第149話

友情と本心
51
2024/04/25 11:58
ひまりside
理子の、お父さんが、凜を…

告げられた言葉は、私の予想を超えていて、
信じたくなくて、どこまでも残酷だった。

頭に血が上ると同時に血の気が失せるような、
不思議な感覚がする。

頭の中で色んなことがぐるぐる回る。

フラッシュバックするように、様々な場面が頭を駆け巡る。

桃菓と凜と公園で一緒に遊んだ、その時の笑顔。

私がいたずらした時の、2人のちょっと怒った顔。

たまに喧嘩して、仲直りした時のほっとした泣き顔。

そして、
初めて凜が心を隠した時の、桃菓の傷ついた顔。
あの時、私は、
どう、思ったんだっけ?
濃藍 凜
濃藍 凜
ひまりっ!やめてっ!!
はっと、思考がクリアになる。

記憶の断片が、頭から消え失せる。

そして私の目の前には、
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
…っ
苦しげに顔を歪める、理子の顔。
萌黄 ひまり
萌黄 ひまり
え…
だんだんと思考が追いついてきて、
手が震える。
私は、いつの間にか、理子の胸ぐらをつかんでいた。
桃菓side
萌黄 ひまり
萌黄 ひまり
え…
呆然とした声を上げて、
ひまりちゃんは力が抜けたように手を離した。

つかまれていた理子ちゃんは、少しだけ喉をおさえると、
またすぐに手を元に戻して私達を見据えた。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
驚いた、よね
浅緋 桃菓
浅緋 桃菓
流石にね。
…なんで、このことを私達に?
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
…謝りたかったから。
そう光のない瞳で言うと、理子ちゃんは語りだした。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
父が犯罪を犯したのは、脅されたからなの
浅緋 桃菓
浅緋 桃菓
お、脅された…?
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
あの事件の2ヶ月前、私の父が
勤めていた会社が倒産した。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
我が家の家計は瞬く間に火の車になり、
父は借金をせざるを得なくなった。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
でも、その借金取り達も
金銭的に余裕はなかったみたいで…
子供を誘拐して、身代金を得る計画をした。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
それに巻き込まれたのが、私の父だった。
萌黄 ひまり
萌黄 ひまり
…借金を盾にして、犯罪を強要したってこと?
ひまりちゃんのまとめに、理子ちゃんは頷く。

その表情は無に等しく、でもかすかに辛そうだった。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
父が借金取り達に従ったのは、
私がまだ小さかったからでもある。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
まだ幼かった私に危害が及ぶかもしれない。
そう思った父は、自ら犯罪者となった。
だから、と続けた理子ちゃんは、
深く、頭を下げた。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
凜が誘拐されたのは、私のせいなの
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
本当に…ごめんなさい…っ
浅緋 桃菓
浅緋 桃菓
理子ちゃん…
彼女の名を呼びながら、ちらりと凜ちゃんを見る。

謝罪を受けた、凜ちゃんは___
濃藍 凜
濃藍 凜
何言ってるの?
心底おかしくてならないというように
首をかしげて、かすかに微笑んでいた。
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
え…だ、って…お父さんは、私の、せいで
濃藍 凜
濃藍 凜
じゃあ、その時の理子に
何ができたって言うの?
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
…出来なかった、から…だから、私が悪い…
濃藍 凜
濃藍 凜
それは理子の責任じゃない
うろたえながらも反論しようとする理子ちゃんを、
凜ちゃんは容赦なく追い詰めていく。

力強い声でばっさり言い切った凜ちゃんは、
かすかに、優しげな表情で笑った。
濃藍 凜
濃藍 凜
出来なかったんじゃない。
"出来ることがなかった"のよ
濃藍 凜
濃藍 凜
…私も、理子と同じだった
はっと、理子ちゃんが顔を上げた。

優しげに笑ったままの凜ちゃんの瞳には、
濃藍 凜
濃藍 凜
あの時私があぁだったらこうだったらって、
過去なんて変えれないのに想像して。
桃菓が傷ついたのは私のせいだって、
勝手に思い込んで勝手に思い詰めて…
濃藍 凜
濃藍 凜
でも、私は変われた。
力強い光が、宿っている。
濃藍 凜
濃藍 凜
ぱっと見は変わっていなくても、
私の中の本質は確かに変化してる。
濃藍 凜
濃藍 凜
私は前を向いている。
過去にとらわれず、今を生きている。
濃藍 凜
濃藍 凜
だから、
凜ちゃんは浮かべていた笑みを引っ込めて、
優しい言葉を、力強く言い放った。
濃藍 凜
濃藍 凜
私は、理子を恨んだりしない
その言葉を最後に、静寂が戻ってきた。

次に、口を開いたのは、
浅緋 桃菓
浅緋 桃菓
私も、別に大丈夫だよ
私だ。
浅緋 桃菓
浅緋 桃菓
というか一番の被害者は凜ちゃんだし、
本人がいいなら私はそれで…
濃藍 凜
濃藍 凜
いや、一番の被害者桃菓だから
浅緋 桃菓
浅緋 桃菓
えっ
_花影@はなかげ_ _理子@りこ_
花影はなかげ 理子りこ
それは私も同意する
浅緋 桃菓
浅緋 桃菓
えー?
そこから和やかなムードが、私達を包み始める。

みんなが笑っている。

だから私は、いや、私達は気づかなかった。























ひまりちゃんの瞳が、仄暗い光を帯びていたことに__
 

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