第32話

透明なままで
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2026/04/25 12:34 更新


何度かわからないくらいイかされて、身体の奥がとろとろに溶けちゃって。呼吸の仕方すら忘れたみたいに、俺はベッドの上でぐったりしていた。

そんな俺を、Vさんがいつものように優しく抱きしめてくる。腕の中はあたたかくて、この状態になると、俺はいつも半分意識を飛ばすみたいに眠ってしまうんだけど、今夜はぼんやりしながらも起きてた。

むしろVさんのほうが眠そうに見えて、ほわん、とした空気を纏いながら、俺のふくらはぎに足裏をすりすりと寄せてきたりする。ちょっと子どもっぽいその仕草。

……なんか、かわいいな。

なんて思っていたら、Vさんは少しだけ迷うように息を吸った。

V
V
イアンくん、起きてる?
ジョングク
ジョングク
はい
V
V
…あのさ、こんな立ち入ったこと訊かれるのは、嫌かもしれないんだけど


その声が妙に慎重で、うっすらと意識が冴えていく。

ジョングク
ジョングク
…なんですか?

Vさんは少し腕を緩めて、俺の顔を見た。

V
V
僕と会ってから、
別の誰かとセックスした?

心臓が、ほんの少し跳ねる。
たしかに立ち入った質問だ。でも不思議と嫌じゃなかったから、俺は正直に答えた。

ジョングク
ジョングク
…Vさんとしか、
してないです
V
V
そっか

その声は、どこか安心したみたいに柔らかい。

V
V
僕もだよ

耳元で囁かれる声。

V
V
君と出会ってから、
他の誰ともしてない

その言葉が落ちた瞬間、胸の奥が、ふ、と熱を持った気がした。

なんだろう、この感覚。

俺、今──
うれしい、のか?

Vさんは少しだけ姿勢を変え、俺の頬にかかる髪をそっと耳にかけた。

V
V
イアンくんはこれまでも、一夜限りの相手と寝てたんだよね?
ジョングク
ジョングク
…はい
V
V
それって、結構前から?
それとも最近はじめたこと?

何を知りたいのか、よくわからない。
けど俺は、それも素直に答えた。

ジョングク
ジョングク
…3年くらい前からです
V
V
じゃあ、慣れてることなんだね?
ジョングク
ジョングク
そうですね。そこまで頻繁じゃなかったですけど…慣れてはいます
V
V
そっか……

Vさんはそこで言葉を切って、黙り込んだ。

妙な沈黙。
俺は不安になって、思わず訊いてしまう。

ジョングク
ジョングク
…あの、それが何か?
V
V
あ、うん

Vさんは小さく笑うように息を吐いた。

V
V
君は不思議な子だなぁと思って
ジョングク
ジョングク
……不思議?
V
V
相手は選んできただろうし、言葉は悪いんだけど…

耳障りのいい声が、少し言い淀む。

V
V
言わば、“誰とでも寝る”ってことに、慣れてるってことだよね?
ジョングク
ジョングク
…まぁ、はい
V
V
だけど君を見てると、“染まってる”って感じがしないんだよなぁ
ジョングク
ジョングク
…染まってる?
V
V
僕は君より長く生きてきた分、身体だけの関係を繰り返す人をたくさん見てきた

静かな夜に、Vさんの声が溶け込んでいく。

V
V
それが良いか悪いかは別として、そういう人たちはそういう価値観に“染まってる”し、“同じにおい”がするものなんだ
V
V
でも、君からはそれを感じない

Vさんが、何かを確かめるみたいに俺の目を覗き込む。

V
V
君はね

少し間を置いて。

V
V
すごく……“透明”なんだ
ジョングク
ジョングク
……透明?
V
V
うん。“透明”。
だから心配になる……

大きな手が、俺の背中をゆっくり撫でる。

V
V
余計なお世話だってわかってるんだけど、君には、そのままでいてほしい……なんて、つい思ってしまうんだ

透明──。

俺はずっと、透明になりたかった。
誰にも見つからないように、誰にも知られないように。

でもVさんが言う“透明”は、まるで壊れやすいものに向ける言葉みたいだった。

V
V
ねぇ、イアンくん

Vさんは少し迷いを見せながら、声を繋げた。

V
V
これから言うのは約束じゃない。僕のひとりごとだと思って聞いて

俺は小さく頷く。

V
V
君がセックスを求める理由が、もし人肌が恋しいとか、性欲を抑えるためだったとしたら、僕がいつでも応えるよ
V
V
だから……


Vさんの声が、ふっと低くなった。

V
V
君に好きな人ができるまでは


抱きしめる腕に、ゆっくり力がこもる。
壊れものを扱うみたいに、やさしく。


V
V
これからもセックスの相手は
僕だけにしてほしい……



その深い声は耳たぶを掠め、
静かな夜の底にほどけていった。







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