
天女様・・・・いえ、雨ノ宮さん。

この度は生徒の命を救っていただいて、ありがとうございます。
子どもを守るのは当然です。

・・・・ご立派です。
・・・・ふふ。

?
すみません、この学園の方たちは本当に生徒を大切に思っているんだなぁと。
会う度会う人にお礼を言われます。

・・・・教師ですから。
その言葉に迷いはなかった。
本当に、根から教師気質なのだろう。
・・・・だからこそ、隠された警戒を感じる。
・・・・やっぱり、信用できないですか?

!

そんなことはっ!
隠さなくて大丈夫ですよ。
今まで警戒していた人をいきなり信じろ、なんて無茶な話です。

・・・・すみません。
もう、本当に人がいいですね。
謝らないでください。その警戒心は教師として、当たり前のものです。
これは学園長先生の受け売りですが、信頼とは押し付けて得られるものではありません。
みなさんが私を待っていてくださったように、私も待っています。だから土井先生のタイミングで信じてくだされば嬉しいです。

そう言っていただけると助かります・・・・
・・・・ときに、土井先生。
私は改まって声をかける。
これから言うことは、私にとって死活問題。
重要なことだ。

なんでしょう?
貴方は、低い声を出すことがありますか?

低い声?
低く、温度がない声で怒ったり・・・・などです。
例えれば、土井先生は少し考え込んだ。

いえ、そのような声はあまり出しませんね。子どもたちを怖がらせる原因にもなりますし。
そうですか、よかった。

なぜです・・・・?
ギクッ
言えない。
土井先生の声質が鬼舞辻にそっくりだなんて。
私の過去を聞いていた彼に言えない・・・・
その、土井先生の低い声を聞いたら・・・・

聞いたら?
き、斬りかかってしまうかもしれないです・・・・

斬りかかる!?
いや!そういった声を出さないのであれば、斬りかからないので!!
あくまで仮定の話ですっ!!

ほ、本当ですか。
はい!
と、とにかく!
出すなら私のいないところでにしてくださいね。

よく分かりませんが、分かりました。
・・・・ふぅ、これでひとまず安泰だ。

あ!
すると突然、土井先生はなにかを思い出したような声を上げた。

すみません、少し待っていてもらえますか。
分かりました。
どこかの部屋に入って戻ってきた土井先生は手になにか持っていた。
・・・・もしかして・・・・!

これ、雨ノ宮さんの刀・・・・ですよね。
そ、そのようですが・・・・なぜここに?

雨ノ宮さんが落ちてきたとき、手に握っていたんです。
握っていた・・・・

今まで預かっていましたが、教師になるということでこちらはお返しします。
私は刀を受け取り、じっと見つめる。
“滅”と彫られた刀に、目頭が熱くなるのを感じた。
ありがとう、ございます。

簡単に離れないほど強く握っていました。よほど大切なものなんですね。
・・・・はい、大切なものです。
城下町の拠点にあった刀よりも、何倍も手に馴染む。
これがあるだけで、私の心に強い安心感が生まれた。
ひどく感動する私を、土井先生は暖かな眼差しで見つめていた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!