あれから数カ月経った。
あなたの下の名前(カタカナ)と一緒に色々な所へ行き、
その場所であった人達を助けていく。
迷子の子供を探してほしい、とか
買い物の手伝いをしてほしい、とか……。
基本的に簡単なものが多いが、
時には商人から街道の近くにいる盗賊を
倒してほしいという依頼もある。
そして、空いてる時間には
読み書きや計算などを教えてもらったり、こうして
あなたの下の名前(カタカナ)に稽古をつけてもらっているが……。
中々にスパルタである。
恐らく、彼女は俺がギリギリ死なないくらいで
調節しているのであろうが。
自分自身でも分かる、数カ月前よりも
確実に強くなっていることを。
だからこそ、一つだけ
どうしても気になることがある。
__そう、あなたの下の名前(カタカナ)は人殺し関係のものは
俺から徹底的に避けている。
それこそ、盗賊達を倒してほしいという
依頼は彼女一人でこなし、
俺は離れた所から見ているだけだ。
別に、スラム出身である俺からしたら
死体なんて見慣れたものであるし、人を殺める
ことに対して躊躇いもないし覚悟も出来ている。
そう話す彼女は
少し悲しそうに微笑んでいた。
そして、その時は意外にもすぐに訪れた。
__しかしながら、
その出来事は昨日のことのように鮮やかで、
今も尚脳内にこびりついている。
それは、とある夜だった。
数日前に盗賊の目撃情報が入っており、
こうして街道の近くで見張っている。
ただ、どこか
嵐の前の静けさのような感じがする。
そんなことを考えていた時、
暗闇の中に氷のような殺気が走る。
気づけば20人程の盗賊達が、
絶対に逃がさまいと
俺達の周りを取り囲んでいる。
そう言いながら、手首を切りつけ
血を出し武器を作りだす彼女。
あなたの下の名前(カタカナ)は敵に向かって駆けだしていき
複数人に切りかかる。
その間に、シロについて行って
ここから抜け出そうとする。
速さには自信があったが……
敵の一人に捕まってしまった。
隠してあったナイフで敵の首元に切りかかるが、
掠っただけで致命傷にはならない。
あなたの下の名前(カタカナ)の声が聞こえた刹那、
グサッという嫌な音がする。
彼女がいる方に目を向ければ__
__彼女の胸に敵の剣が突き刺さっていた。
俺、のせい、じゃないか……?
俺が、簡単に敵に捕まったから……?
俺がもっと、うまく動けてたら……。
俺が自責の念に駆られている一方、
あなたの下の名前(カタカナ)は薄笑いを浮かべていた。
あなたの下の名前(カタカナ)は胸に刺さっていた剣を
引っこ抜くと、後ろにいた敵の首を刎ね落とす。
どこから取り出したのだろう、
突然空間から血液パックが出てきたと思えば
彼女はそれを飲みながら敵をなぎ倒していく。
彼女が動けていることに敵が呆気にとられている
今がチャンスだ。
俺のことを捕まえている奴の首元に
躊躇わずにナイフをすべらせる。
今度こそ、確実に。
__初めて人を殺めたという感触。
それに臆することなく次の標的へと駆け出す。
本当の吸血鬼を殺す方法は__
周りに盗賊達の屍が重なっている。
結局、俺が殺せたのは三人だけ。
後の全てはあなたの下の名前(カタカナ)が倒してくれた。
急いであなたの下の名前(カタカナ)の元へ駆け寄る。
膝から崩れ落ちる彼女をギリギリで支える。
胸からはポタポタと血が流れ
呼吸も弱々しくなっている。
苦しそうに、だがそれでも俺を安心させる
ために彼女は弱々しく微笑むが、
ごぼり、と口から血が溢れる。
服をずらして首元を差し出す。
俺の首元に彼女の歯が立てられ、
ぷつっとした痛みが走る。
首元に走る痛み、もしくはあなたの下の名前(カタカナ)を
死なせてしまっていたかもしれない
という恐怖心からだろうか……、
少し体を震わせながらぼんやりと考える。
吸血鬼を殺す方法は、
頭と心臓の同時破壊の他にもう一つある。
それは、大量出血。
吸血鬼にとって血は
一番重要だといっても過言ではない。
傷ができて後で治るといっても
大量に出血してしまえば、たとえ不老不死とも
呼ばれる吸血鬼であっても命に係わる。
彼女は優しく俺の頭を撫でる。
それでも、俺の恐怖心は拭えなかった。
__この手で他人の命を奪うこと以上に、
自分大切な人の命が失われてしまうことに。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!