水木に近づいて開口一番冷たい言葉を放った青年に、あなたの結は会ったことがあった。
水木秀徳一等海佐。教員艦空母・赤城の艦長である。
そして、水木の兄でもある。
秀徳の冷たい言葉にすっかり押し黙ってしまった水木の前に、悠花が進み出た。震える手を懸命に抑えて口を開く。
眼光の冷たさに一瞬怯むが、悠花は引かなかった。水木を守るように懸命に声を張る。
そんなことはない、と言い返そうとした水木を二度と振り返らず、秀徳は副官らしき隊員に呼ばれて去っていってしまった。
水木秀徳と水木聡久は、昔は仲の良い兄弟だった。
祖父も両親も兄弟も比叡に進み、二人も当然比叡に進むことを幼少気から志していた。
それが壊れたのは、三年前。
聡久は突然、第一志望を比叡高等部から風鈴に変えると言い出した。中等部の過程も終わりに差し掛かっていた時期だった。当時は「不良の名門」と名高かった風鈴高校に進むなど、家族は当然猛反対したし秀徳もその一人だった。
しかし、聡久の意志は変わらなかった。仲間と共に風鈴を改革し、街を守る自警団にする。その無謀な野望のために比叡中等部での成績も艦長推薦も捨てると言い出したのだ。
兄弟は毎晩熾烈に口論した。しかし、受験期に差し掛かっても決着はつかなかった。
やがて秀徳の方が試合を放棄した。
そうして秀徳は家を出ていった。元々航海でほとんど家にいない兄だったが、面と向かって宣言されると辛かった。
それから、三年ぶりの会話が今日だった。
脈絡ゼロで聞かれた悠花がキョトンとした次の瞬間、天音が特大の爆弾を落とした。
悠花が敏子をバシバシ叩いたとき、校舎から放送がかかった。
放送を聞いた瞬間に敏子達は乙女の顔から艦長の顔に変わり、挨拶もそこそこに艦へ戻っていった。
不安げな三人をちらっと見て、あなたの結は陸奥守と大倶利伽羅に声をかけた。
三人は足早に去り、水木も梅宮に呼ばれて去っていった。その背中に手を振りながら、悠花はなにがなんだかわからずキョトンとしていた。
突然耳に飛び込んできた皐月の悲鳴に後ろを見ると、覆面の屈強な男が皐月の腕を掴んでいた。
男に掴みかかろうとした蓮歌が、次の瞬間鳩尾を殴られて気絶した。
小春も口を塞がれ、通報しようと携帯を出した天音は手錠をかけられて担ぎ上げられた。
腰が抜けてへたりこんだ悠花は、男に手首を掴まれて強引に連れ去られた。
場所は変わり、比叡、教育艦隊。旗艦は敏子が艦長を務める大和型二番艦・武蔵だ。
地図に指を走らせながら説明する副官の言葉を聞きながら、敏子は納得した。確かに、旧式武装の戦艦であれば大和型が最適解だろう。
敏子の質問に、副官の返事はなかった。
有賀の報告を聞いて敏子は直ちに最初の指令を発した。
全艦の戦闘用意が整うと、今度は射撃の指示だ。
敏子の号令の直後に、武蔵の三番砲が目標を睨んで火を噴き、四十六センチ徹甲弾が飛び出した。
大和型戦艦の射程は最大で42km(東京~横浜までより長い)で、一発の主砲弾の重さは約1.5㎏(自動車一台分)です。大艦巨砲主義の権化ですね。
この小説では作者のロマンを詰め込んでいるので46サンチをそのまま搭載していますが、現実で大和を護衛艦として運用するならまあまず主砲はレールガンとかになるでしょうね。
オリンピックよりも護衛艦やまと進水のニュースを待っています。りくりゅうって聞いたときそうりゅう(潜水艦)の新型艦だと思っただろ(怒)



























編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。