力也side
可愛い雀のさえずり。
程よく顔を出す太陽。
いっやぁー最高の朝だな。
職員室から見える、
小さな遊具たちが散らばる運動場には
まだ賑わう声は聞こえてこない。
なんてったってまだ朝の7時30分。
そろそろ登園早めの生徒が来る頃だが…
よしきた!
ライオンのような大きな声で、
今日も小さな巨人が満面の笑みで俺を呼んだ。
いやぁなんというか、癒しだな。
自然体な様子の山本さんは、実は結構頭がきれる。
行事事では毎度お世話になっている始末だ。
それでいて俺よりも年下って聞いて、もっと驚いた。
しっかりしてんなぁ。なんて浸っていると、
なにやらガヤガヤと、
それはもう楽しげな声が聞こえてきた。
カーニバルか?
ここはブラジルなのか?
てか、歌詞ひとつも歌ってないからね。
え、なんかそれは普通に気になる。
歌が尋常じゃないほど上手いと、
この保育園内で話題の陸さん。
それは是非とも拝聴させていただきたいところ!
わくわく。
わくわく。
わく…ん?
あ、やべ。
これはやべぇやつだ。
「龍、行こ!」と、小さなふたりが手を繋いで
教室に走っていってしまった。
俺の注意は、一応耳に聞きいれたのか、
今度は早歩きへと変化した。
まったく、あの暴れん坊少年ってやつは。
翔平が忘れていった水筒を俺に渡しながら、
陸さんはペコペコと頭を下げた。
嵐の如く畳み掛け、
あっという間に行ってしまった陸さん。
なんか子は親の背中を見て育つっていうけど、
どうやらそれは本当らしい。
忙しくて愛おしい親子だなぁ。
常々思う、そんな朝。
そして陸さんが去った直後、
3人の手を引く川村さんが現れた。
でも何だか、昂秀の様子が変だ。
俺が屈んで昂秀と目線を合わせると、
何やら不安げに川村さんを見上げた。
すると昂秀は俺の方に向き直り、
ゆっくりと口を開いた。
俺の言葉に、先ほどのどんより顔が
一気にぱぁっと明るくなった。
そして気づいた時には、
既に昂秀は教室に入っていった。
俊敏すぎるでしょ。
反省してんだか、してないんだか。
すると、フリフリと横に振られる首たち。
これは今日も涙のお別れコースは免れない。
ぎゅっと川村さんの服を握っている樹。
溢れ出る「嫌だ」感。
段々慎の目には涙が溜まってきてるし、
樹は頑なに川村さんから離れようとしない。
……泣きたいのは俺の方だよ!
あらら、遂に、遂にだよぉ。
困った。
これは今日も困った。
俺がいつものように、
永遠のふたりを切り裂く悪魔の如く、
慎と樹を川村さんから強引に引き離そうとすると。
救世主登場!
きっと反省してないだろう星人が助けに来てくれた←
よし。ひとまず慎は大丈夫そうだ。
残るは、未だコアラな樹。
あ、猫だ。
未だ、猫な樹←
あぁ!神様、仏様、翔平様!
俺は今日、奇跡的に悪魔への道を免れた。
ふぅ!一汗かいたぜぇ!
なんとか
なんとか!
無事に今日も激闘の歓迎を終えることが出来た。
毎度毎度、沢山笑うし、沢山苦労する。
だけど何だかそれが楽しくて、
とてもやりがいを感じられる経験のひとつでもある。
なんてまとめちゃってるけど、
大変なのはここから。
まだ第一関門を突破したくらい……
よしっ!気合いいれるか!
ちくしょう。
さぁ、2回戦の開幕だ。
next story……












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!