Vさんと連絡が取れなくなって、3週間が過ぎた。
あれから何度アプリを開いても、画面に映るのは冷淡な「サービス終了」の文字だけ。
運営の突発的な事故か、あるいは無法地帯すぎて摘発でもされたのか。真相は闇の中だ。
ただひとつ確かなのは、あまりにも一方的で、無慈悲な幕切れだったということ。
せめて事前に告知してくれていれば。
せめて一日でも猶予があれば。
そうしたら俺は──
呟きは、冷たい空気に溶けて消えた。
いつもVさんと待ち合わせしてたコンビニの前で、人の流れに視線を這わす。
もしかしたら──
そんな淡い期待で何度か足を運んでみてるけど、Vさんの姿は見つからなくて。
出会える確証なんてどこにもないのに。
…ほんと、バカみたいだ。
ふとコンビニのガラス戸に目をやると、クリスマスケーキの広告が風に揺れていた。
もうそんな季節か。
ついこの間まで、秋だ紅葉だって思ってた気がするのに。季節は何もなかったみたいに進んでいく。
なんでこんなに季節の移ろいに無頓着だったんだろうって思って、そういえばあのひとのことばかり考えてたなと気づいて、自分で呆れる。
口から溢れた吐息はうっすらと白く濁り、冬の訪れを告げていた。
翌日。図書館の4階で、俺はいつも過ごす奥のスペースに向かっていた。
足元だけを見つめ、俯き加減に歩いていたら、
バタン、
静まり返った館内に響いた、乾いた音。
反射でわずかに顔を上げる。
少し先の椅子に座った人の足元、男物の革靴の横に、一冊の本が仰向けに落ちていた。
眠っているのか拾う気配はなく、片方の腕がだらりと垂れている。その床に触れそうな手に目がいった途端、
心臓がどくん、と大きく跳ねた。
細くて、長くて。
骨ばった感じのない、きれいな指。
──似てる…
まさか、と思う。
そんなはずない。
でも勝手に視線が…
足元から上へ上へと引き上げられていく。
磨かれた革靴。
仕立てのいいスラックス。
シワのないシャツに、ベスト。
おしゃれな柄のネクタイ。
そして。
襟首から上へ視線を移した瞬間、思考は完全に停止した。
ほっそりした顎のライン。
程よい厚みのある唇。
高くてうつくしい鼻梁。
濃く長いまつげ。
彫刻みたいな整った顔立ち。
ふわりと落ちる黒い髪。
特徴的な目は閉じられてるけど、間違いない。
──Vさんだ……
まさか…嘘だろ…
え、待って、なんでここに?
混乱で頭が真っ白だ。
ここの学生なのかと浮かんで、年齢を思い出してすぐに否定する。
じゃあ先生…?
それとも外部の研究者か、関係者か。
再会の喜びより衝撃のほうが大きくて、立ち尽くすことしかできなかった。
呆然としていたら、前から歩いてきた学生が俺を怪訝そうに見た。
慌てて顔を俯かせ、何でもないふりで歩き出す。そのまま学生の横をすり抜け、Vさんの前も通り過ぎる。
通り過ぎた、のに。
数歩進んだところで、脚が止まった。
気になる、、
Vさんが、というのはもちろんあるけど、かと言って素性は知られたくない。だからこのまま、知らん顔するべきなのはわかってるんだけど。
どうしても気になる、、
──落ちたままの本が。
今なら寝てるし大丈夫だよな…
くるりと踵を返し、足早にVさんの前へと戻ると、落ちてた本を拾いあげる。椅子の端にそっと置いて、静かにその場を離れようとした瞬間。
ぱち、と目があった。
あの三白眼と。
喉まで上がってきた悲鳴を必死で飲み込んだ代わりに、全身が冷たい水を浴びたみたいに固まった。
だけど、Vさんの口が何か言おうと開いたのに気づいて。
次の瞬間には、勝手に動いてた身体。
図書館の静けさを破ることも構わず、俺は脱兎のごとく逃げ去った。
ちょいと体調を崩してしまって(もうだいぶ回復したので大丈夫です!)、投稿に間が空いてしまいました🙇♀️今日は投稿したかったので、間に合ってよかったです🙈
バンタン13周年記念!!
くぅー!めでたいですね🎉🫶

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。