_________人?
気付けば、周りには人が横たわって居る。
少し驚いた俺は、其の人達の様子を見る為に駆け寄り屈む。
大丈夫か、と声を掛けるも返答は無い。
何か足に冷たい感覚がした。
何かと思って見れば、
俺の足にはべったりと赤い液体が付いていた。
真逆と思って其の人を見る。
見たが其の人の腹は、もう既にばっさりと切られ、無惨に成って居た。
何故…
両手で其の人を抱えようとする。
其の時、足元でキン 、と金属が落ちる音がした。
足元に落ちて居たのは、
刀。
刃には血が滴る。
確かに先刻まで何かを握って居た感覚が未だ右手に残って居る。
俺 が …
俺 が …?
俺 が殺 し た …?
俺が、
──────────────────────────
────────────────────
俺は横に在る時計を見る。
<現在時刻 4:30 .
……最悪の初夢だ、。
今日は1月10日、
新年が明けてから十日目。
今更乍今日新年初めて夢を見た、が…
未だ流石に早いが、もう一度寝る気にも成らないので起きる事にした。
起き上がって、布団を綺麗に3つ折りにする。
各々を積んで、部屋の隅へ。
然して朝食を作る。
基本朝食は白米に焼き魚、青菜の浸しに豆腐の味噌汁。
牛鍋は好きだが、月に1回程食べるか食べないか。
何時も通り作って、何時も通り食べる。
食べ終わったら新聞に目を通す。
其の後出社用の服装に着替え、自分の社員寮部屋の鍵を掛ける。
此処迄本当に何時も通りの生活。
此れを世間一般、"ルーティーン"と呼ぶのだと思う。
然し何故か心が落ち着いて居無い。
矢張り朝見た初夢、だろうか。
俺は又はぁ、と溜息を付き、家を後にした。
と云っても未だ6:30、出社には早過ぎるので外を散歩する事にした。
未だ外は薄暗いが、此の時間の散歩も悪く無いな、そう思う。
散歩の途中には一匹の三毛猫を見付けた。
個人的に猫は好きな為、こっそり懐に忍ばせて居た煮干しを見せて見る。
然し、其の三毛猫は煮干しを見る也素早く垣根の方に逃げて仕舞った。
矢張りまたか、
そう思い煮干しを片付けようと思ったが、垣根の方からガサガサと音がする。
何かと思えば、先程の三毛猫ともう1匹違う三毛猫が走って来た。
餌を分け合う為に連れて来たのか、
もう1つ煮干しを出さなければ。
そう考えると、自然と口から笑みが零れる。
2つの煮干しを咥え、少し此方を見た猫2匹は又垣根の方に走って行った。
まるで「有難う」と云って居る様に。
俺は腕の腕時計を見る。
猫に遭遇する前も歩いて居たので、針はもう7:30を指していた。
辺りもすっかり明るく成って居た。
玉には何時も依り早くても良いだろう、
そう思い足を探偵社に向けた。
____________夕方。
今日も平凡な1日だった。
______と終わりたい所だが、矢張りそうは行かなかった。
彼の初夢の所為か、今日は皆の様子が少し違う。
何処か鏡花はそわそわ、と云うか何か楽しみそうだ。其れに、敦や乱歩は朝からずっと可笑しい、挙動不審なのだ。
何でかと不思議に思うも、全てが初夢の所為だと思ってしまう。
……忘れよう。
こう心に決め乍、国木田に終業後来て欲しいと頼まれて居た場所に行く。
場所は何時もと変わらない、探偵社のドアを開ければ一番に入る社員が仕事をする場所。
然して、部屋のドアを開ける___
何をして居るのだろう。
社員が全員集まって何かを囲んでいる。
又、鏡花と与謝野は器、の様な物を机に並べている。
全員が此方を向いて「社長、」と云うので何が有ったかと内心少し心配に成る。
乱歩が国木田の言い終わる前に口を挟む。
然し国木田は受け入れて居る様子、
…そうか、今日は1月10日、
俺の誕生日、
あなたの下の名前や与謝野に云われるが儘、用意された席に座る。
真ん中に置かれた鍋は、もう既にぐつぐつと火が通って来ていた。
嗚呼。
嗚呼。
何て良い日だろうか。
与謝野はふ、と笑って自分も鍋を取りに行った。
_________後日、社長室にて。
…………使い易。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!