第3話

汚れ
50
2026/01/21 12:22 更新
その後、家に帰って、いつもと同じように夕飯を食べて、お風呂に入って、泥のように眠る。いつもは寝る前にたっつんと電話をしたりもしてたけど
じゃぱぱ
…もう出来ないのかな
朝が、来ないで欲しい。朝が来たら学校に行かなくちゃならなくて、学校ではたっつんがいつも通り「おはよう」って笑顔で言ってくれるんだろう、でも
じゃぱぱ
(今は顔見たくないな、…こんな事思ったの初めてかも)
ピコンっとスマホから軽快な電子音がなる。見てみれば、たっつんから連絡が来ている
じゃぱぱ
(今は見たくない、けど)無視もダメだよな
重い指先でロックを解除する。送られてきた内容を確認する前に一呼吸置き、そしてやっと目を開けて、恐る恐る見てみる
「体調大丈夫?熱とかあるんやったら無理せんでな!」
そしてたっつんのお気に入りの生き物かもよく分からない物が無理しないでね!と心配するようなスタンプも送られている
じゃぱぱ
ふはっ、好きだよなぁ、このスタンプ
じゃぱぱ
(どう、返せばいいんだろ、心配かけたくないし、無難なのが一番か)
「寝たら治った!でもちょっと遅れそうだから先行ってて〜」いつも通りのじゃぱぱを演じられているはずだ、するとすぐに既読がつき、OKという先程と同じ謎生き物のスタンプが送られてくる
じゃぱぱ
…準備しなきゃ
重い体を動かし、洗顔や朝食を済ませる
ガチャリと玄関のドアを開ける。重く沈んだ心に対して、外は夏の澄んだ青空だった
学校へとしばらく歩みを進める
じゃぱぱ
(今からでも休んじゃおっかな…)
なんて弱音を零しながらも、どんどん学校へと近づいていっている
忘れようとしてもたっつんの事で頭がぐるぐると巡る
じゃぱぱ
たっつん…
たっつん
呼んだ?
地面を見ていた目がたっつんの声が聞こえ、バッと上へ向ける
たっつん
うおっ、急に顔あげるやん
たっつんのいつも通りの笑顔に笑い声がして、泣きそうになる
じゃぱぱ
え、なんでいんの?も、もしかして、ゆ、幽霊?
たっつん
違うわ!勝手に死んだことにすんな!ちゃんと生きてるわ!
ほら!とたっつんがじゃぱぱの手を握りしめる
たっつん
な、生きとるやろ?
じゃぱぱ
…うん、生きてる
たっつん
ほら!ぼーっとしてないで、はよ行かんと遅刻するわ!
グイッと手を引っ張られ、そのまま歩き出す
じゃぱぱ
(手、繋いでいいのかな、彼氏が嫉妬とかしちゃうんじゃ…でもなんでこんなに嬉しんだろ)
少し前を歩くたっつんの表情は分からない
じゃぱぱ
(俺も最低だな)
恋人がいるとわかっていても、力強く手を握ってしまっている。罪悪感は感じているが、もっと好きになってしまっている自分がいる
忙しなく鳴く蝉の声になんてどうでもいいくらいに君に夢中になってしまった。鬱陶しい夏の暑さも今なら嫌じゃない、そう思い、また手に力を入れる

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