第21話

考えたね
350
2025/01/18 12:58 更新
ある大きめのゲームセンター。
そこは、普通の人間はあまり寄り付かない。
出入り口にはあからさまにヤバい警備員もいるし、その扉だって厳重だ。
およそゲームセンターとは言えない仄暗い雰囲気を纏っていて、明かりこそ目が眩む程眩しいのがまた気味が悪い。
そして、その中に入った少女も、およそこの場に不釣り合いな少女だ。
ヒカル
ヒカル
…。
保育園児らしい背丈と小さな矮躯。
周りの大人も気になるのか、チラチラと少女、ヒカルに視線を送っている。
しかし当の本人はそんなの気にしない。
キョロキョロと辺りを見回し見渡している。
それだけでも異様だと言うのに、ヒカルはどんどん奥へ進む。
奥にはゲームセンターらしい機械は少なく、カジノのようだ。
そして、その一角。
黄色いパーカーに黒いベストという目立つ服装。
ヒカル
ヒカル
見付けた!賭!
ヒカルは賭に駆け寄る。
人茂野賭
何だよ、ちっこいのか。
ヒカル
ヒカル
またちっこいのって呼ぶ!あのさ、お願いがあって…。
人茂野賭
あー、待て待て。とりあえずそこ座れ。
賭は自分の座っている席の隣を指差す。
このゲームセンターはそれなりに混んでいるというのに、賭の周りだけはまるで避けられているように人がいない。
ヒカルは仕方なく賭の隣の席に座る。
人茂野賭
で、何の用?わざわざこんな所まで来てよ。
賭はトランプのカードをヒラヒラさせながら頬杖をついている。
ヒカル
ヒカル
あー、用事はあるけど、その前に1つ聞いていい?
人茂野賭
ヒカルは周りにいる、ヒカルと賭を取り囲むように見ている人々に目を向ける。
最早取り巻きというか、群衆というか、聴衆というか。
すっかりここに来た理由を忘れてヒカルと賭を見ている。
ヒカル
ヒカル
アンタってさ、嫌われてんの?避けられてる気がするんだけど。
人茂野賭
んー…。
賭はニヤリと笑みを浮かべる。
楽しげで愉しげだが、やはりどこかいやらしいというか、嘲笑っているようだ。
人茂野賭
結構前からこうだよ。ちょっとボコボコにし過ぎたかな〜…。
賭がチラリと群衆に目線を向けると、皆一様に目を逸らす。
ヒカル
ヒカル
ホントに何したの!?
人茂野賭
いやぁ?何も?
ヒカル
ヒカル
何もしてなかったらここまで露骨に目逸らされないでしょ!
こんな場所でここまで恐れられることなんて容易に想像がつく。
ヒカル
ヒカル
人とか、殺してないよね…?
人茂野賭
………まぁな。
ヒカル
ヒカル
何その沈黙!?怖いんだけど!
人茂野賭
人殺しならお前も同じだろ?
周りに人がいるというのに、サラッと言った。
いきなり何を言うのだろう。
仮にもここはゲームセンター、公共の場だというのに。
ヒカル
ヒカル
ちょっ…!
人茂野賭
へーきへーき。ここの奴ら皆そんなもんだから。それより、何だよ?
賭の言葉に、ヒカルは周りの人を見るが、確かに驚いている様子の人はいない。
仮に驚いているとしても、「あんな小さな奴が」と言っているくらいだ。
人茂野賭
何か用があるんだろ?何だ?パスポートでもいるのか?
ヒカル
ヒカル
パスポート?
賭がポケットから黒いパスポートを取り出す。
ヒカルが見た事のあるパスポートではない。
何だか細かい模様があって、どことなく違和感がある。
人茂野賭
うん。ある程度のが無いと発行されない、政府にも知られてない空港で使える特別製。殺し屋とか誘拐犯とかが身分証明書として使ったりしてる。
ヒカル
ヒカル
いらない!ぜっっったいに!いらない!というか何その物騒な身分証明書!
人茂野賭
犯罪者が高飛びする時とか使ってるぞ?その空港。ファーストクラスとかも格安で使えるし、海外に行く時は信じられないくらい安い。
ヒカル
ヒカル
これ以上なくいらない情報!!
人茂野賭
何だよー。200万くらいで子供も買えるんだぞ?それくらい払ってやるって。これでもお前に期待してんだから。
ありえん額が飛び出してきた。
賭はそのありえん額のパスポートをしまう。
見れば、周りの人は萎縮してしまっていて、人がはけてきている。
この店は今日は赤字だろう。
ヒカルは少しだけ同情しながら賭に向き直る。
ヒカル
ヒカル
それは期待じゃなくない?
人茂野賭
期待だよ。そういう名前の、1種の賭けだよ。
ヒカル
ヒカル
またそんなこと言う…。
人茂野賭
で?
賭は先を促す。
何の用か、賭ならある程度の察しはついているだろう。
流石にヒカルもそれくらいわかる。
ヒカルは今試されているのだ。
頼み方、持ち出し方、条件、態度、見返り、交渉術、話術、理由、動機、進め方、適応力、順応力、機転、洞察力、その全て。
ヒカル
ヒカル
最近、ハヤテ達がさ。人でなしの情報を集めなきゃなんだって。今までのお代だって。
人茂野賭
ほーん?
ヒカル
ヒカル
でも多分、無理だよね?
人茂野賭
無理って?
分かって言っているだろう。
しかしそれを言う程の悪手は他に無い。
ヒカル
ヒカル
…人でなしってさ。死ぬか情報渡すかなら、死ぬよね?
人茂野賭
そーだな。
ヒカル
ヒカル
…それじゃ、ダメだよ。
人茂野賭
ダメって?それなら殺すだけだろ?今までと変わんねー。
ヒカル
ヒカル
変わるよ。
ヒカルは言い切る。
違うのだ。
今までとは、何もかも違う。
ヒカル
ヒカル
今までは、守るために仕方なく殺してたんだよ。こっちの都合で殺すのとは違うよ。
人茂野賭
?生きたい、守りたい。それもこっちの都合だろ。
ヒカル
ヒカル
全然違うよ!
ヒカルは怒鳴るように言い、テーブルを叩く。
ヒカル
ヒカル
相手が殺しにかかってくるなら、仕方ないで済ませたけど!こっちからつついて行ってるんだよ!?そんなのダメだよ!
賭はそう言うヒカルを見て、長いため息を吐いた。
人茂野賭
感情的過ぎだろ。
ヒカル
ヒカル
は?
人茂野賭
ちっこいのはやっぱちっこいのだなー。お前は俺を怒鳴りに来たのか?
ヒカル
ヒカル
いや、その、そういうんじゃなくて…。
人茂野賭
じゃ回りくどく言うなよ。はっきり言え。焦らすんじゃねぇよ。
まるで授業だ。
何を考えているのか。
ヒカルには皆目見当もつかない。
ヒカル
ヒカル
…あんたの情報を、渡したいの。
人茂野賭
ダメー。
ヒカル
ヒカル
だよね…。
当然だ。
人茂野賭
つまりアレか?ちっこいのの友達のために、俺の情報を渡せってことだろ?
ヒカル
ヒカル
うん。
人茂野賭
…ふーん?
賭は何故か上機嫌になった。
そして片手で頬杖をつきながら、自分のハンマーを取り出す。
ヒカルのハンマーとは違うハンマー。
人茂野賭
じゃあ、あるのか?俺が情報を渡したくなる代価、代償が。
ヒカル
ヒカル
え、代価?
人茂野賭
そうだ。まさかタダで教えて貰えるとか思ってんのか?甘ちゃんだなぁ、ちっこいのは。グラブジャムンも真っ青だわ。
ヒカル
ヒカル
ぐらぶ…?
人茂野賭
インドの菓子。アレ甘いぞーマジで。世界一甘いって言われてる。
ヒカル
ヒカル
あたしどんだけ甘ちゃんって思われたの!?そこまで!?
インドの伝統的な菓子と比べられた。
ヒカル
ヒカル
っじゃあ!何をあげたらいいの!?お菓子とか?!
人茂野賭
いや俺甘いもの嫌い。ビールが好き。
ヒカル
ヒカル
グラブジャムン食べたことあるのに?!
見た目が成人していると思えない賭がビールと言うと、未成年飲酒を目の当たりにしている気分になる。
というか、この青年は成人しているのだろうか。
ついどうでもいい事が気になってしまう。
人茂野賭
んー、あいつが好きなんだよ。甘いもの。それに付き合った。
ヒカル
ヒカル
あいつ?
人茂野賭
好きな人。
前にもこんな会話があった気がする。
どうやら賭はその人のことがかなり好きらしい。
この男をここまでゾッコンにさせるとは、一体どんな人間なのだろう。
ヒカル
ヒカル
えーっと、それは置いておいて…。あっ!じゃあ賭のこと追ってる人の情報は!?情報屋さんって呼ばれてる人!
人茂野賭
んー、それ意味無くね?ソイツの情報は欲しいけど、それはソイツから逃げるためだし。
ヒカル
ヒカル
う、うーん…。
ヒカルは頭を抱える。
かなり最終手段の切り札のつもりだったのだが、一蹴されてしまった。
人茂野賭
何だよ?もう引き出し無いのか?
ヒカル
ヒカル
い、今考えてる!
人茂野賭
それ俺に言うかぁ?思っても口に出すなよ。
呆れた様子でハンマーを弄ぶ。
ヒカル
ヒカル
(うーん…コイツが情報を渡す代価…うーん…?)
ヒカルは思わず黙ってしまう。
人でなしは情報を渡すくらいなら死ぬ、と以前聞いた。
死なずに情報を渡してくれる対価。
そんな対価を、代価を、単なる子供であるヒカルに支払えるだろうか。
ヒカル
ヒカル
あっ!じゃあハンマー返すから!
人茂野賭
何でだよ。別に返さなくて良いし。
ヒカル
ヒカル
うぅ…。
賭は相変わらずハンマーを手にして遊んでいる。
最早さっきの発言は苦し紛れだ。
ギャンブルで戦うことも考えた。
賭の情報を賭けの報酬にしてゲームをするのも1種の手だが、賭に勝てるとも思えない。
この男は戦い方を教える時は手加減するが、賭け事になると手加減しなくなる。
保育園児が相手でも容赦しないし、ボッコボコにしてくる。
ヒカル
ヒカル
うーっ…。
いっそ好きな人でも探そうか。
賭の話に度々出てくるその好きな人を見付け、その人に説得してもらうとか。
そんなことすら頭をよぎる。
好きな人。
ヒカル
ヒカル
(…あっ!そうだ!)
好きな人と言うが。
恋人と言ったことはない。
ヒカル
ヒカル
じゃあっ!賭の好きな人と結ばれる手伝い!するよ!
人茂野賭
あん?
凄まれたし睨まれた。
ヒカル
ヒカル
(えっ何で!?何か失敗した!?)
もしや地雷だったのだろうか。
それか何か、片思いで満足とか、子供に口出しされる覚えは無いとか、そんな感じだろうか。
ヒカル
ヒカル
いやほら!あたしマリアとりょーおもいだし!オトメゴコロは分かってるつもりだし!
人茂野賭
乙女心、ねぇ。
眉をひそめ訝しげな表情をしながらも、怒っている様子は無い。
ただ少し不機嫌なだけのようだ。
怒っている時の賭は正直手が付けられないし、怒っている時は近付きたくない。
荒ぶる鬼神というか、なんと言うか。
ヒカルは初めて見た時はドン引きしたものだ。
その日の気分で生きてる人間はこんなもんだよ、と言っていたが、皆あぁだったらヒカルは大人になった時生きられる自信が無い。
ヒカル
ヒカル
だっ、だから!情報、渡しても、良いかなぁ…。
人茂野賭
…。
賭は何か考えている。
人茂野賭
んー…。でもなぁ…。
ヒカル
ヒカル
(さ、流石にダメかぁ…。)
ヒカルは肩を落とす。
人茂野賭
…じゃ、別の人でなしの情報教えてやろうか?
ヒカル
ヒカル
えっ!?良いの!?というか誰の!?
賭はハンマーをしまう。
人茂野賭
そんなの決まってるだろ?俺の好きな人の、だよ。
ヒカルの動きが止まる。
ヒカル
ヒカル
…好きな人ぉ!?もっと良いの!?それ大丈夫なの!?
人茂野賭
ま、俺の情報じゃねーし。あいつもそんなんあんまし気にしないし。
あっけらかんと言う。
本当に好きなのだろうか。
ヒカル
ヒカル
ていうか、その好きな人?も人でなしなんだ。
人茂野賭
まーな。じゃ、教えてやるよ。そいつの本名も、色んな情報てんこ盛りで。
ヒカル
ヒカル
好きな人の情報安売りしてない…?バーゲンセールじゃない…?
人茂野賭
安売り?してないしてない。
賭は手を動かして否定する。
人茂野賭
ちっこいのなら、あいつと結ばれる手伝い、できそうだしな。
ヒカル
ヒカル
…。
つまりそれは、その人と結ばれるのは、決して安いことではない、重大なこと、ということだろうか。
人茂野賭
いやぁ、お前に賭けて良かったわぁー。愛が重い奴ってこういう手伝い上手そうだしなー。
ヒカル
ヒカル
えっ!?いや!愛重いとかじゃないし!全然!
人茂野賭
は?どこが重くないんだよ。公式のタイアップ曲聴いてみろよヤバいから。
ヒカル
ヒカル
メタい!
曲を再生しようとスマホを取り出す賭を止めながら、ヒカルは近くにいる人達を見ている。
近くにいる大人達は驚愕の表情、というよりは恐怖を感じている表情をしている。
ヒカル
ヒカル
…?ねぇ、何であたし何か怖がられてるの?
人茂野賭
んぁ?…あぁ、俺相手に色々言ってるからじゃね?俺、ここ出禁寸前くらいには遊び散らかしてるし。何やってんだあいつ、って思われてるんじゃね?
ヒカル
ヒカル
あんた何してんの?何度でも言うよ?何してんの?
ヒカルは椅子から降りる。
ヒカル
ヒカル
…じゃ、改めて、情報よろしくね。今から教えてくれる?
人茂野賭
ん、おけ。じゃあ……。
賭が何かに気が付いて黙る。
ヒカル
ヒカル
?どうしたの?舌噛んだ?
人茂野賭
噛んでない。いやな?ここまで来てちっこいのに教えてお終い、ってのもなーんかなーってな。
賭はにやり、と今まで以上に楽しげな表情を浮かべる。
これまでにない程の邪悪な笑み。
人茂野賭
ちっこいの。ちょっくら見せ場作ろうぜ?
ヒカル
ヒカル
は?
情報屋
情報屋
それで?私達に取り引きとは、どうしたのかな?
情報屋はバス停に備え付けられているベンチに座る。
陽一は情報屋の傍に立っている。
七星陽一
七星陽一
楽しそうな話題ですねぇー。それで、どうしたんです?人でなしさんと何かありましたか?
陽一はこてんと首を傾げ、情報屋はニコニコとしている。
ここまで全て読まれていたのかと錯覚してしまう。
ハヤテ
ハヤテ
(いや、なわけねぇか。人でなしが関わると情報屋の能力は効かねぇ。大丈夫だ。)
ライオン
ライオン
情報屋さん。夢さんの情報、1部抜けていますよね?まだ完全に登録はできていない。まだ情報屋さんは情報が必要。ですよね?
情報屋
情報屋
うん。そうだね?
ライオン
ライオン
でしたら、その足りない情報をお渡しするので、これ以上人でなしさんの情報を登録する手伝いをしなくても良い、ということにしてくれませんか?
ライオンはおずおずと、しかし確かな声色で言う。
先程の夢との会話を思い浮かべながら。
情報屋
情報屋
…でもねぇ。元々、彼女の情報はお代として集めて当然の物だよ?それは取り引きの材料にならないんじゃないかな?
マドカ
マドカ
いーえ。知ってますよ?夢と愛菜の情報は、それくらいの価値があるって!
マドカが挙手をして言い放つ。
マドカ
マドカ
夢と愛菜は人でなしの中でもトップクラスに強くて、だから中々情報を登録できなかったって!それを握ってるんですよ?
夢は言っていた。
愛菜は強かったと。

そして自分もそれくらいは強いと。
そして、その強さこそが、情報屋への取り引きにおいて重要なものになると。
マドカ
マドカ
だったら!取り引きのしようもあるんじゃないですか?元々ダメ元の仕事だったんじゃないですか?
マドカがイキイキとしている。
ゾーヤ
ゾーヤ
情報屋さん。どう?夢の情報、割と利用価値あるでしょ?それくらいなら、聞いてくれても良いんじゃない?
情報屋
情報屋
ふぅん…?あぁ、夢ちゃんが色々教えてくれたんだね。
情報屋は陽一に目配せする。
七星陽一
七星陽一
…あぁ、オッケーです。
陽一は頷く。
瞬間、ハヤテの首筋にひたりと何かが触れた。
ハヤテ
ハヤテ
っ!?
七星陽一
七星陽一
わぁ遅い。
陽一が以前見せた、恐怖伝染オカルティックシーザー
それの針の先が、首筋に当たっている。
ライオン
ライオン
は、ハヤテさん!?
七星陽一
七星陽一
あ、動かないで下さいねぇ。今はまだ熱くしてないですけどぉ。コレ、本領は拷問ですから。熱ーいですよぉ。
陽一は情報屋の方をチラリと見て、そしてハヤテの首を見る。
情報屋
情報屋
こういう方法は苦手なんだけどね。ま、私も仕事だから。
情報屋は依然ニコニコとしている。
これくらいは想定内なのかもしれない。
しかしここで退くこともできない。
ハヤテ
ハヤテ
っ…!脅しかよ…!
情報屋
情報屋
いやぁ、脅しというかね。人でなしの武器を持ってたら怖いし。
ヒカルのハンマーを思い出す。
確かにアレを持っていたら結構怖い。
しかしハヤテ達は武器なんて持っていない。
マドカ
マドカ
ちょ、ちょっと!あたし達そんなの持ってないですし!脅しって!
ゾーヤ
ゾーヤ
らしくないね、情報屋さんがそういう美学の欠片も無いことするなんて。割れた甲羅みたいだよ。
情報屋
情報屋
まぁねぇ。仕事だし。
七星陽一
七星陽一
そうですよぉ。お仕事ですよぉ。だから仕方ないです。さ、首から一撃でやるのも楽しいですから、どんどん抵抗して欲しいです。
陽一はほんの少しその手をハヤテから離し、そして近くのバス停の標識のポールに近付ける。
そして回転させる。
本当にハンドスピナーのようだ。
その大量の針1本1本の先が赤くなる。
打たれた鉄のような赤みを帯び、キキキ、と嫌な音を立てる。
七星陽一
七星陽一
僅かな摩擦で死ぬほど熱される特殊な武器です。その熱によって傷は止血され、簡単には死ねない。いい武器ですよねぇ。
うっとりしたような恍惚の表情を浮かべている。
ハヤテ
ハヤテ
っ…!
ハヤテは上半身を捻りその武器から距離を取ろうとする。
そしてその勢いで陽一から離れる。
しかし、ハヤテがナイフを取り出そうと上着の内側に手を伸ばした時、その手を掴まれた。
七星陽一
七星陽一
ダメですよぉー。
ハヤテの手に激痛が走る。
ハヤテ
ハヤテ
いつっ…!
七星陽一
七星陽一
これ拷問用ですからねぇ。僕も前触ったけど結構痛かったですしねぇ。
結構痛いなんてレベルではない。
ハヤテは痛む手を見る。
あの回転式の武器は、どうやら想像以上にえぐいらしい。
痛む箇所が赤くなっているが、血液が出ていない。
火傷になっているようで、ジクジクと痛む。
情報屋
情報屋
…うーん、そこまでしろなんて言ってないけどなー…。
七星陽一
七星陽一
いいえぇ。こんな絶好のチャンス、逃せないですよぉ。
陽一は力強く首を横に振る。
マドカ
マドカ
ちょ、これヤバくないです…?
マリア
マリア
だいじょーぶだよ、カメラちゃん。
マドカの肩に手を置かれる。
マリア
マリア
マリアがお肉君、何とかしてあげるよ。
ゾーヤ
ゾーヤ
マリア…!?毎度ながら、何でここにいるの?
マリアが陽一に微笑みかける。
七星陽一
七星陽一
…わぁ、流石マリアちゃんですねぇ。
陽一は少しだけ嬉しそうに言う。
七星陽一
七星陽一
マリアちゃん、何しに来たんですかぁ?
マリア
マリア
えー?別にー?ただ、カメラちゃん達のお手伝いに来ただけだよ?
七星陽一
七星陽一
ですかぁー。
陽一はハヤテから離れ、マリアの元へと歩き始める。
七星陽一
七星陽一
手伝い、なんて言われても、何するんですか?正直、僕らが頷くにはもう一押しっていう所なんですよぉ、この取り引き。
マリア
マリア
そうなの?
情報屋
情報屋
そうだね。だからこうやって諦めてもらうんだよ。私としても君たちを傷付けたい訳ではない。
情報屋は未だに余裕そうにベンチに座っている。
ゾーヤ
ゾーヤ
情報屋さん。分かってるの?一応数ではこっちが勝ってるよ?
情報屋
情報屋
うん。数だけではね。でももう分かったろう?私達にとって、その条件と取り引きは頷けるものじゃないってことだよ。何よりこれからも犯罪組織の人間は襲ってくる。お代が釣り合わないよ。
情報屋はあいも変わらず笑顔だ。
マリア
マリア
…お肉君。それ、マリア達に向けないで?怖いよー?
七星陽一
七星陽一
いいえ。マリアちゃんはこれくらいじゃ怖がらないでしょう?
マリア
マリア
えー?怖いよー。
と言いつつ怖がっているようには見えない。
マリアは串を取り出し、静かに陽一に向ける。
七星陽一
七星陽一
わぁ!流石マリアちゃん!
陽一は器用に両手で手を叩く。
パチパチパチ、と乾いた音が響く。
七星陽一
七星陽一
それで?僕と戦うんですか?
マリア
マリア
んー、どうしよーかなー。お肉君強いからなー。
マリアは串を両手に持つ。
情報屋
情報屋
まぁまぁ。皆。然るべきお代だから。私情に振り回されるのは子供の特権だけど、大人は私情を振り回すものだから。
ハヤテ
ハヤテ
だからって、はいそうですかって訳にも行かねぇだろ…!
ハヤテがナイフを向ける。
情報屋
情報屋
いやいや。待ちなさい。別にずっと人でなしを追わせるって訳でもないから。
情報屋は少し困ったように言う。
情報屋
情報屋
あととても強い人でなし1人分の情報くらいあれば、まぁ交渉の余地ありかな?くらいだけどね。
マドカ
マドカ
ぜ、絶望的…。
マドカが銃を構える。
致し方なく、ライオンも刀を抜く。
情報屋
情報屋
本当にもう…。
人茂野賭
ハンマーの能力持ち、5月13日生まれ、人茂野 賭ひともの かける!!
不意に、物陰から、ハンマーが飛んできた。
七星陽一
七星陽一
うおっと。
それは陽一の頬を掠める。
そしてそのまま、地面に凄い勢いで激突し、その着地地点は大きく凹む。
そしてハンマーの飛んできた物陰から青年が出てくる。
黄色いパーカー、黒いベスト。
青年の背は低いものの、ギラギラとした瞳がただの青年ではないことを伝えている。
人茂野賭
いーかちっこいの!見せ場ってのはなぁ!こう作るんだよ!!
楽しそうに、愉しそうに、嘲るように、嘲笑うように、賭は笑みを浮かべている。
ヒカル
ヒカル
ちょ、それあんたの本名じゃん!何で好きな人の方の名前じゃないの!?
ヒカルも物陰から出てくる。
人茂野賭
いやぁ、やっぱ、あいつが世界に補足されるとか、考えてみたら無理だった!ハッハハ!
ヒカル
ヒカル
この土壇場で?!あ!マリア平気!?
やけに上機嫌だ。
人茂野賭
いやー!楽しいわぁ!人生!最高!
ヒカル
ヒカル
ちょっ…。
情報屋
情報屋
…やぁ。君か。
情報屋が目を細める。
陽一も賭をじっと見ている。
ハヤテ
ハヤテ
何だあのクスリキメてそうな奴…。
マドカ
マドカ
ちょ、ちょっとハヤテ!コンプラ!コンプラ意識して!R指定されちゃう!
ハヤテ
ハヤテ
今そこ気にする場合か?!
殺しの時点でテレビだったら放送禁止である。
人茂野賭
ホラちっこいの共!俺の情報もあと少しで登録できる!もう1人分だ!
高らかに言い放つ。
ヒカルの持っているハンマーそっくりなハンマー。
ヒカルと一緒にいるのを見るに。
ライオン
ライオン
情報屋さんが執拗に情報を聞き出そうとしていた人でなしさん…!?
ヒカル
ヒカル
あ、た、多分それ!
ヒカルはマリアに駆け寄る。
ヒカル
ヒカル
マリアっ!平気!?
マリア
マリア
ひーちゃん…!
マリアは少し面食らった表情になるが、すぐに笑顔となる。
マリア
マリア
ありがとねー、助けに来てくれたんだねー。
ヒカル
ヒカル
あ、うん!
ヒカルも笑顔になる。
情報屋
情報屋
…成程ねぇ。
七星陽一
七星陽一
…で、どうするんです?
陽一はいつの間にか情報屋の後ろに移動している。
やはりとんでもない速度だ。
情報屋
情報屋
そうだねぇ。
人茂野賭
何だよ?嘘かよ?それとも焦らしてんのかよ?皆焦らすの大好きだなぁ。
賭は指を鳴らす。
パチン、と音が鳴ると共に、地面に着地、否、着弾していたハンマーが消える。
そして賭の手元にハンマーが出現する。
人茂野賭
ホラ、どーするよ。ちっこいのもそこそこ戦えるみたいだし?数の暴力とかいう便利の言葉もあるんだよ。
七星陽一
七星陽一
僕としては、マリアちゃんとり合うっていうのも楽しそうなんですけど…。
情報屋
情報屋
いや、それはダメだよ陽一君。別にここで戦う理由も無い。有難く受け取ろうじゃないか。
陽一は渋々恐怖伝染オカルティックシーザーをしまう。
あんな熱そうなものを服の中にしまうというのは中々勇気がいりそうだが、陽一はそうでもないようだ。
情報屋
情報屋
相変わらずだねぇ、君。さて、これでもう争いの真似事をする理由も無いね。
七星陽一
七星陽一
……………ですかぁ。
情報屋
情報屋
うん凄い沈黙しないで?そこまで残念がらないで?何?君戦闘狂だっけ?
陽一は何も言わずにマリアを見る。
マリアは笑顔で陽一から視線を逸らす。
情報屋
情報屋
あぁ、成程。お気に入りを殺すのは自分の感情への否定。だからか。
人茂野賭
あ?否定症候群?何だ、お前かよ。はー成程。そんじゃそっちのお前、性格わっりーのな。
情報屋
情報屋
ハハハ、君には言われたくないなぁ。
何やら険悪そうな雰囲気だ。
2人の間にバチバチと電気が見える。
マリア
マリア
じゃあ、ミツアミちゃん達、もう人でなしさんたち追わなくていーってこと?
情報屋
情報屋
ま、そうなるねぇ。ここまで強い子の情報2人分が手に入るからね。今までのどころか、これからのもチャラにしたいくらいだよ。
マリア
マリア
ワーイ。
マリアが串をしまい両手を上げる。
喜びを表しているらしい。
情報屋
情報屋
あ、今の冗句だからね?ジョーク。
情報屋が少し慌てて訂正する。
マリア
マリア
なーんだー。
情報屋
情報屋
可愛いのに流石だなぁ…バイバイスロットであんなことするだけあるね。
七星陽一
七星陽一
流石マリアちゃんですねぇ。
陽一はマリアのことをかなり気に入っているようだ。
「否定」症候群なのに肯定ばかりしている。
情報屋
情報屋
ま、そういう訳だから。ひとまず今までのお代はチャラかな?これからはとりあえず人でなしじゃなくて犯罪者達を相手取ってもらおう。
人茂野賭
良かったなちっこいの共ー。ホラ酔いしれろ俺の情報を対価にした心の安寧によー。
賭はハンマーをストラップのサイズにする。
ヒカル
ヒカル
あ、ありがとね、ホントに。
人茂野賭
ん、まぁな。
マドカ
マドカ
はー…。
マドカがその場に座り込む。
マドカ
マドカ
死んだかと思いましたよ…。
ハヤテ
ハヤテ
流石に殺されはしねぇだろ。
ライオン
ライオン
…そう、ですね。しかし、確かに死は覚悟してしまいましたね。
ハヤテもどかっとその場に座り胡座をかく。
ここは一応人も通る場所だが、今の時間帯なら人も来ない。
なので堂々と座る。
ゾーヤ
ゾーヤ
そうだね。マグマの枕の気分だったよ。
ゾーヤも情報屋の座っているベンチに最大限距離を取りながら座る。
情報屋
情報屋
流石に殺しはしないよ。というか距離取ってるとはいえ豪胆だね君。
情報屋はないない、と首と手を横に振る。
七星陽一
七星陽一
え?
情報屋
情報屋
え?
情報屋が後ろに佇んでいる陽一を見る。
七星陽一
七星陽一
冗談や冗句ではないらしい。
情報屋
情報屋
…さて。今日は解散で良いかな?
情報屋が立ち上がる。
マドカ
マドカ
別にいいですけど。今度またご飯連れてって下さいよ。今回大変だったんですから。1日に3回くらい戦ったんですよ?
ライオン
ライオン
夢さんとは戦ってもいませんよ。針小棒大しんしょうぼうだい、2回です。
マドカ
マドカ
まーまー。
マドカはマリアとヒカルを交互に見る。
ヒカル
ヒカル
あ、良いねそれ!あたしも連れてって!
マリア
マリア
マリアもー。
ハヤテ
ハヤテ
じゃ俺も。
ゾーヤ
ゾーヤ
ボクとライオンとカナタも。
情報屋
情報屋
うんゾーヤ君さりげなくカナタ君入れないで?良いけどね?良いんだけどね?
賭が欠伸をして情報屋達に背を向ける。
人茂野賭
俺はいーや。それより、ちっこいの。
ヒカル
ヒカル
え?誰?
人茂野賭
お前。
振り向きヒカルを指差す。
ヒカル
ヒカル
あ、あたしか。分かりにくいよ、子供皆ちっこいの呼びって。
人茂野賭
通じるからいんだよ。
ハヤテ
ハヤテ
通じてねぇぞ現に。
人茂野賭
頭かち割るぞー?
ハヤテ
ハヤテ
そこまでかよ!?
ハヤテが即座にバックステップで距離を取るが、賭はケラケラと笑うだけだ。
人茂野賭
冗談だよ。青いちっこいの。約束、覚えてるな?
ヒカル
ヒカル
意地でも名前呼ばないじゃん!ちゃんと覚えてるよ!
人茂野賭
なら良い。明日暇だよな?いつものとこに来い。
賭はそれだけ言うとさっさとどこかへ行ってしまった。
マリア
マリア
…ひーちゃん、大丈夫?
ヒカル
ヒカル
あ、うん!平気!
マリアが心配そうにヒカルの顔を覗き込む。
情報屋
情報屋
そうだそうだ。君、どうやってあの子から情報もらう許可をもぎ取ったんだい?
情報屋ほ興味深いそうに聞いてくる。
ヒカル
ヒカル
あー…。
ヒカルは少し言いに来そうに口篭り、やっと口を開く。
ヒカル
ヒカル
…恋愛アドバイザーになる約束をして?
ハヤテ
ハヤテ
は?
作者
作者
風邪ひいて家にいるの暇で、かといって勉強できるコンディションでもないから小説書いてたら何か文字数すごいことに…ごめんなさい。

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