第29話

#16
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2025/02/09 07:27 更新

家でおとなしくしていると、インターホンが鳴った。

(なまえ)
あなた
宅配…?


なんか頼んだっけ。


画面を見てみると、オーターさんが立っていた。

(なまえ)
あなた
(うわ…)


最悪。完全に忘れてた。オーターさんのこと。


まだ退勤の時間じゃないよね?わざわざ早退して追いかけたってこと?



…どうしよ。


居留守を使うわけにもいかないので、とりあえず応答した。

(なまえ)
あなた
…はい
オーター
オーター
《私です。オーターです》


画面越しにくぐもった声が聞こえてきた。

(なまえ)
あなた
すみませんけど私、今熱がありますので
オーター
オーター
《ならインターホン越しで構いません》
(なまえ)
あなた
頭が痛いんです。寝させてください
オーター
オーター
《少しで済みますから》


もう嫌だ。上司にあんなことを言った手前、勝手に早退したんだ。

肩身が狭いったらありゃしない。


とりあえず今を乗り切りたい。

オーター
オーター
《あなたの下の名前(カタカナ推奨)さん。あれは誤解なんです。私とあいつは昔から仲があまり良くなくて…》


何か話し出してしまった。何を言うべき?

私は今はオーターさんの声を聞きたくない。1人でいたい。

(なまえ)
あなた
オーターさん


上から被せるように名前を呼んだ。


オーターさんの声がぴたりと止む。

(なまえ)
あなた
……


言うべきか悩んだ。乾いた唇を舐めて、とうとう覚悟を決めた。

(なまえ)
あなた
…私の気持ちも、考えてくださいっ……


画面を、いや、オーターさんの顔を見れなかった。

けれどきっと、傷つけてしまった。

オーター
オーター
《あなたの下の名前(カタカナ推奨)さっ____》


そのままインターホンのスイッチを切った。


画面に背中を見せて、振り返らないままベッドに潜った。


きっと今日は悪夢を見る。



完全に嫌われてしまった。当たり前だ。あんなことを言ったんだ。

オーター
オーター
……


『私の気持ちも考えてください。』


その言葉が何度も脳内で再生される。


よく考えるべきだった。


少し考えたらわかるはずだった。


嫌だろ、体調が悪いのに気まずい空気で上司の話を聞くなんて。一方的に悪い人間の言い訳を聞くなんて。


なんて馬鹿なことをしたんだ私は。

オーター
オーター
くそっ…


せっかくツララに仕事を任せてもらったのに、悪化してしまった。


早退なんかせずにおとなしくデスクワークでもしておくんだった。


後悔があとからあとからと押し寄せてくる。


今さらどうしようもない。彼女の体調が治るまで待っていよう。




私は隣の家の扉を鍵で開け、楽な服に着替えてそのまま眠ってしまった。

何を見たか覚えてないが、悪夢だったに違いない。

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