目的地の屋敷に着くとそれぞれ部屋を案内された。
案内された部屋に荷物を置き、テーブルの上に置かれた服を持って指定された空き室に向かう。
私よりも先にグレーテとリリィがそこで待っていたが、ジビアの姿が見えない。
ふと2人が手にしている服を見る。2人には手袋が支給されていないようだった。
袖の隙間から痣が見えないように『肌荒れしやすい』とでも言って配慮してくれたのだろう。
キィ
私が来てすぐにジビアが部屋にやってきた。かなり険しい顔をして。
鋭い目つきで手にしているメイド服を睨みつけていた。
ガチャッ キィ
しばらくして別の扉が開かれ、私たちは一斉にそちらの方を向く。
扉の先から出てきたのは、金髪の、力仕事が得意という快活な笑みを浮かべている女性だった。
そう名乗る女性に私たちは履歴書を差し出す。
それから彼女は怪訝そうな面持ちで頭を搔いた。
鋭い目つきでメイド服をずっと睨みつけている。
と何か察したように言ってオリヴィアさんは苦笑いを浮かべた。
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オリヴィアさんの指示でメイド服に着替えた。
黒のワンピースに白いエプロン、カチューシャを着けて最後に手袋を嵌めれば完成だ。
メイド業に励むのに、腰より下まで伸びている髪の毛は流石に邪魔になる。
髪の毛を左サイドに縛って、1部を引き出しながら三つ編みをする。それをピンで止めてお団子にした。
かなり動くのが楽になる。
潜入先の下調べは私とグレーテで済ませている。
屋敷の主の名前はウーヴェ=アッペル。現役の上院議員だった。
裕福層の既得権益を手厳しく批難し、貧困層の生活改善を推進している。現在は福祉関連の予算確保のために、奔走しているらしい。
だが、こんな山奥に住んでいるのは不思議だ。
バスに1時間乗り、バス停から更に1時間歩いてやっとたどり着く。当然、首都からかなり遠い。
ガチャッ キィ
先程来ていた空き室の扉を開くと部屋いた3人の体が一斉に硬直した。
__私の頭を見て。
グレーテも少し驚いている様子。

リリィが硬直したまま口だけ動かし、グレーテはにっこり笑顔でそう言ってくれる。
2人が言うなら大丈夫だろう。
私から視線を外してジビアが再びメイド服を睨みつける。
ニヤニヤと口を歪めながら言うリリィをジビアが殴った。
かなり気にしているらしい。
拳を掴み合う2人の隣では、グレーテがテキパキと支度を済ませていた。
グレーテはテキパキと2人の隣で支度をしている。
ジビアとリリィも支度を進めた。
「「ん?」」
壁にはひびが広がっているほどだ。
とてつもなく驚かれているが本当のことだった。グレーテに言うのも初めてだ。
グレーテからは品の良さが感じられるから、政治家の娘と言われても納得もできるだろう。自分にそんなものは備わっていない。
私の出自自体は芸術家だ。が、家は持家だった。両親の結婚祝いで祖父がプレゼントしてくれたらしい。住居費は祖父に甘えず一家できっちり払っていた。
お坊ちゃん育ちの父が、自分の好きな道で生きていくのに親を頼るのは恥ずかしいと自ら申し出たと聞いている。
と軽く頭を振って任務に集中する。
同意するようにグレーテが頷く。
ジビアは宗教学校の制服を脱ぎ捨てると、早着替えでメイド服を見に纏った。
グレーテも意気込んでいるようだ。
そう不敵な笑みを湛えて、私たちは任務を開始した。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。