屋上じゃない。
空は遠くて、校舎の壁がやけに高い。
生き延びたんだ、私は。
言葉がうまく出てこない。
確かに、私は屋上から飛び降りた。
あの高さからだったら確実に死ねるはずだった。
なのに、なんで。
剣持は私の言葉なんて気にもとめず空を指さす。
私たちの真上、さっきまで私がいた場所。
屋上の柵が小さく見えた。
淡々とした声。
何かを誇るでも、怯えるでもない。
私は、自分の心臓の音を数える。
ちゃんとここにある。
本当はこの心臓も、役目を終えるはずだったのに。
問いというより、確認に近い声だった。
なぜか、この人が理由を知っている気がした。
剣持は少しだけ考えてから、
肩をすくめる。
その言葉はあまりにも適当で、
興味など微塵もないような声。
でも、確かに剣持は知っている。
この場には剣持しかいなかったから。
『 待って 』と口に出す前に、
剣持はいなくなっていた。
まるで、私が死んだ後の世界を
知っているような口ぶり。
あの言葉を思い出し、私の中で仮説が立った。
彼は死神なのではないか。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!