第30話

氷の王室 怒れる王子
1,009
2025/08/05 05:20 更新
あなた
ここが、フロストハイム…
あなたの特待生
きれいですね…
あなた
はい! とっても
オーロラに照らされた淡青色のエントランスには、まるで豪華な装飾品を磨くかのように、ひんやりとした冷気が延々と吹き抜けている。
あなた
でも、ちょっと肌寒いです
あなたの特待生
たしかに…
あなた
えっと、寮長室に向かうんですよね。寮長室は、一番奥にあるって言ってましたっけ?
あなたの特待生
はい。そう言ってたと思います
あなた
じゃあ、ゆっくり向かいましょうか!
あなたは柔らかい笑顔を浮かべた。
あなた
しかし、アナ雪みたいな氷の城ですね。すごく立派で
あなたの特待生
アナ雪… … でも、たしかにとっても立派ですよね
あなた
はい。そう言えばフロストハイムの寮長である冠氷尋…先輩は怪異研究機関日本支部の総裁だ、って聞きました
あなたの特待生
ああ、私もそれなら知ってます。魁斗くんに教えてもらったので
あなた
また魁斗先輩ですか? 魁斗先輩はすごく物知りなんですね
あなたの特待生
そうですね
あなたの特待生はクスリと笑った。
しばらく氷の城の様な寮舎を歩いていると、つきあたりに、一際大きな扉が見えた。
あなた
あそこ、ですかね? 寮長室
あなたの特待生
多分…そうだと思います
あなた
じゃあ、行きますか
あなたは扉の前まで歩いて、軽くノックする。
あなた
失礼します
そう声をかけても返ってくるのは沈黙のみだ。
あなたの特待生
不在なんでしょうか…?
あなた
ほとんどが自習時間って理事長は言ってましたけど…
あなたの特待生
うーん、もう1回ノックしてみましょうか
続いてあなたの特待生がコンコン、と扉をノックした。
あなたの特待生
失礼します、ご挨拶に来ました
あなたの特待生
(あれ… …? ドア、開いてる?)
扉を改めて見るとどうやら少し開いている様だ。
あなた
随分と不用心、というか、なんと言うか…
あなたはあなたの特待生の後ろから部屋の中を見る。
×××
───先ほどDチャットでお送りした監視カメラの映像、ご覧になられましたか?
銀髪の男がソファーに寝転がる誰かに話しかける。
×××
映っていたのは間違いなく本人。すなわちこの事件では… …
×××
寮長
聞いていらっしゃいますか?
あなた
(うわ、タイミング絶対ミスった…)
男の声のトーンからあなたはタイミングが悪かったことに気づき、頭を抱えた。
あなた
あなたの特待生先輩、あなたの特待生先輩
あなたの特待生
ん?
あなたは小声であなたの特待生に話しかける。
あなた
多分タイミング悪いと思うので、ここは一旦出直しませんか?
あなたの特待生
そうですね…
2人がその場を去ろうとした時、気になる話題が出ていた。
×××
ーーー「上級怪異」が関与している可能性は限りなく高いでしょう
あなた
あなたの特待生
えっと、「怪異事件」の話、ですね
×××
… …本日の調査結果は、以上です
カチンッ、カチンッとライターを開け閉めする音だけが響く。
あなたはなんとなく気になり、少しだけ部屋の中、ソファーの上に寝転がる人物を見る。
あなた
(カッコいい顔してるな…)
美しい氷細工の様な青の瞳と僅かに青みを帯びた銀の髪。『氷の王子』と言うに相応しい容姿をした男がそこにはいた。
あなた
(あの人が冠氷尋…)
しかし、彼の機嫌が良いものではないのは誰の目から見ても明らかだ。
×××
… …またどこか具合が悪いのですか?
男が尋に問う。
×××
モルトクランケンに問診をお願いしましょうか
お前
殺されてぇのか?
尋は男を睨む。
×××
それとも、御父上にご相談して選りすぐりの研究者を… …
尋が床に投げ付けたガラスの灰皿が割れるガシャンッという音に男の声は遮られた。
あなたの特待生
っ!
あなた
…やっぱり出直しましょうか
あなたの特待生
そ、そうですーー
おい
あなたの特待生が「そうですね」と言い終わる前に尋の低い、明らかにイラついた声に呼び止められる。
そこにいるのは誰だ?
尋の氷の様な冷たく鋭い視線があなたの特待生とあなたを射抜く。
あなた
あなたはあなたの特待生の前に立ち塞がり、頭を下げた。
あなた
失礼しました。学園の命でしばらくフロストハイム寮の任務に同行する事となりました
尋は、謝罪をするあなたを冷たい瞳で見上げながら高圧的に見下す。
あなた
本日はそのご挨拶に伺いましたが、どうやらお取り込み中の様ですのでまたの機会に出直させていただきます
×××
尋と話していた銀髪の男は片眼鏡越しに露草色の瞳で品定めをする様にあなたを見つめる。
あなた
寮長室にギスギスとした空気が流れる。
×××
なるほど
×××
覗きとは良い趣味ですね
あなたの特待生
そ、そんなつもりじゃ… …!
あなた
お言葉ですが私たちが会話を聞いてしまったのは寮長室の扉が開いていたからです
×××
…ほう
あなた
聞かれたくないのであれば、事前にしっかりと施錠しておくべきでは?
あなたは2人の冷たい視線に臆することなく、感情の読めない琥珀色の瞳で彼らを見つめる。
…チッ
尋は更にイラついた様子で舌打ちをした。
塔真
こいつらに「マッチ」使っとけ
塔真
承知しました
塔真と呼ばれた男は「泡沫マッチ」を片手にあなたとあなたの特待生に近づいた。
あなた
「マッチ」を使っても意味はありませんよ
塔真
あなた
彼女は『呪いの影響で「マッチ」が効かない』と入学式の日に理事長から説明があったはずですが
塔真
…なるほど、貴方が
ほんとか?
塔真
ええ、たしか「特待生」と呼ばれていたはずです
…なら、その生意気な女にだけ使っとけ
塔真
…残念ながら、彼女も無理そうです
あなたはゆっくりと上体を起こした。
塔真
ジャバウォックのブローチとベストを身につけています
(ジャバウォック… この女も「グール」か)
尋はゆっくりと優雅に、しかし威圧的にあなたとあなたの特待生に近づくと、ドンッと扉を足で閉めた。口に咥えているタバコから煙が立ち上がる。
あなたの特待生
ひぇっ… …
あなた
怯えて声を漏らすあなたの特待生に対してあなたは堂々としていた。恐れも怯えも何もない。ただただ底なし沼の様な琥珀色の瞳で尋を見据える。
俺の部屋は「怪異」で音を遮断してる
仮にお前らが泣き叫んでも誰も助けには来ねぇぞ
あなたの特待生
す、すみませんでした… …
あなた
わかったら二度とその面を見せるな
あなた
ご寛大な判断、感謝いたします。それでは
塔真、お前もだ
塔真
尋はそれだけ言うと室内の奥に戻った。
あなた
…行きますよ、あなたの特待生先輩
あなたの特待生
え、あ、はい
あなたの特待生
(ど、どうしよう…)
あなたは改めて頭を下げると、困惑する彼女の手を引いてスタスタと部屋を出た。
塔真
(まったく…)
続いて塔真も眉間に指を当てながら寮長室を出て、あなたとあなたの特待生の姿を探すが2人はもう廊下のかなり離れた場所にいた。
塔真
(ここまで離れられたら追いかけても無駄、か)
塔真は諦めた様に肩をすくめ、スタスタと先を歩く2人の背中を見つめた。
塔真
それにしてもあの女性、なかなか面白い方でしたね
塔真の呟きは誰にも拾われることなく氷の城の氷の廊下にこだました。
スポットライト枠
.゜➕.゜➕.゜➕.゜➕.゜蓮⚖️.゜➕.゜➕.゜➕. 様(間違っていたらすいません!)
無機質 様
🍒莉々奈 サボり魔 様
Akari 様
スポットライトありがとうございます!

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