鳥のさえずりが聞こえる前に、目を覚ました。
随分と嫌な目覚めだ。
シーツはぐっしょり、髪の毛が体に張り付いて気持ちが悪い。
悪い夢を見た……それだけの事だった。
時刻は午前四時。皆が起きるのはあと1時間後くらいだろうか。
今の時間、屋敷を彷徨くのは怪しまれる。窓を開けて風を通すくらいなら問題ないだろうか。
できるだけ音を立てないようにしながら、部屋の窓を開けた。
山だからなのか、外の空気は思っていたよりも涼しく、空気も綺麗だ。
窓枠に頬杖をついて、詰めたものを出すように息を吐く。
目を覚ましたのは何時もの悪夢が原因だ。
一昨日、この屋敷に帰ってきた時は昨日の午前四時。ちょうど今の時間帯と一緒だ。
ギャングの件は、クラウスに任された仕事だった。私以外の誰にも伝えられていない。
ブンブンッ
はっとして首を横に振る。そこまで心配する必要は無い。
ギャングを殲滅させ、囚われていた子供たちも保護。ギャングのトップであろう男を拷問し、情報を引き出した後殺した。
もう一度、自分の手を嗅いでみる。何も変わらず血の匂いがした。
実験施設で同い年くらいの女の子に手をかけた夢。
檻の外からは紺色の髪に赤紫の瞳を持った長身の男が笑って見ていた。
冷たい部屋、目の前にいる動かなくなったナニカ。そこから広がる海に映った自分。
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その日も昨日とやることは変わらない。主人に尽くすメイドとして昼間は働いた。
その夜……
ジビアが盗んだ鍵で型をとって作成した鍵で、ウーヴェ氏の書斎に入った。
けどウーヴェが部屋に入って資料を読んでいるのがバレてしまったようだ。
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ウーヴェ氏はどこか誇らしげに言った。
ウーヴェ氏がその少女の名前を語る。
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そんな会話が聞こえてきた。
凛然とした白髪の少女……
クラウスからチーム全員の資料を読むように言われて全て目を通していた。
素行不良で落ちこぼれた……それはジビアの出自が関係していたらしい。
だが、少し不可解だ……。孤児院を抜け出したなら分かるが、失踪と書かれている。
ギャングに刃向かってまで大事にしている妹弟がいる孤児院に顔を出していない、だから失踪として処理されそのまま…そう考えるのが妥当だろう。
可能性の話だが、素行不良の原因は、もしかすると妹弟の死が大きいかもしれない。
憶測で物事を語るほど、私は愚かじゃないだろう。
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このままでは任務達成するどころの話では無い。
だが、そこまで心配はしなくてもいいかもしれない。
ウーヴェの書斎の部屋から飛び出して来たジビアがこちらの使用人部屋に向かってきている。
自分の部屋を出て隣に移動する。グレーテとリリィがサラの鷹と戯れていたところに私がお邪魔した。
小動物のように笑うサラに私も『…こんばんは』と返す。
昨夜の件だと察した3人が頷く。直後にジビアが部屋に到着し、事の詳細を説明した。
クビになったことを話すと__
「「「……お勤めご苦労様でした」」」
と3人が口を揃えて言った。
申し訳なさそうな表情を浮かべるジビアに、リリィと他の2人が首を傾げた。
どうやら、ジビアの解雇だと思ったらしい。
ジビアが事の顛末を明かすと、納得したらしく、『あっ』と声を漏らした。
その言葉に首肯して、ジビアは声のトーンを落とした。
自分のちょっとした憶測の答え合わせにはなるだろう。
自嘲するようにジビアは笑う。
深くは語らないが、大凡は合っていることがわかった。
一度俯いてから顔を上げた。瞳に、光を宿して。
ジビアらしい、力強い声だった。
私は短く端的に応え頷いた。彼女は、強い熱を纏っている。
”私の目がそう言っている”。
3人はジビアの熱量をすぐに理解出来なかったようではあるが、その強い意志は感じとっていた。
サラがおずおずといった様子で手をあげた。
恥ずかしさで顔を真っ赤にするサラと対象に、勝ち誇ったように笑顔をこぼすリリィ。
という証言がある。
ちなみに、食後のお茶に毒を盛る作戦の前に「絶対外されますよねっ!私たちっ!」と、リリィが1番(大袈裟)焦っていた。
そんな3人を見つめているグレーテが「ふふっ」と嬉しそうに吹き出した。
グレーテがたっぷりと惚気ける。
それはこの5人問わず全員に共通している事だろう。
円陣を組むように密着し、小声で作戦会議を始める。
その間、私はしばらく黙っていた。
人との絆は、私のような人間が深めていいものじゃない。
何より、単独行動の方が動きやすいのだ。
なにも、仲良しこよししてやる必要はない……。
『屍』の協力者を捉えるのに、こんなに人を使う必要も無い……。
こんな夜に集まってコソコソしていれば怪しまれるに決まっている。
私なら……
それが1番、自分がやりそうだ。
あくまで、『屍』を捕まえるのであればの話しだ。協力者の捕縛では無い。
ジビアの意見に反対は生まれなかった。
見込みは薄くても、彼女らしいそのやり方を実行してみる価値はあるだろう。
というのが本音だ。
4人は口元に笑みを浮かべた。彼女たちがなぜ笑みを浮かべるのか、私には分からないが。
そういえば、前回の不可能任務の際のメンバー紹介でクラウスに言われてたな……。
と、そこで思わぬ人物が突然意外な声を挙げた。
なかなかカオスだ……。あのグレーテが『だぜ』まで言っている。
表情は変わらないが、つい目をパチパチさせた。
自分たちがどれだけ愉快か、自覚はなかったらしい。結構驚いていた。
そんな、どこか間抜けたやり取りの後でジビアが宣言した。
ゴツンッ
全員がごつんと頭をぶつけ合う。眩しい眼差しを受け、渋々といった様子で少女もそれに乗っかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。