第100話

(続き)
221
2024/01/27 15:00



陸人side









夜が明け、俺達は無事警察に見つからずにすんだ。

そのまま町中を歩く。




...何か食いたいもんある?

わたは本当に優しい。

自分一人の旅の筈なのに
部外者の俺のことも気にかけてくれる。


陸人
俺は別に良いよ。わたはなに食べたい?
アイス

確かに朝とは思えないほど暑い。

飲み物は持ってきたけどぬるくて喉を潤すことはできない。


陸人
...お金は?

実はさっき警察から逃げているときに
二人とも財布が入っている鞄を落としてしまった。

でもわたは平然と言った。


金ならあるよ。盗んだ

アイスを買って、食べながら線路を歩く。

踏み切りは落ちない。


神様はまだ俺達のことを自由にさせてくれないみたいだ。



いいのか?優等生の豊田が学校なんて休んで笑

わたが冗談っぽく言った。


陸人
別に良いでしょ笑
休んで消えちゃうわけでもあるまいし

俺達を縛るものは何もない。

後ろで電車が通りすぎる音がした。


もうちょっとだったなあ...




「もうちょっと」を今日も繰り返す。
明日もきっと...その次も...










ねえ、陸人


なに?


もう嘘はいいよ

君は困ったかのように笑う。


陸人
わた...?


何て言ってるかわかんないよ




-----



約束



ノイズがうるさい。
頭がじんじんして何も聞こえない。

わた...?



陸人
何て言ったの?教えて...

君はまた笑う。
俺の大好きな笑顔で。







じゃあ起きてよ






目が覚める。

横には寝静まっている君。


夢か...
シャツだけになっても暑いほどで、汗が沢山出ていた。


息を整えながら再び君をみる。




陸人
よかった...

君はどこにも行かない。




俺は君を抱き締める。
ほら、俺はこんなにも幸せだよ








君とまた歩き続ける。

周りからは変な目で見られる。



陸人
こんな時間に歩いてるからかなあ...
もうすっかり不良だな
なんなら制服着てくるか?
陸人
それは流石にダメでしょ笑

君といる時間が楽しい。
ただただ居心地がいいんだ。



だからお願い

この幸せを壊さないで...








モブ
行方不明中の男性一人を発見!
君!ご家族が心配していたぞ!


...捕まっちゃった

君との旅は終わりだね




陸人
...!わた...!

警察の人は
わたを連れていった。




陸人
待って!!わた!わた!!

抵抗するも無駄で
簡単に連れていかれてしまう。

俺も補導されることになった。








尋問され、ようやく解放される。
でもまだ終わっていない。



陸人
...わたはどこですか...?

一緒に捕まったはずのわたの姿が見当たらない。
モブ
...君もしかして二年前の...



モブ
...君が言っている渉くんはあのとき...





「死んでしまったではないか」




陸人
...?

なに言ってるの...?
だってわたは俺とずっと一緒に...








...豊田

ほら、今も声が...





だから起きろって


何の話...?


それに前言ってた「約束」って何のこと...?










モブ
...あの男性、やはり何かおかしいのでは...?
モブ2
そうだな...


モブ2
謎の「人形」だけを持って一ヶ月行方不明だったんだからな...











暑い暑い夏。

君との旅ももう終わりに差し掛かっていた。


水鉄砲で子供みたいにはしゃいで。
ずっとこの時間が続けば良いのにって、繰り返してた。



ふはっ!豊田びっしょびしょ
陸人
わたもね~

濡れたお互いを見て笑いあった。
何でかわかんないぐらい笑い狂って
お腹も痛くなった。


ようやく笑いが収まって
君を見ると



...ごめん

わたはナイフを持っていた。


陸人
え...?

わたは服にずっとナイフを隠し持っていたのだ。


わたは泣きそうな声で言った。



豊田がいてくれたから、俺は生きられたんだ。
だからいいよ




死ぬのは俺一人でいいよ



そう言って



わたは自分の首を掻ききった。

スローモーションに見えて
人間って大事なとき、何にも出来ないんだなあって


ぼんやり考えてた。





気づけば俺は捕まって

君はいなくなっていた。




それから一年、また一年と過ぎた。

君に言いたいことがあって
どうしても伝えたくて


俺は君と一緒に旅に出たんだ。









陸人
わた...


君の写真の前でぼんやり考える。

君がいなくなったあの日のこと。
君を探しに行った去年の夏のこと。

そして...あの「約束」のこと。



君が言ったこと、やっとわかったよ。




俺のことをもう忘れて
豊田は豊田として生きて


俺は受け取り方を間違えてしまったんだ。


「君がいなくなったこと」じゃなくて
「君が死んでしまったこと」を忘れてしまった。



馬鹿だよなあって笑ってよ


さっきまでの暑さは消え失せ、寒くなってパーカーを羽織ろうとする。

写真の君は笑顔で
今も俺の頭に飽和している。




ねえ、言わせて




陸人
君も、世界も、誰もかも、悪くないからさ...
全部放り出して良いからさ...

君がいなくなってから暑さが染み付いて
ずっと眠れないんだよ



陸人
君が大好きだからさ...
だから...





陸人
君を不足させてよ...


俺はパーカーを投げ捨て、
床に寝そべって身を任せた。



やっと君に会えるよ。
直接伝えられるよ。





不思議と寒くないよ。

君が...


陸人
君が隣にいるからかなあ...?








こんにちは!作者のusagiです
今回使わせていただいた楽曲は、
カンザキイオリ 様の「あの夏が飽和する」です!
この声は切なげなボーカル、感動する歌詞とメロディーが胸に刺さります...
今回はわたりくに再現していただきました!
ほぼ同期で昔から仲がよくて...大好きなペアです!

作者は豊田くん推しなので、このお話は絶対誕生日に出そうと思ってました!
豊田くん、お誕生日おめでとうございます!
優しくて面白い忍者のお父さん!どんどん陰キャじゃなくなってませんか...?笑 でもオタク同士どこか親近感がわくところも大好きです!
TikTokもどんどんあげてください!びしょぱいみたいなの一生待ってます!

長くなっちゃいましたすみません...

次は7 MEN 侍です!




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