wtri side -現代-
あなたの下の名前が亡くなって四年以上経った。
俺はまだ、あの日の、あなたの下の名前と約束した記憶と小指の感覚を鮮明に覚えている。
ずっと俺は、言い訳を続けている。
配信を終了して一息つく。
藍色の何かを見るたびに、彼女の髪を、彼女のドレスを、彼女を、思い出してしまう。
葬式にも、墓参りにも行けてない。行ってない。行けない。
彼女の死と、向き合えてない。
散歩に行ってみても、残暑でやられてすぐ家に帰る。
テレビをつけても、キーキー言うのがうざったくてすぐに消す。
適当にXを眺めながら、指をスワイプしていく。
ふと、目に止まったのはどこかのお店のマネキンが着ている藍色のドレスだった。
いつしか、奏斗が言っていた。
「これは、僕が選んだドレスなんだ。
これ、あなたの下の名前のお墓に入れる。」
と。
あのとき奏斗が見せてくれたドレスとそっくりで、どうしても彼女が頭から離れない。
少し、息が荒くなる。
椅子にもたれて天井を向く。
涙が溢れないように。
俺は、あの日彼女とした約束を果たすために、花屋に向かった。
花屋につくと、店員さんが聞き覚えのある歌を口ずさみながら花に水をやっていた。
多分、De Lu Luだ。
もしかして、ヴォルタのファンなのかな。
いつの日か行った花畑で見た花。
あなたの下の名前が、可愛くて好き。って言ってたのを思い出す。
店員さんは、ネリネ、別名ダイヤモンドリリーを探してお店の奥に消えていった。
店員さんが戻ってくるのを待って、俺は他の花を眺める。
色とりどりの花は、花屋の煌めきを表し、天井のドライフラワーはさっきまでの俺を表していて。
熱くなる目頭を抑えて、堪える。
店員さんがひょこっ、と現れてネリネの花束をこちらを見せてくれる。
お金を払い、
「またのお越しをお待ちしております!」
とにこやかに言った店員さんにぺこ、とお辞儀して
俺は徒歩10分のところにある草原へ向かった。
その草原には、ぽつんと佇む小さな墓石がある。
映画であなたの下の名前の名前が貼られており、いつだって藍色の花が添えられている。
そのお墓の前で手を合わせ、俺はいのる。
初めて、墓石の前に立って祈ることはたったそれだけである。
それのみで、よかったのである。
俺はさっきかった花束を置いて、そこを後にした。
後ろでは、藍色と白色のドレスが揺れていた。
遅刻しました、すみません。
番外編投稿、13,14,15 日のどれかだと思っていただけると嬉しいです。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!