人物は、中に入った。
中は暗く、明るさと言えば、たくさんあるモニターだけだった。
たくさんあるとはいえ、やはり心許ない明るさだった。
黒髪が言う。
それに従って人物は椅子に座った。
銀朱は黙った。
喋ってはいけない気がしたからだ。
目の前の奴はやわらかな作り笑顔を見せた。
銀朱はだっさい名前だ、と貶した。
銀朱は首を横に振ろうとした。
銀朱は首を振ろうとするのをやめた。
Xはにやりと笑った。
銀朱は目を見開いた。
いる?
銀白が?
ここに?
例えるならなんだろうか。
借金1億円を返したくて、藁にもすがる思いで宝くじをやったら2億円手に入れた______
多分、そんな感じだろう。
銀朱は声にならぬ声を出した。
低く、冷えきった声を銀朱は発した。
銀朱は顔を顰めた。
知りたいのは___例えば、◯◯チームである、とか。
そういうものだ。
銀朱は声を荒らげる。
Xはそれを宥める。
銀朱は、その言葉から、1つ、考えてしまった。
予想が、的中した。
管理人は目に闇を宿した。
銀朱は、これまでかと言うほどに目を開いた。
そう言うと、銀朱はその場を後にした。
ガン、と音が響く。
銀朱が開けた扉が頭に当たったのだ。
クロウはその声を聞いた瞬間に悪寒が走った。
先程の会話、声量が大きく、厚い扉1枚を挟んでも声が微かに漏れていたのだ。
銀朱はクロウを軽く睨んた。
クロウが歩き始める。
するとクロウはトランシーバーのようなものに話しかけた。
銀朱は少し考えた。
銀白がチーフとやらであるという確証は無い。
ただ、可能性は0ではない。
仮にチーフでは無かったとしても、貴重な情報を得られるだろう。
つまり、ほぼリスクなしで大きなリターンを得られる。
これを好条件と言わずなんと言う?
クロウは優しく微笑んだ。
2人はその場を後にした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。