私は結婚詐欺師だ
今はとある男の恋人を装っている
そして、今日
結婚の話を持ちかける
___ キィ…
玄関のドアが開く音が聞こえ、
私は計算し尽くした
全男が好きであろう笑顔を浮かべる
そして、猫撫で声で恋人に抱き着く
恋人はホストだ
私はこの男のお金を騙し取ろうとしている
ジャケットを脱いでいる恋人の腕に
擦り寄って、上目遣いで彼を見つめる
瞳の水分量を増やしてうるうると問えば
ターゲットはにっこりと微笑む
さも、罪悪感があるように俯いて
か弱い女の子を演出する
そんな私の顎をターゲットは掬って上げさせる
… え?
さも当たり前かのように
言われた言葉に動揺が隠せない
そんな私の様子を見て口角を上げるターゲット
けれど、その目の奥は笑っていなくて
喉がひくりと引き攣る
思わず後退る私に合わせて彼は一歩近付いてくる
最悪だ、なんで、いつから
唇を噛み締めれば、
そこを指で宥めるように触れられる
変わりにさ、と続けてから
壁際まで追い詰められた私の耳へと顔を寄せる
ターゲットは
砂糖を溶かしたような甘い声で囁いた
# 結婚詐欺、失敗しました












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!