第6話

 #  5 誘い
61
2024/01/01 07:07





人物は、中に入った。




中は暗く、明るさと言えば、たくさんあるモニターだけだった。



たくさんあるとはいえ、やはり心許ない明るさだった。



ああ、いらっしゃい。
そこの椅子の座ってくれ。



黒髪が言う。


それに従って人物は椅子に座った。




いやあ、それにしてもよく来たね。
銀朱ぎんしゅ
銀白ぎんはくとはどうだい?




銀朱は黙った。




喋ってはいけない気がしたからだ。




ははあ、なるほど。
喋らないのか。
まあ悪くない。
そうだ、自己紹介でもしようか。



目の前の奴はやわらかな作り笑顔を見せた。
X
管理人______X、さ。




銀朱はだっさい名前だ、と貶した。



X
それにしても、まさか銀朱が来るだなんてね。
思いもしなかったよ。
X
どうしたんだい?
腕でも落ちたのかい?



銀朱は首を横に振ろうとした。




X
それとも、銀白を探してかい?



銀朱は首を振ろうとするのをやめた。



X
正解、か…。
X
いいね。褒め称えるよ。



Xはにやりと笑った。



X
もどかしいだろうから、先に答え合わせをしよう。
X
銀白は、ここにいる。




銀朱は目を見開いた。







いる?



銀白が?




ここに?







例えるならなんだろうか。



借金1億円を返したくて、藁にもすがる思いで宝くじをやったら2億円手に入れた______




多分、そんな感じだろう。




X
ただ、言っておく。
X
多分、銀白は銀朱のこと、忘れてるよ。
銀朱
!!!!!


銀朱は声にならぬ声を出した。



X
諦めて声を出せばいいじゃないか。
X
安心してくれ。
録音もしてないし、俺と銀朱以外、ここには誰もいない。
X
語ろうじゃあないか。
時間もある事だ。
銀朱
………信じていいのか。
X
ああ。




低く、冷えきった声を銀朱は発した。



銀朱
聞く。
銀白はどこだ。
X
ここだ。
銀朱
詳しくだ。
X
では地下とでも言おうか。



銀朱は顔を顰めた。



知りたいのは___例えば、◯◯チームである、とか。



そういうものだ。



X
ここから先はお楽しみってやつさ。
X
……ああ、もうひとつ、教えてあげるよ。
銀朱
……なんだ。
X
銀朱は、生前と大きく変わってしまったよ。
銀朱
___生前ってなんだっ!!死んだとでも言うのかっ!!
X
まあ落ち着けよ。




銀朱は声を荒らげる。


Xはそれを宥める。




X
右目は失明。左目ももう時期機能し無くなるだろう。
今はエコーロケーションでどうにかなってるらしいがな。
銀朱
なら、生前だなんて表現は不適切だ。訂正しろ。
X
目、だけならの話だな。それは。



銀朱は、その言葉から、1つ、考えてしまった。



















X
耳も聞こえにくくあると言ったらどうする?








予想が、的中した。





X
もうそうなったら、生物学的には生きてるが、社員としては死んでると言えるだろうね。
銀朱
黙れよっ!!!!!









管理人は目に闇を宿した。







X
ちなみにその犯人、**なんだがね。





銀朱は、これまでかと言うほどに目を開いた。













銀朱
ふざけるのも大概にしろ!!!!!
銀朱
この、人でなし!!!!!!!!







そう言うと、銀朱はその場を後にした。




クロウ
ああ、終わりました…………痛っ!!!


ガン、と音が響く。


銀朱が開けた扉が頭に当たったのだ。



銀朱
………すまない。




クロウはその声を聞いた瞬間に悪寒が走った。



先程の会話、声量が大きく、厚い扉1枚を挟んでも声が微かに漏れていたのだ。








クロウ
あなた、銀朱だったのですね。
銀朱
悪いか。



銀朱はクロウを軽く睨んた。



クロウ
いいえ。
なんと言いましょう。
尊敬とでも言いましょうか。
銀朱
はっ。
銀白ならわかるが、なぜ銀朱を選ぶ。
クロウ
あなたも随分凄いですよ。



クロウが歩き始める。




クロウ
気づいていないかもしれませんが、実はだいぶ時間が経っています。
もうお昼時です。
クロウ
この会社には食堂が存在します。
よければ、共にお昼を食べませんか?
銀朱
クロウと2人だけか?
クロウ
そうですね………。
少々お待ちください。






するとクロウはトランシーバーのようなものに話しかけた。






クロウ
……はい、ありがとうございます。
ただいま、許可を貰いました。
チーフらと共に食べましょう。
銀朱
ふぅん。
銀朱
全員と会えるのか。
クロウ
いえ、条件付きのようです。
クロウ
確かに、同じ空間に全てのチーフとは会えます。
ただし、下層のチーフ。〈カル、スノウ、レン〉と顔を合わせることは出来ないとのことです。
それでよろしければいかがですか?




銀朱は少し考えた。




銀白がチーフとやらであるという確証は無い。



ただ、可能性は0ではない。



仮にチーフでは無かったとしても、貴重な情報を得られるだろう。





つまり、ほぼリスクなしで大きなリターンを得られる。




これを好条件と言わずなんと言う?








銀朱
________乗った。その話。



クロウは優しく微笑んだ。




クロウ
では、行きましょう。






2人はその場を後にした。





































な〜んか面白そうな奴いるじゃあ〜ん!!












プリ小説オーディオドラマ