたは良いものの…物理攻撃が全く通用しないあやつに、どうダメージを与えられるのだ…!
DeVA
DeVA
ありがとな、スザク!
あとは俺に任せろ!
いつの間にか変身を終えて玉座の間に来たDeVAがスッと右手を上げたと同時に、アングリーとサッドの手のひらが怪異に向けられる。そして、何やら手のひらの中心にある水晶にエネルギーをためだした。
DeVA
DeVA
"ワイルドファイヤ"!
そうDeVAが唱えると、アングリーとサッドから炎が溢れ出て、怪異の体をむしばみ始めた。
怪異
な…なぜ私の体が消滅し始めている…!?
DeVAがにたりと口角を上げる。
DeVA
DeVA
ふふふ…なぜだか教えてやろうか?
DeVA
DeVA
状態変化が起きてるんだよ。雲の主成分は液体の水だから、燃やして蒸発させれば水蒸気…俺達の目では見れない気体になるんだ。
DeVA
DeVA
つまり、雲じゃなくなるお前は「雷雲の怪異」として機能しなくなり消滅するってわけだ。
DeVA
DeVA
「水の状態変化」…
小学校で習わなかったか?w
剣武魔神・朱雀
剣武魔神・朱雀
流石DeVA殿!
怪異
貴様らぁぁ…ウガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!
シュワシュワと雷雲の怪異が蒸気を出し、跡形もなく姿が消えてしまった。ふと、怪異がいた場所の床を見ると、何やらキラキラしたものが落ちていた。
変身を解き、近づいてそれを拾ってまじまじと見る。
麗志郎
麗志郎
これって…宝石?
透き通ったその紫色の宝石の中心に、行書体で「雷雲」と書かれている。
修
やっぱり、今回もあったんですね。
変身を解いた灯部先輩が僕の隣に近寄って、宝石を覗き込むように見る。
麗志郎
麗志郎
灯部先輩、これって何なんですか?
修
実はまだ研究中で…毎回怪異を倒したら出てくるものなんですけど、使い道がよく分からないんですよ。
修
僕らは、毎回敵が「落とし」ていく「飴玉」のような宝石という意味で、「ドロップ」と呼んでいます。
麗志郎
麗志郎
へぇー…にしても本当に綺麗だな。
そうこうしていると、資料室からひょっこりと鬼頭副会長が現れた。手には何やら分厚そうな本を2つ抱えている。
玄彗
玄彗
無事に消滅したみたいだな。
あ、またドロップ落としていったのか。
麗志郎
麗志郎
鬼頭副会長!雷の攻撃受けてましたけど、大丈夫ですか?
玄彗
玄彗
私の自慢のサラストがアフロになってしまった事以外は大丈夫だ。
麗志郎
麗志郎
それ本当に大丈夫なんですか!?
玄彗
玄彗
う…本当はだいじょばないが、お前達に見せたいものがあってな。
そう言うと、鬼頭副会長が抱えていた本二冊を僕達の方に見せる。表面は金属のような硬そうなものでできており、人魂の模様や所々に小さな宝石がある。少なくとも、僕達が一般に見ている本とは似ても似つかないものだった。
麗志郎
麗志郎
これ何ですか?
玄彗
玄彗
赤の資料棚に入っていたものだ。資料棚はこの2冊しか入ってなかった。
麗志郎
麗志郎
じゃあ、これが学園の重大機密…?
玄彗
玄彗
この鉄の塊が重大機密とは思えんが、封印されてるほどだったしな。修、これの解析を明日までに終わらせれるか?
修
ええ、できますとも。
僕に任せて下さい!
玄彗
玄彗
念押ししておくが、爆発させるなよ。
修
だ・か・ら!
「世紀の天才科学者」つってんだろが!
玄彗
玄彗
「推し活中毒のマッドサイエンティスト」の間違いだろうが。何回も言わすな。
灯部先輩と鬼頭副会長が再びバチバチと火花を散らし合う。
麗志郎
麗志郎
全く…仲が悪いなあ…
再び二人の睨み合いを止めるべく、僕は先輩達のほうに駆けていった。

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