俺は、政府が大っ嫌いだった。
たとえ審神者の身体が弱っていても容赦なく命令して。
主の同期も、その愛刀達も、こうして何人もこの世から
去っていった。
それなのに、まだ続けるのが許せなくて。
一度だけ、主は政府戦争に参加しなかった。
それは第3回の闘い。
またこれもくだらない理由で始まった事。
その時は本丸の状態が安定していなくて、仕方なく参加を
下りた感じだったけど。
勿論、主の同期は戦場。
しばらくは、手紙のやり取りをしていたらしい。
戦争中、本丸にいる時間は、ほぼ1人だった。
主は部隊編成や手入れに追われていて。
いつもは離さず、俺を近くに置いておく。
が、その日は珍しく部屋の刀用の壁掛けに置いて1日が
過ぎた。
主の元を離れたのは、あの1日だけだった。
何故かひとりでいるのが寂しくて、苦しくて。
その時だけ傍にいてほしいと思ったのが、
不思議だったんだ。
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あの後、堀川と一緒に安定を追った。
隊長の部屋に近づいてくると、数人の声が聞こえて。
安定が顔を真っ青にして戻ってきたから、良い事態では
ないのだろうと、察しがつく。
堀川は部屋の外にいる和泉守に。
安定は部屋の中にいる長谷部に。
俺は部屋の前で話している燭台切と鶴丸に声をかけた。
隠そうとしているのが分かるほどに、どちらも浮かない
表情をしていた。
その2人を見るに、増々不安になった。
隊長に何があったのか、この騒ぎはなんなのか。
いち早く知りたくて。
すると、鶴丸さんは俺の肩にぽん…と右手を置き、いつもと
違う、柔らかい口調で言った。
燭台切の方を向くと、彼はなんとも言えない顔をしていた。
哀しそうな、苦しそうな。
そう言って、燭台切と鶴丸は長谷部がいる部屋の中へと
足を運んだ。
何故話してくれないのか、理由は分からなかったけど
2人の、特に燭台切の雰囲気からして、とてもそういう
状況じゃなかったのは流石に察しがついた。
2人が部屋へ入って行くのと同時に、安定が出てきた。
長谷部も燭台切も、今日話そうとはしなかった。
只々気持ちが追いついていないのか。
それとも、話せない理由でもあるのか。
どちらにせよ、明日になれば全て分かること。
気になるが、あまり深く考えたら駄目だと思った。
すると続けて、堀川の声が聞こえた。
騒ぎが起こってから駆けつけた和泉守が、何か事情を
握っているなんてやっぱりなかった。
きっと彼も、混乱状態だろう。
一瞬自分の耳を疑ったよ。
隊長が部屋にいない?なんで、どうして?
自室治療じゃないの?
意味が分からなすぎて、咄嗟に聞き返してしまった。
当たり前、という声色で安定は言った。
それもそうだ、安定は部屋の中にいる長谷部に話を聞きに
行ったんだから。
いるいないなんて、ひと目で分かっただろう。
そう、頭を悩ませ数分、また誰かが駆けつけてきた。
そこには内番姿の髭切と膝丸が立っていた。
2人の表情は燭台切と鶴丸同様、何処か曇っていた。
顕現して1週間しか経っていない彼らがこの部屋に来るとは
思ってもいなくて。
もしかして何か、何か知ってるんじゃないかと2人に
問いかけた。
少しでも少しじゃなくても、部屋にいた事は変わりない。
隊長がそこにいたのなら。
俺は長谷部の元へ行こうとする彼らのうち、髭切の上着を
クンっと掴んで呼び止めた。
表情と声色で察したのか分からないが、少し間を開けて
了承してくれた。
それと同時に中々来ない兄を心配して見に来たのだろう。
膝丸が声をあげた。
髭切はそう膝丸に一言言ってから、俺の方に向き直った。
そう問いかけると、少し遠慮そうにしてもごもごと口ごもる
ように言った。
その後に続き、安定も同様。
俺は別に良かったけど、髭切がどうか分からなかった。
けど、彼は優しく良いよ、と言ってくれた。
俺と堀川と安定は、その後髭切の後ろを追った。
何故隊長がいないのか。
何故隊長が彼らの部屋にいたのか。
気になる事ばかりで。
大丈夫、大丈夫だ。
きっと折れてはない。
だって、あんなに強い、隊長なんだから。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
熱中症でぶっ倒れてしまい投稿が出来ませんでした…
皆様も体調にはお気おつけ下さい。



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!