前の話
一覧へ
次の話

第8話

急変
22
2026/02/24 05:03 更新
水木に近づいて開口一番冷たい言葉を放った青年に、あなたの結は会ったことがあった。
(なまえ)
あなた
水木艦長。お久しぶりです
水木秀徳
水木秀徳
隼瀬さんか。元気だったか?
(なまえ)
あなた
おかげさまで。艦長もお元気そうですね
水木秀徳
水木秀徳
たった今気分が悪くなったがな、こいつを見た瞬間に
水木秀徳一等海佐。教員艦空母・赤城の艦長である。
そして、水木の兄でもある。
水木聡久
水木聡久
兄さん...オレが比叡に行かなかったことをまだ怒っているのか?
水木秀徳
水木秀徳
さぁな。そもそもオレに弟なんていたかな?少なくとも、艦長候補と将来を
嘱望されていながら不良校に鞍替えするような男は身内ではない
秀徳の冷たい言葉にすっかり押し黙ってしまった水木の前に、悠花が進み出た。震える手を懸命に抑えて口を開く。
如月悠花
如月悠花
なんで...そんなにひどいことを言うんですか?
水木秀徳
水木秀徳
なんだ君は?関係ないだろう
眼光の冷たさに一瞬怯むが、悠花は引かなかった。水木を守るように懸命に声を張る。
如月悠花
如月悠花
関係なくない!!聡久が風鈴じゃなかったら...
私はあの日助けてもらえずに、あのまま犯されて...
如月悠花
如月悠花
男性不信になって学校に行けてません!!
今の私があるのは、聡久のおかげ...
水木秀徳
水木秀徳
もういい話にならない。オレは戻る...聡久
水木聡久
水木聡久
なんだ?
水木秀徳
水木秀徳
二年ぽっちで変えられた気になるなよ。
お前達が卒業したら街はすぐに元に戻る
そんなことはない、と言い返そうとした水木を二度と振り返らず、秀徳は副官らしき隊員に呼ばれて去っていってしまった。
梶蓮歌
梶蓮歌
...なにあれ。感じ悪ぅ
(なまえ)
あなた
私と会ったときはもっと好意的だったんだけどね
杉下小春
杉下小春
なんか...色々こじれてるね
梅宮皐月
梅宮皐月
気持ちはちょっとわかるかもしれないわね。大分状況違うけど
如月悠花
如月悠花
...ねぇ聡久。あの人となにがあったの?
水木秀徳と水木聡久は、昔は仲の良い兄弟だった。
祖父も両親も兄弟も比叡に進み、二人も当然比叡に進むことを幼少気から志していた。
それが壊れたのは、三年前。
聡久は突然、第一志望を比叡高等部から風鈴に変えると言い出した。中等部の過程も終わりに差し掛かっていた時期だった。当時は「不良の名門」と名高かった風鈴高校に進むなど、家族は当然猛反対したし秀徳もその一人だった。
しかし、聡久の意志は変わらなかった。仲間と共に風鈴を改革し、街を守る自警団にする。その無謀な野望のために比叡中等部での成績も艦長推薦も捨てると言い出したのだ。
兄弟は毎晩熾烈に口論した。しかし、受験期に差し掛かっても決着はつかなかった。
やがて秀徳の方が試合を放棄した。
水木秀徳
水木秀徳
...わかった。そこまで言うなら好きにしろ
水木聡久
水木聡久
兄さん...
水木秀徳
水木秀徳
ただし、お前はもう俺の弟じゃない。比叡の行事にも
顔を出すな。お前がいるときは絶対帰らないからな
そうして秀徳は家を出ていった。元々航海でほとんど家にいない兄だったが、面と向かって宣言されると辛かった。
それから、三年ぶりの会話が今日だった。
大野敏子
大野敏子
教官弟さんいないって言ってたけど、そういう事情だったのか~
森下千秋
森下千秋
まぁ教官は艦に誇りを持っているお方だ。
直前で約束を反故にされれば怒るのも無理はないさ
(なまえ)
あなた
ああ、容易に想像つく...
宮里美幸
宮里美幸
あの人スタンスが旧海軍だからね~。そこがいいんだけど
文月天音
文月天音
っていうか、悠花大丈夫?
如月悠花
如月悠花
え?
脈絡ゼロで聞かれた悠花がキョトンとした次の瞬間、天音が特大の爆弾を落とした。
文月天音
文月天音
水木さんと悠花が結婚したら水木艦長は義理のお兄さんじゃん。
あの感じだと仲良くやれそうにないよ?
如月悠花
如月悠花
................
如月悠花
如月悠花
は!?は!?は!?なに言ってんの!?まだ早いよ!!
水木聡久
水木聡久
そ、そうだぞ文月氏!!
(なまえ)
あなた
ああ、お二人って付き合ってたんですね
大野敏子
大野敏子
末永くお幸せに~
如月悠花
如月悠花
ニヤニヤしないでよ敏子!
悠花が敏子をバシバシ叩いたとき、校舎から放送がかかった。
mob
mob
至急至急、大和型艦長は直ちに乗艦し、出航準備を整えよ!!
繰り返す、大和型艦長は直ちに乗艦し、出航準備を整えよ!!
放送を聞いた瞬間に敏子達は乙女の顔から艦長の顔に変わり、挨拶もそこそこに艦へ戻っていった。
杉下小春
杉下小春
なんだろう?
梶蓮歌
梶蓮歌
わかんないけど...無事に帰ってきてほしいわね
梅宮皐月
梅宮皐月
有賀...
不安げな三人をちらっと見て、あなたの結は陸奥守と大倶利伽羅に声をかけた。
(なまえ)
あなた
むっちゃん、伽羅ちゃん。一旦帰ろう。みんな、バイバイ
陸奥守吉行
陸奥守吉行
おんしゃらもはよう帰り。ほいたらまた!
大倶利伽羅
大倶利伽羅
...
三人は足早に去り、水木も梅宮に呼ばれて去っていった。その背中に手を振りながら、悠花はなにがなんだかわからずキョトンとしていた。
文月天音
文月天音
あなたの結ちゃん達もなんだか慌ただしかったね
如月悠花
如月悠花
本当にどうしたんだろう...?
梅宮皐月
梅宮皐月
キャッ!
突然耳に飛び込んできた皐月の悲鳴に後ろを見ると、覆面の屈強な男が皐月の腕を掴んでいた。
如月悠花
如月悠花
皐月ちゃん!
梶蓮歌
梶蓮歌
おいてめえ、誰のバディに手ぇ出して...
男に掴みかかろうとした蓮歌が、次の瞬間鳩尾を殴られて気絶した。
梶蓮歌
梶蓮歌
...
杉下小春
杉下小春
れんっ...!?
小春も口を塞がれ、通報しようと携帯を出した天音は手錠をかけられて担ぎ上げられた。
腰が抜けてへたりこんだ悠花は、男に手首を掴まれて強引に連れ去られた。
如月悠花
如月悠花
(どうして...なんでみんな、助けてくれないの!?
私達は明らかに襲われてるのに!)
場所は変わり、比叡、教育艦隊。旗艦は敏子が艦長を務める大和型二番艦・武蔵だ。
mob
mob
洋上に突如出現した謎の艦隊は、現在相模湾方向に進行中。
国籍も目的も不明ですが、確認した武装はすべて旧式です
大野敏子
大野敏子
ふーん。だから自衛隊じゃなくて比叡の
艦で対処しなきゃならないわけか
地図に指を走らせながら説明する副官の言葉を聞きながら、敏子は納得した。確かに、旧式武装の戦艦であれば大和型が最適解だろう。
大野敏子
大野敏子
ここでたかなみを突破して...こう進んできてるわけか
大野敏子
大野敏子
ま、様子見の意味もあるだろうけど...艦隊は今どの辺?
敏子の質問に、副官の返事はなかった。
大野敏子
大野敏子
木内?どーしたの?
高柳有賀
高柳有賀
こちら信濃。南南西から敵艦隊接近。照準本艦に指向中
大野敏子
大野敏子
あっちゃぁ、来ちゃったかぁ...
有賀の報告を聞いて敏子は直ちに最初の指令を発した。
大野敏子
大野敏子
旗艦武蔵より通達。艦隊、対艦戦闘用意
森下千秋
森下千秋
こちら大和。対艦戦闘、用意よし
宮里美幸
宮里美幸
紀伊同じく、用意よし
高柳有賀
高柳有賀
信濃、用意よし
全艦の戦闘用意が整うと、今度は射撃の指示だ。
大野敏子
大野敏子
旗艦武蔵より、大和型各艦に通達。敵艦隊に対し、本艦が攻撃を行う
貴艦らは敵の報復があるまで陣形を維持したまま待機されたし
森下千秋
森下千秋
大和型全艦、旗艦の決定に異論はない
大野敏子
大野敏子
砲術長、目標敵艦隊最左翼。位置はA-587のデータを使用。独立撃ち方
mob
mob
了解。旗艦武蔵、独立撃ち方、用意よし
大野敏子
大野敏子
撃ちー方始め!!
敏子の号令の直後に、武蔵の三番砲が目標を睨んで火を噴き、四十六センチ徹甲弾が飛び出した。
大和型戦艦の射程は最大で42km(東京~横浜までより長い)で、一発の主砲弾の重さは約1.5㎏(自動車一台分)です。大艦巨砲主義の権化ですね。
この小説では作者のロマンを詰め込んでいるので46サンチをそのまま搭載していますが、現実で大和を護衛艦として運用するならまあまず主砲はレールガンとかになるでしょうね。
オリンピックよりも護衛艦やまと進水のニュースを待っています。りくりゅうって聞いたときそうりゅう(潜水艦)の新型艦だと思っただろ(怒)

プリ小説オーディオドラマ