第5話

 # 4 犬猿
53
2024/01/01 07:07
リブ
ここ、かな?


アネの言う通りに進むと、今度はクリームっぽい、黄色っぽい色から紫系統へと色が変わった。




チームごとに決められてるのだろう。



ハオ
っだぁ!?



今まで喋ってこなかったハオが突如声をあげる。



リブ
どうしたっ!?



後ろのほうにいるハオを見るために皆が振り返る。




そこには、「鳥につつかれる」ハオの姿があった。



ツアキ
え~~!
ハオって小鳥さん飼ってるの~~!?
いいなぁ、ツアキも小鳥さん飼いたかったの…。
ハオ
俺のじゃ、ねぇよ……。
リブ
とりあえず、捕まえよう。
で、情報チームの人に頼もう。



そういってリブが白く、一部が赤い鳥を捕まえようとした。










おやめなさい!!








前方から小さく、だが通る声が聞こえた。



そして、その声の通りに皆は動きをやめた。



____鳥以外。



全く、業務に支障をきたしてしまいますわ…。本日だけはやめてくださいまし…。



あの声から数秒後、ぶつぶつと呟きながら歩く女性がやって来た。




あら。



その女性とヒガンたちの目が合った。




あまり見ないお顔……。新入社員の方々かしら?
______どうして止まっておりますの?




ヒガンたちはハオ除く全員が「は?」という顔をした。




やめろ、と言われたから動かなかった。



なのに、出会ったら「なにをしている?」と言われる。



これで疑問に思わない事なんてあるだろうか?



ハオ
痛ってぇよ……この鳥……。
あら。



その女性はハオの状態に初めて気づいたようだった。



あ、その鳥には触れないでくださいまし。
あまり良きことが起きませぬから……。



また同じような事を言われた気がするが、ひとまずその鳥には何もしないでおくことにした。



ハオ
……い゛っ!!!髪持ってかれた……。



ブチブチッといかにもな音を出して鳥がハオの髪を数本抜いた後。




そいつはどっかへぷらぷらと行ってしまった。




ハオ
___?
お帰りなさったようですね。
其方、お怪我の方は?
ハオ
………特に。大丈夫です。




ハオは出会ったときのように、石像かのように静かになった。




____こいつも忙しいな。



あちらは「罰鳥」というアブノーマリティでして。
偶に突きに来るのですが、お邪魔をしてしまうと大層機嫌を悪くしてしまうのよ。
ツアキ
え~~!
あれ、アブノーマリティだったんだの……。
可愛かったの…!
ふふふ。
確かに、あちらは可愛い部類ですわね。
ツアキ
……あっ、お名前聞いてもいいですの?
何かの縁かもですの~~!



すると女性は若干困った顔をしだした。



_______目は閉じたままで。




あらあら……。
妾はそこまでの分際の者ではありませぬわ。
ツアキ
いやいやいや!!
ここの社員生活をしてればまた会う機会もあると思うの~~!
だから……今のうちに知っておきたいの~!
そう、でしたらお言葉に甘えて_____








キキョウ
妾はキキョウ、と申しますの。





キキョウ。



そう名乗った彼女はセラとはまた一風違ったお嬢様だった。






言うならば、なんだろうか。




セラは「洋」で、キキョウは「和」といった感じだろうか。





____セラに関しては腹パンしてきたのでお嬢様とは言い難くなってきたが。




どちらにせよ、二人は似ているようで異なる存在だった。






キキョウ
____そういえば、なぜ先ほど出会ったときに其方らは固まっておりましたの?
他に何かいらっしゃいましたか?




ヒガンらはまたぽかんとした。




本当に、何を言っているのだろうか。



ツアキ
え、いや、キキョウさんが「おやめなさい」って言ってたの…。




キキョウはツアキの言葉を理解するのに10秒必要だった。



そして、「ああ、あれのことね。」と話しだした。

キキョウ
実は、あれは其方らに向けてのお言葉ではありませぬの。
そこまで声が大きかっただなんて……。
ごめんなさいね。
リブ
いえいえ、それに僕らも助けられましたし。
セラ
なにかありましたの?大声まで出して。



するとキキョウは顔をしかめた。


キキョウ
えぇ、少しね……。
長くなりますから、簡潔にまとめると「喧嘩」の仲裁をしていた、かしら……。
キキョウ
んん、こういう話はおやめましょう。
ところで、情報チームの見学は既に終わっておりますの?
リブ
まだですね。



リブが代表して答える。


キキョウ
でしたら丁度いいですわね。
私も情報チームの者ですから、ご案内いたしますわ。
ツアキ
おお~~!
頼もしいの~~!!




ツアキがキラキラと目を輝かせる。



____ツアキ、ほんといろんなことに興味津々だな。






















と、キキョウの誘いによって、ヒガンらは無事に情報チームに着くことができた。







が、そこに広がってるのは修羅場だった。


黙っててください。
さっきからそれしか言ってないじゃん。
何。怖いの?
貴方の声が至極耳障りであるということですよ。
業務に影響します。
そうやって仕事仕事って言って。
依存してるの?
仕事にまで依存しちゃう人生とか相当だね。
可愛そうな人生。
酷い思考回路ですね。
ほかの分野にその脳を使った方がいいかと。
へぇ。
否定はしないんだ。
なに?ヒドイン気取り?
キッショいね。
今の言葉に否定の意も含めたつもりでしたが。
理解できなかったようですね。
わかりづらく話してる方が悪いでしょ。
簡潔に喋れない。
あーあ。赤子からやり直してくれば。
そちらこそ、そんな理解力の無さで生きていけますか?
両親の元に行ったほうがいいのでは?
……!
黙れよ生態系の最底辺が!!





飛び交う暴言にキキョウはため息を吐いた。




キキョウ
あぁ………先ほど止めたばかりなのに……。
リブ
これ、だったんですね。
キキョウ
えぇ……。


キキョウはさもめんどくさそうに2人に近づいた。



キキョウ
御二方。
おやめくださいまし。
業務に遅れが生じてしまいますし、何よりも新入社員の研修ができませぬわ。
初対面に対してこの様だなんて失敬です。
あ………キキョウ。
もう戻ったんですね。
キキョウ
モアさんも、クロウさんも。
今は業務に念を注いでくださいまし。
モア
……キキョウがそういうなら…。
クロウ
………勿論。





キキョウの活躍により、喧騒は収まった。



というか、アレを止められるキキョウって一体何者………。



クロウ
……さて、お見苦しいところをお見せしてすみません。
私は情報チームのチーフ、「クロウ」と申します。
ツアキ
え〜〜!?チーフだったの〜!
クロウ
……どうかしましたか?
ツアキ
いやぁ、さっきの喧嘩でチーフと戦ってただなんて………って思っただけなの。
クロウ
…………まぁ、彼女は少々特殊な度胸のようなものを持ってますね。



クロウは嫌そうな顔をする。



相当、さっきの奴のことが嫌いなんだろう。




クロウ
さて、ここの情報チームでは、主に「アブノーマリティの特徴を掴み、対処法を研究する」です。
クロウ
名前の通り、「情報」が鍵を握るチームですね。



クロウがそこで一息をつく。



まさかとは思うが、これで説明終わりとかは流石に______



クロウ
以上です。




………終わってしまった。




多分、10分も話してない。



なんなら話を聞くよりキキョウと話してた時間の方が長い。




ヒガン
………服。



ヒガンは、少しでも、それこそ「情報」を得るために、なんとか話を繋げようとする。



セラ
だから!!



また腹パンを喰らう。



なお、威力はそこまで強くなかったので無視する。



一方、セラはキキョウから一言、言われていた。


ヒガン
“なんか食べてる”が、それはなんだ。
セラ
命令しない!!



先ほどより、すこし強くなったが無視をする。



心配をしたのだろう。



キキョウがヒガンに声をかけたが、それも無視する。




いい、情報が得られればいい。



好感度が下がろうと、得られればいい。



〈アレ〉に関係なくても、いい。



いずれどこかで役に立つから。


クロウ
……ああ、これですか。
クロウ
これは………その…………服の特殊能力と言いましょうか。
クロウ
この服には「死体を食べて、体力を回復する」という能力があるんです。
クロウ
当然、その死体を食べるのは私自身ではありません。
この服にある「顔達」です。
よって、食べているものは誰かの死体、が一番正しいでしょうか。
ヒガン
へぇ。



あたりの空気が少し変わる。



死体を食うとかいう少々グロテスクな話題になってしまったからだろうか。




そこには何とも言えない感情が漂っていた。




クロウ
他に、何かありますか?



誰も手を挙げなかった。



クロウ
では、情報チームの説明はこれにて。
次の教育チームには…………キキョウに連れて行ってもらってください。
キキョウ
……妾?
クロウ
手が空いてますので。
キキョウ
……かしこまりました。



では、行きましょう、と言ってキキョウは皆を誘った。









ああ、そこの君。



突如、天井から声が聞こえた。





スピーカーから流れる音声だった。
ああ、そうだ。
キキョウに一番近い君だ。



「監視室」に来てくれ。
クロウに案内してもらってね。
クロウ
……私ですか……。
ここにはクロウしかいないだろう?
クロウ
キキョウとかにも頼めばいいじゃないですか。
まだ資料作り終わってないです。
キキョウとクロウ以外の情報チームは作業中だ。
そして、キキョウの頼もうとすると……
キキョウ
断固お断りいたしますわ。
…と、こうなる。
クロウしかいないんだよ。
クロウ
………仕方ありませんね。








クロウは嫌々、といった感じでキキョウにもっとも近い人物を手招いた。























クロウ
……ここです。




人物は礼で感謝を伝えた。



クロウ
私が入ってはいけなさそうなので、ここで待ってますね。
帰りも案内しろ、と言われるでしょうし。



人物は、首を一回だけ縦に振った。





そして、その重々しい扉を開いた。









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