第3話

まほろばに咲く嘘
8
2025/04/06 19:35 更新
目を覚ましたとき、僕は見知らぬ畳の上にいた。
薄暗い部屋、窓の外では風鈴が揺れている。
誰もいない。けれど、どこか懐かしさを感じた。
朔夜
「意識、戻ったみたいだな」
振り向けば、そこに朔夜がいた。
式神を肩に乗せ、壁にもたれながら僕を見下ろしている。
朔夜
「君の中に入り込んだ“影”、普通なら暴れるはずだった。
でもお前の体に、なぜか“影が馴染んでた”」
馴染んでいた?
それってつまり――
朔夜
「お前は最初から“影に触れていた”人間だ。
……いや、触れた、じゃない。“連れてきた”可能性もある」
僕の中に走る、背筋の凍るような疑念。
じゃあ僕は、“まほろばに来る前から”影を引き寄せてたってこと?
遥真
「調べてみた」
遥真が隣の部屋から現れ、手に巻物のような記録を抱えていた。
遥真
「この地に影が頻発し始めたのは、君が現れる少し前から。
偶然じゃない。……でも、それが悪いって意味じゃないから、安心して」
遥真
「むしろ俺は、君がここに来てくれてよかったと思ってるよ」
遥真はそう言って、僕の肩にそっと手を置いた。
遥真
「本当に影に呑まれる人間は、あんな風に“誰かのために涙を流したり”しない」
僕は、知らず涙を流していた。
あのとき祓われていった影に――“哀しみ”を感じたから。
その夜、ミオがぽつりと呟いた。
ミオ
「君は、“器”なんだよ。
影を憎まず、拒まず、でも受け入れて壊れない。
そんな“特別な器”」
そして――
その“器”が、本当に必要になる瞬間が、次に訪れる。

プリ小説オーディオドラマ