sm.side
同じ中学出身だという同級生たちのそんな話を聞きながら、全体練習場所のホールに向かっていた。
時は放課後。
つい先日、新入生たちの入学式を終えたばかりの春先。昨日の5、6時間目にあった部紹介にて1曲披露したばかりではあるが、同級生の2人──碧と紅羽はもう既に人前で演奏がしたくて堪らないという様子だった。
かくいう俺も、うちのホールで人が聞く演奏ができるのが楽しみで仕方がなかった。
だが、俺が楽しみなのは演奏ができることだけではない。
唐突だが、全国クラスの実力を誇るうちの吹部はそこらの吹部と比べ少し──いや、かなり変わっていると思う。まぁ校内にホールがある時点で普通ではないけれど、そういうことではない。
碧の言っている簡易コンサートでは、俺たち在校生が演奏するだけでなく新入生たちも最後に、新入生たちのみで即興で演奏してもらうことになっている。一応参加条件があり、パーカスやコンバスは楽器を貸し出して、管楽器は楽器もしくはマッピやリードさえ持ってきていればいいわけである。この条件は既に部紹介時に明言している為、大抵の子達は持ってくるだろう。
俺はこれが楽しみで仕方がない。
そこで演奏する新入生達はほぼ間違いなく入部してきて、新たな仲間となるだろう。そして、その中にはとんでもない逸材も紛れ込んでいるかもしれないと思うと、ワクワクするのだ。
まだ顔も名も知らぬそいつの担当楽器は一体なんだ?
その楽器を始めたきっかけは?
どうしてうちに来る程吹奏楽にのめり込んでいるのか?
聞きたいことだって、沢山ある。
──早く、会いたい。
どうやら声に出てたらしく、紅羽に聞かれてしまった。恥ずかしい。
そんな会話をしながらホールへと向かう。
まあ、どんなに新入生たちに興味があったとしても、こいつらといる以上に楽しいことは起きないんだろうな。なんとなく、そんな感じがする。
さて、今日はどんな演奏ができるのだろうか、楽しみだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!