文化祭の夜、校庭には灯りが並んでいた。
模擬店も終わり、打ち上げの準備で人が集まっている中、僕と苗葉はこっそり屋上に向かった。
「ねえ、今日ね、言いたいことあるの」
風が少し冷たい。隣でしゃがみ込む苗葉が、カバンから何かを取り出す。
「これ、見覚えある?」
それは、彼女のペンダント。以前、僕がこっそり拾って、元の場所に戻しておいたものだった。
「……見てたんだ」
「うん。拾ってくれてたこと、ずっと前から知ってた」
苗葉は僕を見上げる。その瞳に、灯りが映っている。
「七煌くんって、優しいよね。言わなくても、ちゃんとやってくれてて。だから、私もちゃんと……言うね。ありがとう」
僕は何も言えなかった。ただ、胸がじんと熱かった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!