美散のことを呪っている目の前の人物に。俺が。
何を聞いても、理解できない気がした。いや、理解を拒む気がした。
美散を乗っ取って何かを伝えようとしている奴に、俺は何を聞いたら納得できる?
“美散にかけられた呪いの詳細”
それが、最も聞くべきことなはずだ。けれど、どうしても口が動かない。
こんなに呪いを発動した者が意思を持ち、相手の体を侵食するレベルの呪いに、今まで出会ったことがない。
それほどまでに、大きな、強大な呪い。
呪いの代償はかなり……いや、命を奪うレベルに大きいはずだ。
……これは俺の恐れだ。
美散がずっと、自分の事情を隠しているのは知っていた。それが、美散の人生に関わることだということも。
でも、この十数年、ずっと放っておいた。
美散がいなくなるという事実から、目を背けたかったから。
だから、美散が呪われていたという事実にさえ、今まで気づけなかった。
とはいえ、ここまで強大な呪いに今まで気づけなかったことも疑問だ。
美散とコイツが、隠すのが異様に上手かったとしか考えられないが……
だからこそ、今聞くしかない。
聞かなければ、何の対策もできない。何もできないまま、美散は俺達の目の前から去ってしまう。
だから、言わなければ。聞かなければ。
呪いの代償を!
そう言って微笑む目の前の呪いは、普段の美散と同じ笑い方をした。
何かを悲しむようで、それでいて儚い。そんな笑顔。
それに、いくつか引っかかることがある。
ハロウィンのとき、こいつと美散がしていた会話。
それは、美散に「生きていてほしい」と願っていたものだったはず。
途中で美散に遮られてしまったけど、俺ら三人にお願いしようとしていたことは、さっき俺に告げた内容に他ならないだろう。
けれど、美散は多分、最後までこいつといることを望んでいる。
それはつまり、呪いに蝕まれて終わる───死ぬことと同義だ。
その言葉を最後に、美散はその場に倒れた。
慌てて近寄ると、規則正しい呼吸音が聞こえ、胸をなで下ろす。
さっきあいつが言っていたように、眠っているだけらしい。
とはいえ……
美散のことを。
これで今回の任務は終わりだ。元凶は美散が討伐し、それ以外の魔の被害ももう大丈夫だろう。
本来ならば、これで一息つけるはずなのに。
───よりにもよって、一番厄介な問題が残ってしまった。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。