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第1話

『ツンとデレの恋人は二度美味しい』~a×s~
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2025/11/09 02:35 更新
『ツンとデレの恋人は二度美味しい』~a×s~

Side阿部

「阿部ちゃん、今日暇?」

スマホの画面に表示された短いメッセージに俺の口角は自然と上がった。
送り主は佐久間、俺の恋人だ。同じ大学に通う佐久間とは学部もサークルも違う。
だからこうして連絡を取り合って時間を作らないとなかなか会えない。

「暇だよ。どうした?」

すぐに返信すると間髪入れずに通知が鳴る。

「んー別に?暇なら会えるかなーって思っただけ」

そっけない文章。
でも俺にはわかる。

これは佐久間が甘えたい時のサインだ。
俺たちは付き合って半年になる。

最初の頃は佐久間のこの素っ気ない態度に俺は少し戸惑っていた。
もしかして機嫌が悪いんだろうかとか俺何かしたかなとか色々考えたものだ。
でも違う。
これは佐久間なりの照れ隠しであり甘えのサインなのだ。

「わかった。じゃあいつものカフェで15時に」
「ん了解」

短いやり取りを終えて俺はベッドから起き上がった。
時計を見るとまだ13時過ぎ。
少し時間がある。
シャワーを浴びて髪をセットして佐久間に会うための準備を始めた。
佐久間はいつもお洒落だ。

だから隣に立つ俺もちゃんとしていたい。
そんなことを考えている時間さえ今は幸せだった。

約束の15分前にカフェに着くと窓際の席に佐久間はもう座っていた。
頬杖をついて窓の外をぼんやりと眺めている。
その横顔が綺麗で俺は思わず見とれてしまった。色素の薄い髪が午後の光に透けてキラキラしている。

「佐久間、待った?」

声をかけると佐久間はゆっくりとこちらを向いた。
そして少しだけ眉をひそめる。

「ううん、別に。俺が早く来ただけだから」

出た。
これが佐久間の「ツンツンモード」だ。
会いたくてメッセージを送ってきたくせに会うとこの態度。

最初は本当に戸惑った。
でも今は違う。
このツンとした表情も俺にとってはたまらなく可愛いものになっていた。

「そっか。何飲む?」
「もう頼んだよ。阿部ちゃんは好きなの頼めばいいんじゃない」

そう言って佐久間は再び窓の外に視線を移す。
テーブルの上にはまだ手付かずのアイスコーヒーが置かれていた。
俺はカウンターで同じものを注文して佐久間の向かいの席に座った。

しばらく沈黙が続く。
佐久間は何も話さない。
ただ窓の外を眺めているだけ。
俺も無理に話しかけずアイスコーヒーをストローでかき混ぜた。カランと氷が涼しげな音を立てる。

(ツンツンモードの佐久間か…)

俺は目の前の恋人を観察しながら心の中で妄想を始めた。

このモードの時の佐久間はとにかく素っ気ない。
口数も少ないし目もあまり合わせてくれない。
でもそれがいい。
まるで警戒心の強い小動物みたいでどうにかして懐かせたいという気持ちにさせられる。

例えばこんなシチュエーションはどうだろう。

二人で家で映画を見ている時。
佐久間は俺から少し距離を置いて座る。
俺が「もっとこっち来なよ」と腕を引いても「いやいいよ」とそっけなく断る。

でも映画がクライマックスに差し掛かって怖いシーンになると無意識に俺の服の裾をぎゅっと掴んでくるんだ。
俺がその手に気づいて「怖い?」って笑いかけると佐久間は「怖くなんかないよ!」と顔を真っ赤にして怒る。でも掴んだ手は離さない。その強がりがたまらなく可愛い。

あるいは寒い冬の日。デートの帰り道。

雪が降ってきて俺が「寒いね」と呟く。
佐久間は「別に」と澄ました顔で言う。

でもその耳は真っ赤になっている。
俺が自分のマフラーを外して佐久間の首に巻いてやると「いらないってば!」と抵抗する。

でも俺が「風邪ひくよ」と少し強引に巻いてやると黙ってうつむいてしまう。
そして小さな声で「…あったかい」と呟くんだ。

その素直じゃないけど隠しきれない本音が愛おしくて俺は佐久間を抱きしめたくなるだろう。

「…阿部ちゃん、何ニヤニヤしてるの」

佐久間の声で俺はハッと我に返った。
いつの間にか俺は頬が緩みっぱなしだったらしい。
佐久間が怪訝な顔で俺を見ている。

「いや、別に。佐久間が可愛いなと思って」
「はあ?意味わかんない」

ぷいっとそっぽを向く佐久間。
その反応すら俺の妄想通りの展開で思わず笑みがこぼれた。

ツンツンしている佐久間は本当に可愛い。
もっと困らせたいもっと反応が見たい。

そんな少し意地悪な気持ちが湧き上がってくる。

「今日の服似合ってるね」
「…別に普通でしょ」
「髪もいい感じじゃん。その色好きだよ」
「…そう」

褒めても褒めても暖簾に腕押し。
でも俺は知っている。佐久間の耳がほんのり赤くなっていることを。
嬉しいくせに素直に喜べない。そんな不器用なところがたまらなく好きだ。

「ねえ、この後どうする?俺の家来る?」
「…なんで俺が阿部ちゃんの家に行かなきゃいけないの」
「えーダメ?」
「…別にダメとは言ってないけど」

ほら来た。
これも佐久間のツンツンモードの典型的な会話パターンだ。
絶対に行きたいくせに素直に「行きたい」とは言わない。

「じゃあ決まりだね。行こっか」

俺が立ち上がると佐久間も少し間を置いてからゆっくりと立ち上がった。
カフェを出て歩き出す。
俺たちはいつも通り少し距離を保って歩く。

佐久間が隣にぴったりとくっついてくることはまずない。
でも俺が少し歩くペースを速めると佐久間も黙ってついてくる。
その姿がまるでカルガモの子供みたいで俺はまた口元が緩むのを感じた。

――――俺のマンションに着いて鍵を開ける。

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※こちらの作品には、心を奪うほど濃密で官能的なR-18描写が含まれます。

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