「水中で泳ぐ魚はね、ずっと待ってるんだよ。」
「炭酸が弾けるような、真夏の透き通ったレモンのような、そんな揺らぎをね。」
「ねえ、水面はさ。空か海かどちらなんだろうね。どちらの色に、近いんだろうね。」
「空は翡翠のように透き通って、海は紘く遠くに滲んでいてさ。」
「それが、ほんとうに、言葉では表せないくらい、美しかった。」
「水の中で生きる魚には、どちらもきっとわからないだろうね。」
「ーーーいつかのどこかで生きる、言葉を愛した誰かへ。」
「こっちは、あいにくの雨でね。下水道みたいな、苦しくて重たい雨が降ってる。」
「だから、どうか。」
「あなたは、桜が咲き誇るいつかの春のなか、」
「何も奪われることなく、何も踏み躙られる事なく、どうか穏やかな場所で生きて欲しい。」












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。