第26話

22話
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2026/03/01 00:00 更新
中間テスト1週間前
放課後
生見愛瑠
生見愛瑠
図書室でやる?
誰かが言った一言で、勉強会が決まった
場所は校舎の奥に生徒が勉強するためにある
大きい図書室
天井が高くて、机も広い、
なのに、放課後は意外と空いている
私は参考書を何冊も抱えて、
いつものメンバーがいるテーブルに座った
蓮くんが向かいに座る
目黒蓮
目黒蓮
今回やばいんだけど
蓮くんが問題集を解きながら言う
(なまえ)
あなた
どこ?
私が覗き込む
目黒蓮
目黒蓮
ここ、二次関数
(なまえ)
あなた
あー、それは──
自然に説明が始まる
私がノートに式を書く
途中式も全部
どうしてそうなるのか、順番に
目黒蓮
目黒蓮
え、待って、なんでそうなるの?
(なまえ)
あなた
ここで代入してるから
目黒蓮
目黒蓮
は?
(なまえ)
あなた
だから──
もう1回説明する
ゆっくり
今度は例題を変えて
気づけば周りが静かになっていた
隣の席に座っていた人達まで聞いている
向かいの蓮くんは真剣に聞いていて何も言わない
でも少しだけ口角が上がっている
自分のことみたいに誇らしそうに







その時、
背の高い先輩が数人入ってくる
2年と3年
福本莉子
福本莉子
あ、ごめんね
福本莉子
福本莉子
空いてる?
(なまえ)
あなた
あ、どうぞ
空いている席に座った
少しして、
福本莉子
福本莉子
……あの、
3年の先輩が声をかけてきた
福本莉子
福本莉子
今の説明、聞こえちゃって
福本莉子
福本莉子
分かりやすかったんだけど
一瞬、みんなが止まる
福本莉子
福本莉子
もし良かったら、ここ教えて貰ってもいい?
問題集を差し出される
3年の数学
難易度は少し上
私はページを見て、
(なまえ)
あなた
ここは、微分の考え方使えば早いです
と普通に言う
福本莉子
福本莉子
え、1年だよね
(なまえ)
あなた
はい
福本莉子
福本莉子
なんでそれ知ってるの?
(なまえ)
あなた
塾で先にやっているだけです
本当は塾だけじゃない
自分でもやってる
でもそれは言わない







説明を始める
図を描く
式を分解する
(なまえ)
あなた
ここが増減のポイントで──
福本莉子
福本莉子
うわ、なるほど
3年生が普通に納得している
2年生も混ざる
気づけばテーブルがひとつの円のようになっていた
学年はごちゃまぜ
でも中心は私のノート












蓮くんが小声で言う
目黒蓮
目黒蓮
うちのエースすぎる
山田涼介
山田涼介
ほんとに1年?
生見愛瑠
生見愛瑠
無双じゃん
私は普通に問題を解いているだけ
でも、ふと顔をあげると
謙杜くんもこっちを見ていた
静かに、まっすぐ、目が合う
ほんの少しだけ、柔らかく笑う
誇らしい、って顔
何も言わないけど、1番ちゃんと見ている
あの日の言葉が少しよみがえる







勉強会が終わる頃
3年生が言う
福本莉子
福本莉子
テスト終わってもまた来ていい?
(なまえ)
あなた
全然
福本莉子
福本莉子
助かるよ、ほんとに
先輩たちが帰って行くと図書室が静かになる
蓮くんが机に突っ伏す
目黒蓮
目黒蓮
なんであんなに解けるの……
(なまえ)
あなた
勉強すればできるよ
向井康二
向井康二
説得力ないんよ
笑いが起きる
空気が軽い
でも私は少し疲れていた
その時、謙杜くんがペットボトルを差し出す
長尾謙杜
長尾謙杜
喉乾いたでしょ
(なまえ)
あなた
ありがとう
その水は冷たくて気持ちが良かった
長尾謙杜
長尾謙杜
無理すんなよ
(なまえ)
あなた
してない
長尾謙杜
長尾謙杜
してる顔
図書室の窓から日差しが差す
赤く染まる机
今日は動物園じゃない
でも、机にいるのは同じ人
ちゃんと見ている人
私は少しだけ笑う
(なまえ)
あなた
テスト、頑張ろうね
長尾謙杜
長尾謙杜
当たり前
その声は静かだけど優しかった

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