なんて話そう、どうやって謝ろう
考えながら歩いてると家に着いた
玄関の前で気合を入れて家に入ろうとする
ガチャッ
扉を開けるとやけに静かで
家の中から冷たい風が吹いた気がして
体を刺すような寒さを感じた
真っ暗でなにも見えない
まだ帰って来てないのかな…
そう思いながら暗い廊下を歩きリビングの扉を開ける
ガチャッ
パチッ
電気をつけると
部屋が綺麗に片付いていた
綺麗すぎた…
リビングを見渡し異変を感じ
寝室に行く
ない…
クローゼットをあける
ない…
よくわからないまま洗面所に向かう
ない…
この家から
あなたのものが全てなくなっていた
リビングに戻ると
テーブルの上に一枚の紙が置いてあるのに気づいた
俺はそれをグシャッと掴んで目を向けた
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翔太へ
お疲れ様、おかえりなさい。
こんな形でごめんなさい。
本当はちゃんと面と向かって
話すべきだったんだけど
最近の様子を見てると
それが出来ないかなと思ったので
手紙にしました。
デビューが決まってここ数ヶ月
今まで以上に忙しくなって
朝から晩までずっと仕事、
夜中まで仕事が伸びる時もあって
大変そうだなって思いながら
翔太が悩んでるのにも気付いてた。
私なりに何か出来ることないかな。
そう思っていろいろ頑張ったけど
力になれなかった…
頼りにならなくてごめんね。
支えてあげられなくてごめんね。
私が居ない方が上手くいくんじゃないかな
私が翔太をイライラさせたりする
原因なんじゃないかなそう感じた。
だからそばにいるべきじゃないなって思って
離れることを決めました。
勝手に決めてごめんなさい。
でも私が居なくなったって
頼りになる仲間もいるし大丈夫。
上手くやっていけると思います。
長いようで短いようだったけど
一緒に居た時間は幸せでした。
たくさんの初めてを教えてくれたのも
過ごしたのも全部全部翔太でした。
翔太がわたしのすべてでした。
わたしを笑顔にしてくれてありがとう。
一緒に居てくれてありがとう。
これからはファンとして
Snow Manの渡辺翔太を
好きでいようと思います。
本当に今までありがとう。
大好きでした。
あなた
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すぐにあなたに電話をするけど
「おかけになった電話番号は電源が入っていないか
電波の届かないところにいるためかかりません…」
何度かけてもかからなくて。
俺はどうしたらいいか分からず脱力したように
ソファに腰掛ける
リビングの電気は付いてるのに
眩しいくらい明るくて部屋を照らしてるのに
俺の目の前は真っ暗だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!