太宰治との、あの心臓が止まりそうな
夜景観測から帰り、
探偵社の寮で深い眠りに落ちたはずだった。
……けれど、次に意識が浮上したとき、
あなたの現苗字を包んでいたのは、
安価な綿のシーツではなく、
肌に吸い付くような最高級シルクの感触だった。
微かに漂う、高価な香水と古い消毒薬の混じった匂い。
ゆっくりと目を開けると、
そこには天を突くような高い天井と、
豪奢なシャンデリア。
そして___
鈴を転がすような、けれど勝気な少女の声。
視線を落とすと、
真っ赤なドレスに身を包んだ金髪の美少女が、
あなたの現苗字の顔を覗き込んでいた。
あなたの現苗字は跳ね起き、
乱れた髪を整えながら周囲を確認した。
外面は一瞬で「ミステリアスな女子」
へと切り替える。
エリスがクスクスと笑いながらあなたの現苗字の腕を引く。
その時、部屋の奥から、低く、
湿り気を帯びた男の声が響いた。
影の中から現れたのは、白衣を羽織り、
手に手術刀を弄ぶ男。
ヨコハマの夜の支配者、森鴎外。
森はデスクに腰掛け、組んだ指の上に顎を乗せた。
その瞳は、あなたの現苗字のすべてを
解剖しようとするかのように鋭い。
森がパチン、と指を鳴らす。
すると、執務室の重厚な扉が開き、
一人の黒い外套を纏った青年が入ってきた。
静かな、けれど絶対的な命令。
あなたの現苗字の視界に、かつてないほど巨大な
選択肢のウィンドウが展開される。
【選択肢】
A:芥川に「太宰さんは貴方を認めていますよ」と嘘をつく(生存率:5%/芥川の激昂を招く)
B:芥川の肺の状態と戦闘スタイルを分析し、最適な訓練法を提示する
C:エリスちゃんを盾にして、「リンタロウが怖い!」と泣きつく
D:森首領に「私を雇うなら、最高のドレスをエリスちゃんに着せてください」と条件を出す
あなたの現苗字は、スッと立ち上がり、
芥川の目の前へと歩み寄った。
羅生門の影が揺れる中、
彼女は冷徹な観測者の瞳で彼を射抜く。
殺気が膨れ上がる。
けれど、あなたの現苗字の心臓は別の意味で高鳴っていた。
ヨコハマの夜を統べる巨塔の中で、
あなたの現苗字の新たな『観測』が幕を開けた。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。