第68話

【過去編/陽真 那津&雨乃 こさめ】戻らない忘れられない約束に…中編
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2026/05/06 08:25 更新

入学して、なつくんとクラスが別れて
こさめは予想通りクラスで孤立した
k.
……
友達と呼べる人間関係も
信頼できる担任という存在も
何一つこさめにはなかったし

強いて言うなら、窓際の席だったから
そこから見える雲ぐらいしか、
こさめにはなかった


別に、休み時間はいい
だって、なつくんが来てくれるから

放課後もいい
なつくんと一緒に帰れるから


このクラスメイト達も、
こさめとは微塵も関わらないけれど
なつくんの存在は、きっと全員が
認知していたんだと思う

それぐらい、なつくんはこさめに
沢山構ってくれているから
k.
(……はぁ、)
k.
(またじゃん、何回目?)
でも、それを利用されているのだろう

休み時間、こさめがクラスに居ないことを
いいことに、クラスの誰かさん達が
こさめの持ち物に手を出すようになった


今日は、休み時間の間に定規が折られて、
シャー芯がボキボキに折ってある状態で
筆箱の中にぶちまけられていて
消しゴムがまたなくなっていた

どうせなら、直接言ってくれればいいのに
そうしたら、それ相応の行動を
しっかり取ることができるのに

相手はどうやら、やったのが自分だと
こさめにバレたくないらしい

k.
(……これ以上、悪化しなければいいけど)
今は怒りや呆れで済んでいるものの、
こういう事が、これ以上悪化したら
当たり前にこさめも、耐えきれなくなるし



なつくんに、バレちゃうから
こさめが、いじめられてるって
休み時間にこさめの教室に行き、
こさめを拾って廊下でダラダラ話す
という流れが日常になれば

休み時間になって俺がこさめの教室に行くと
名前を呼ばなくてもこさめが来る様になった



k.
ほら、なつくん今日はあっち行こ!
n.
いいけど……別にこの廊下でも良くね?
k.
ここの廊下は、なんか
気分じゃない?からさ!
n.
廊下に気分なんてあるかぁ?
k.
あるの!
k.
ほら、行くよ!
n.
はいはい、
でも、今までは一組と二組の間の
廊下で、ダラダラと話して居たのに
最近なぜかこさめはそこではなくて
別の場所に移動して話すようになった

場所は毎回ランダムで、
こさめの行きたい場所について行く
みたいな感じ

別に、移動するのはどうでもいい
いうて大変でもないし、
困るレベルのことでもない



ただ、ちょっとだけ違和感を覚えていた
こさめが、移動しようとすることに
n.
(……一番、考えられるのは)
n.
(こさめにとって、この場所は
 都合の悪いことが起こる、こと)
でも、都合の悪いことが何なのかがわからない

ただの廊下、別に何の変哲もない廊下
何かが起こるとすれば、全力ダッシュで
男子たちがやってる鬼ごっこぐらいだろう

でも別に、それぐらいだ
こさめといる時にそれが起こっても
二人で何やってんだ、と笑ったこともある
n.
(……じゃあ、なんで、だろ)
k.
ちょ、なつくん聞いてるのー?
n.
聞いてるって、今度の休み
両親にお土産買いたいから
水族館に行きたい話だろ?
k.
なんだ、聞いてるじゃん……
上の空すぎない?
n.
それはごめんって……
理由がわからないまま
でも、それを探ろうとすることもできないまま

ただただ毎日が、過ぎていくだけで










気がついたら、俺の前から
こさめは居なくなっていた
時間が経てば経つほど、
いじめというものは
加速していくものなのだろう
中一の時は、休み時間に物を壊されたり
盗まれたり、捨てられるぐらいだった

それで、済んでいたのに
中二から、学内で他人がやらかした事を
擦りつけられるようになった
例えば、備品を壊す、だったり
人のお金を奪う、だったり

やってないのに、怒られ続けた
親に、何度も頭を下げさせたのが
一番やるせなかった




そして、中三
これが、キッカケ自体はある意味一番マシそうに見えて




最終的に起こった出来事は
一番、メンタルにきてしまった
生徒
ねぇ、聞いた?雨乃の噂
生徒
聞いた聞いた、やばくない?
そんな声が聞こえたら、
内容が聞こえる前に全力でにげた

なんで?そんなの、簡単だよ


もう、その虚言を聞き飽きたのに

びっくりするぐらい、動けなくなるから









生徒
夜遅く、何人もの男の人と歩いていたらしいよ?
生徒
お金貰ってるのも見たって____












そんな事実、どこにも存在しなかった
きっと、主犯の誰かが流したのだろう

理由は簡単
噂なら、"誰が流したのかわからなくなるから"

そして、噂であるが故に、事実かが曖昧になり
それがこさめの精神を、確実に・・・壊すから



その噂は、結構しつこくて

しつこい……っていうか、
こさめにも、周りにもこびりついた


汚れがこびりついた場所には、
カビやら、ハエやらが集うでしょ?





だから、集ったよ

気持ち悪いほどに
k.
や゛ぁ、めて……っ……!
生徒
こいつ、アホだなぁ……
生徒
ま、たくさん遊ぼうぜ?
k.
っひ……ッ、
噂が周ってしばらくした頃、暴行が始まった

沢山痛めつけられて、踏みつけられて
反応しないと怒られるのに
反応すると面白がられるから
結局ずっと続いて、終わらない


そんな地獄を、味わい続けた


毎日、毎日同じように
ずっと、ずっとずっとずっと




だからこさめは、その頃から
なつくんから逃げるようになった
だって、なつくんを
巻き込みたくはないし










なつくんには、知られたくなかったから






k.
(……つかれ、た)
k.
(つかれた、もう……ぜんぶ、)
ボロボロになった制服
ズキズキ、どころの痛みじゃ
到底すまない全身

どこにも、こさめの身体には
綺麗な場所なんてなかった
k.
(……うごけ、ないや)
放課後
梅雨真っ只中で、いつの間にか降り出した
雨音が必要に鳴り響いていたのが
こさめの耳を必要に貫いた


誰もいない教室の隅で
痛みと、疲労感と、
よくわからない重しのせいで
指一本すら動かなくって
目線も、どこにも向けられなくって

生きてるのかさえ、わからなくって
k.
(このまま、しんじゃえ)
そう、ひたすらに願うのに
この体は未だ、呼吸を続けていて
生きることを、望んでいて

もう、苦しかった、ひたすらに









苦しかった、のに




気がついたら、湿っぽい匂いと
濡れたナニカが、こさめを包んでたんだ







n.
ごめん
n.
……っごめん

居るはずのない、なつくんが、いた

壊れ物を扱うみたいに、そっとこさめの身体を起こして
濡れた髪を、こさめの胸に押しつけて
ぎゅっ、て、ぴったり身体をくっつけて


濡れてるから、冷たいはずなのに
不思議となつくんの体温が、ハッキリと伝わって
こさめの身体をじんわりとあたためる




k.
(……あぁ、ばれちゃった)
よりによって、一番バレたくなかった
誰よりも優しい、きみに
あの日は、こさめの誕生日だった
六月二十三日、こさめは十五歳になった


こさめは、いつしか俺の前に現れなくなった
クラスを覗いても、見つからなかった

でも、あの日は、毎年渡している誕プレを
渡そうと思って、学校帰り家まで行った





いや、行こうとした
n.
(人だかり……救急車?)
n.
(事故でもあったんかな)
こさめの家に向かう途中にあった
交差点に、人混みが出来ていた

そして、周囲にはパトカーや救急車
警察が慌てて周囲に規制線を張って
人混みを制御しようとしているのは見えた


でも、そのまま素通りしようとした
俺には、何も関係ないと思ったから




思った、のに
n.
……ぇ、?
一瞬の隙間から見えた
横たわっていたそれらは、

こさめの、ご両親だった


いつも、笑ってるイメージしかなかった二人

その二人は今、横断歩道の上で動かないまま
どんどん血溜まりを作っていて

その二人の近くには、潰れた白い箱があって
何をしに行ってたのかは、明確で




声は、出なかった
身体も強張って、しばらくは
言うことを全然聞いてくれなかった

でも、身体が動き出した瞬間、
俺はこさめの家へ全力で駆け出していた



n.
こさめ、こさめ!!
こさめの家に着いた瞬間
インターホンを押して、そう叫ぶ

でも、あまりにも中が静かで
俺は昔貰った合鍵を使って中へ入った

でも、家中を駆け巡っても
こさめの姿はどこにもなかった


どこかへ出かけたのか、と思っても
家のなかに制服がかけてあるわけでもない
n.
(……まだ、学校にいる?)
そう考えたら、早かった
俺はこさめの家から飛び出して
全力で駆け出した
外を飛び出したら、雨が降っていたけど
傘なんて、走るのに邪魔だから
折りたたみを取ることはしなかった

人通りの少ない信号は無視した
いけないと分かってはいるが、
今はそれどころではない


ただでさえ、体力も無ければ
走ることも苦手な俺が今の状況で
そんな事気にしてたら、多分、だめだったから



学校に辿り着いて
体中に張り付いた雨水をどうすることもなく
俺は校内を駆けて、こさめの教室に向かって

電気が消されている教室の扉を
勢いよく開いて


n.
ぁ……っ


情けない、音だけが漏れて、消えた



声が、出なかった
出せなかった






脳が、今目の前にいる
生きてるかすら危うく見えてしまう
人影の正体を、理解するまいと拒絶した
k.
……
そっと、近寄って
焦点の合わない目を見て
俺は、こさめの身体を起こした

体温があるはずなのに、身体は冷え切っていた


思わず震える身体で抱きしめたこさめは、
さっき見た白い箱みたいに
すぐにでも潰れてしまいそうで

細くて冷たくなった身体の中で
弱々しい心臓の音だけが確かで

それが、こわくて、仕方がなくって
n.
ごめん
n.
……っごめん
謝ることしか、出来なかった
ひたすらに、ただ、ひたすらに


こさめに、こさめのご両親に

ごめんなさい、と

ただ、ただ、ひたすらに
目が覚めたら、病院にいた

正直、その時のことは
あんまり覚えてないけれど

病院にいた理由は、
こさめの精神状態を理由に入院した、のと



もう一つ


霊安室には、二つの遺体が安置されていた

顔の布を外せば、そこには
こさめの両親がいた


そう

こさめの、両親が
事故で亡くなったから

その、対応のため
k.
……こさめの、せい、だ
身体に力がはいらなくて
膝から崩れ落ちたのを、
隣にいたなつくんが支えた

でも、依然として力なんて入らない



もしあの日、誕生日じゃなければ
きっと、二人は生きていたのに

なのに、なのに、こさめのせいで
優しすぎる二人は、もう、いない


こさめの、せいで
k.
なん、で……なんで……っ……
n.
……
なつくんが、ぎゅっと、こさめを抱きしめた
ひたすらに苦しそうに、ぎゅっと

親を失ったこさめに、
少しでも温もりを残そうとして


そして、こさめを離さないように



結局、その後
こさめが、あまりにも立ち直れなくて
だから、葬式を執り行うことはなくて
火葬だけ済ませて、終わった

今でも、それは後悔にしかならなかった
最期ぐらい、見送ればよかったのに


それが、こさめには、できなかった

もうこさめは、疲れ切っていたのだろう
あれから、ずっと焦点の合わない瞳で
どこか遠くを見続けている


毎日、見舞いに行った
反応は滅多にしてくれないけれども
手を添えれば、握り返してくれた

日が経てば経つほど、
ほんの少しずつだけれども
回復してきてるのがわかった
n.
……はい、よろしくお願いします
学校側や、こさめのクラスの生徒に対し
俺がこさめのいじめの件で訴えた


俺の所には、噂なんて回ってこなかった
それが主犯格達が、俺には回すな、と指示して
いたからだということは随分後でわかったことだ

それが、ひたすらに悔しかった


俺がもっと早く、気がつけていたら
こさめは、今よりも少し、
楽だったかもしれないのに



でも、今更後悔してもどうにもならないから
俺は毎日、こさめの病院に通うことで
こさめを支えようとした





そんなある日も、いつも通り、学校から帰っていた

ちなみに、この時の俺はまだ感情が残っていた
ちゃんと、感情は芯を残していた


でも俺は、その時感情がなければ
どれだけ楽だっただろう、なんて、
そんなことを思ってしまう






ドラマでしか見ないような白い布切れで
そいつらは後ろから、俺の鼻と口を覆い隠した
n.
っい゛、!
n.
やっ、ん゛ぐっ!?
抵抗しなければいけないのに
力が抜けて、瞼が落ちてゆく

視界が狭くなって、暗転していく
そんな視界の端にあったのは
黒い一台のワンボックスカー

何をされるかは、明白だった









簡潔に結果から言うと

俺はそこから二ヶ月以上の期間
あったはずの記憶を全て失い

感情も失った



あと一話だとワンチャン次回一万字近いんじゃ……
話数はかわりますが、文字数合計いうて変わらないので
中編あと一つ作っても大丈夫ですか……?


書き方が変わって、地の文長くないと違和感しか
ないように感じてしまうようになって……
長いくせに全然進まないです、ごめんなさい

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