第14話

第三章 1
607
2023/07/01 11:26 更新
リョウ
…?

あれ…

僕は今、何を………
っ確か、マオが僕に…殺し、て、って…言っ…………






て………





リョウ
っぁ…あ……ぼ、僕は、なんでっ、こんな………………
違う、違う……っ、こんなこと…しないはず…

──────信じられない。

僕はなんで今、マオの首を絞めようとしてる……?
マオ
っけほ、ごほっ……

マオの咳ではっと我に返り、首から手を離す。

…そうだ……僕は、思ってしまったんだ。


『殺して欲しいなら、殺してあげてもいいのに』

リョウ
…ぁあ"、クソッ………
もう駄目だ。今まで押さえ込み続けてたけれど、僕はおかしくなってしまったんだ。

「殺して欲しい」なんて言われて、首を絞めかけてしまうぐらいには。



こんな僕のそばに、もうマオを置いておくことはできない。
僕がベッドから降りて暫し呆然としていると、程なくしてマオは起きた。
マオ
ん…リョウ、どうしたの?そんなに青ざめて……
そんな彼女の声に、意味もなく体が固まってしまう。
リョウ
っあ、マオ…。起きたんだ。
……ちょっと話があるんだけど、いいかな?
マオはそれを聞くと途端に不安そうな顔になってゆっくりと頷き、先ず顔を洗わせて欲しいと部屋から出ていった。


彼女が戻ってきて座るのを待って、僕は口を開く。
リョウ
マオ。僕は、このままこの家に二人でいるのは危険だと思うんだ。
マオ
…そうかも知れないね。
リョウ
お父さんやお母さんのこともそうだし、家の周りの暴動だって激しくなってきてる。
だから僕は、マオに逃げて欲しいんだ。ここよりも安全なところに。
マオ
じゃあリョウも…
リョウ
旅費が足りないし、親を待たなきゃいけない。
巻き込むわけにはいかないんだよ、マオ。先に行ってて…
本当の理由は伝えず、それらしい理由を並べて彼女を自分から離そうとする。



───旅費がない。親を待たないといけない。
全部嘘だ。マオを説得するための。
マオを僕から離すための。

旅費も本当は十分あるし、親は僕がどこで何をしてようと気にしてない。
だから、本当ならマオと一緒に逃げられる。けど。




…自分でやってて、なんて卑劣なんだろうと思う。

でも、本当のことを言って嫌われるくらいなら綺麗な思い出のまま離れて欲しいじゃないか………
マオ
リョウも…危ないんだよ?
ちゃんとわかってるの………?
マオの心配そうな顔に心が痛む。
ごめんね、そんな顔をさせてしまって。


でも、もう二人ではいられないんだ。
僕がこれ以上おかしくなる前に離れないと、本当に何をするか分からない。
今度こそ本当に……………



マオを不安にさせるのも分かってる。
本当は僕だってマオともっと一緒にいたかった。

けど、もう離れなくちゃいけない時なんだ。
リョウ
──っ実は、親が帰ってきた後に引っ越す話があるんだ。
また一つ、嘘を重ねた。
マオ
…本当?じゃあ、リョウもここから離れるんだね?
約束してくれる?
「約束」か…

もちろん、僕は笑って彼女にこう言う。
リョウ
約束、するよ。必ずまた会おう。
本当は約束なんてできないけれど、マオが安心できるならそれでいい。
終ぞ果たされないであろうその約束を胸に、僕は彼女を見送った。

彼女が行く先は、海と大陸を超えた小さい国。
まだ安全と言われる国だ。



…これで、マオを守れるのかな。
絶対に安全な場所なんてもう地球上にはない。でも、少なくとも僕の家より安全なはずだ。











──────よかった、と。そう思った。

プリ小説オーディオドラマ