第27話

お願い
327
2024/08/07 13:44 更新


選抜の噂はすぐに広まった。


皆は選抜に選ばれるために訓練に励んでいる。
あなた
……


私は選抜にそこまで興味は湧かず、最低限の訓練をするだけで他は別のことに費やしていた。



コツッコツッ


少女は、機械のような乾いた足取りである人物の部屋に向かっていた。


その人物の部屋の扉は常に開いている。


何か作っているのか、カチャカチャと部屋からは音が聞こえている。
アネット
ふんっふんっふふんッ〜♪



“灰桃髪の少女__アネット“


彼女はご機嫌な様子で工作をしていた。電気をつけず、差し込む太陽の光だを照明代わりにしている。


作っているのは......銃……のようなものだ。



没頭している様子のアネットに声をかける。
あなた
……アネット
アネット
んぇっ、あなたのセレネの姉貴!

地面から跳ねるように立ち上がり笑顔を浮かべる天使のような灰桃髪の女の子。


その笑顔の下にあるのはきっと、誰もが恐れる悪魔なのではないかと思っていた。
あなた
頼み事をしたい……今、いい
アネット
俺様忙しいです!
あなた
.......牛乳プリンあるけど、いらない?

断られるとわかっていた私はそう言って後ろに隠していたプリンを見せる。


しかも、いつもより一回り大きい。
アネット
俺様ッ、姉貴のお願い聞きます!
あなた
あるものを作って欲しい




アネットに理由を含めて伝えると彼女は『明日渡しますねッ!』と言ってくれた。



*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――




あなた
......アネット
アネット
ん?なんですかっ?

いつもより一回り大きめな牛乳プリンを平らげたあと、声をかける。




何を考えているのか分からない目の前にいる少女は笑顔を浮かべて私を見る。
あなた
多分___

言いかけたところで1度止まる。
あなた
__いや、やっぱりなんでもない。お願い、聞いてくれてありがと……

彼女は不思議そうに首を傾げて私を見ていた。


コツッコツッ


そして、それ以上何も言わずに部屋から出ようと扉の方に足を進める。
アネット
……姉貴


扉を出るところで呼び止められて後ろを振り返る。
あなた
なに?





振り返った先にいるアネットの瞳は、緑ではなく、何故か黒く見えた。





けれど、不思議と怖くは無い。

アネット
俺様と”お揃い”なんですねっ!


そう言うと天使のような笑顔を再び浮かべた。
あなた
……


私にはそれがなんなのか分からない。


けれど、予想くらいはできる。性格、気質......その貼り付けた笑顔の下に隠れているであろう思考は予想出来た。


”画家の目に映るモノは、嘘をつかない”___かつてクラウスに告げた一言は、間違っていない。


引き立て役の背景、主人公の仮面、アネットモデルの言葉。その全てが物語っているように思えた。



アネット
……?、どうかしましたかっ?
あなた
......なんでもない







あなた
……そうかもね

ただ黒い瞳で薄い笑みを浮かべた。


それからアネットは何も言うことなく、あなたのセレネが部屋から出ていくのをジッと見ていた。


コツッコツッ

それを気にすることなく部屋を後にする。


*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――






コンコンコン キィ



自室に戻るとすぐにモニカが部屋にやってきた。いつものように来た途端読書を始める。

いつもと違うと言えばベッドではなくソファーにいることくらいか。
モニカ
珍しいね
あなた
なにが?
モニカ
キミがアネットのところにわざわざ行くなんてさ
あなた
ただ頼み事をしてただけ、大したことじゃないよ
モニカ
あっそ

こうして素っ気なく返されるのはいつものことである。


ガタッ


イーゼルを閉じて部屋の壁に立てかける。ついでに椅子もそこに置いた。
あなた
……選抜の件、モニカは自信あるのか?
モニカ
まぁね、どう考えてもボクは選ばれると思うけど?

相変わらずの不遜な笑みを本から覗かせて私を見る。
あなた
そーだね



誰を連れていくかはクラウスとグレーテに委ねられている。
*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――
グレーテ
そうですね....それでは__
クラウス
……ふむ
*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――

クラウスの部屋からはまだ声が聞こえてきている。


モニカ
……キミは


モニカの真剣そうな声色が聞こえ、耳を傾ける。
モニカ
『屍』退治に”参加”するの?

『参加』というワードを強調した言い方。モニカはもう分かっているらしい。



わざわざそれを聞くために私の部屋にやってきたんだろう。
あなた
参加か......
モニカ
キミのことだから、どーせ事前にクラウスさんから貰ってるんでしょ?任務のこと
あなた
よくお分かりで.......

あなた
参加しない.......結論から言えばね


理由は色々あった。が、『『屍』と面識がある』なんて口が裂けても言えない。
モニカ
なんで?

案の定理由を求められる。
あなた
わかってるのに聞く理由は?
モニカ
確認のため
あなた
……嘘だろ(¬_¬)
モニカ
さぁ?


とぼけるような態度ではあるけれど、隠しているのは自分もであるからこれ以上は言えない。


言っても負けるのは間違いなく自分なのが想像できる。


あなた
怪我が広がるリスクが大きいな


棚から1冊の本を取り出してベッドに俯せで寝る。枕に顎を載せた状態で本を開いた。

モニカ
え、まだ塞がってないの?
あなた
完全にはな
モニカ
薬塗ってるんだよね?遅くない?

訝しげな表情でモニカが言う。


確かに遅いのは事実だ。もう既に3週間は経っているのに塞がりきっていない。


それはモニカでも驚いて当たり前だ。
あなた
言ってなかったか

本を読み続けながら会話をしていた。
あなた
……この間来た医者に相談したら”無痛症に近い”、そう言われた


パレスとは別の場所を取り、闇医者に見てもらった結果を伝える。


モニカには以前、痛覚が鈍っていることを伝えてあった。
モニカ
......


表情を見る限り、モニカはなにかを考えていた。
あなた
キズの治りが遅くなってる.......だから参加しない

いつもの通りの冷淡さで喋り続ける少女。その目線はずっと本に向かれている。
モニカ
そ……ま、いいか
あなた
(いいのか……)
チラリと横目で見て思いながらまた視線を戻す。



あなた
……私を抜きにするとして、あとは誰が選ばれると思ってるの

ピラッ


また1ページ捲った。
モニカ
少なくとも、あのポンコツ2人は無いでしょ


モニカが言っている2人と言うのはリリィとジビアで間違いないだろう。

リリィはドジでジビアは脳筋......2人はないと思うのも頷ける。
あなた
……

*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――
サラ
先生から『料理を作ってくれ』ってお願いされたんすよ。今、グレーテ先輩と作戦会議で忙しいようで
リリィ
へーぇ、先生が料理のお願いを……

「「……」」
リリィ
チャンスっ!私、毒を持ってきますね!
ジビア
あたし、拘束用のワイヤー取ってくる
サラ
無駄のない連携っ?
*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――


台所の方ではなにやら騒がしい。


時計を見ると夕食を食べる時間までそう長くは無かった。
あなた
.....もう夕飯の時間だし、食堂に行く
あなた
モニカはどうする
モニカ
.....ボクも行こうかな

時間的にはもうそろそろ夕食を食べる時間だ。移動してもいいだろうと思い、モニカを誘う。


すると、ソファから立ち上がり扉の方へ向かった。

キィ
モニカ
ほら、はやく行こーよ
あなた
.........そーだね


モニカについて行くように食堂の方へ向かった。

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