スタッフ「やっぱり行ってきた方がいいって、」
深澤「大丈夫だって、すぐ治るから。それより、今日の仕事は雑誌の取材か、どんな服来て行こう、」
スタッフ「だめ、行ってきて。今日から1週間のお仕事はやって。でもそこからはキャンセル、もしくはお仕事を断るから、」
扉の向こうからは、激しい口論が聞こえた。
深澤「はぁ、俺は大丈夫だって。」
スタッフ「分からないよ、やってみないと、」
深澤「でも今は有り難く頂いたお仕事をしたいの、」
スタッフ「っ、でも、」
困り果てたスタッフに助け舟を出す様に、俺はドアノブを捻った。
岩本「ふっか。」
深澤「照っ、」
岩本「体調が良くなかったら、有難いお仕事も出来なくない?」
一筋の光が差した様な目で俺の方を見る。
“ありがとうございます”
そう念力でも使っているのか、
心の中で、微笑んでしまった。
深澤「それはっ、そうだけど、」
岩本「俺が言える事じゃないけど。俺らにとっても、1人1人にとっても、大切じゃない時間ってないと思う。」
深澤「っ、…」
岩本「9人、欠けちゃ、駄目じゃない?」
それは確かに、本心だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!