前の話
一覧へ
次の話

第1話

桜の下は一方通行
1,103
2022/04/01 00:00
僕は今日も貴方に向かって話しかける。
貴方の花が咲くような笑顔が
貴方の独特な世界が
貴方の包み込んでくれるような声が
ゆあん
僕は大好きです。
今から、春のように一瞬にして過ぎ去った
僕と貴方の大切な思い出を話します。
ゆあん
「はぁ…」
ゆあん
冬休み明け。
僕はため息をつきながら
靴を履き替える。
ゆあん
やっと授業終わった…。
冬休み明け一発目の授業は疲れるな
ゆあん
なんて思いながら。
ゆあん
昇降口をでて僕は、
うつむいた顔を上げる。
ゆあん
その先には…
ゆあん
「ーっ!」
ゆあん
澄んだ群青色の目に
風でなびく紺色の髪
透きとおるほど白い肌に
凛とした姿。
ゆあん
僕は釘付けになり、
その場で呆然と立ち尽くす。
ゆあん
そんな僕に気づいた彼は、
「どうしたの?」
というように首を傾げて微笑する。
ゆあん
しかし、そんな笑顔に
不意を打たれ声が出なくなってしまう
ゆあん
彼は困惑した顔で
???
大丈夫?
ゆあん
と聞いてくる。
ゆあん
「い、いや…なんでもないです。」
ゆあん
「ただ、初めて見た人だな…って。」
???
「あぁ、そういうこと」
なおきり
「僕はなおきりっていいます。」
なおきり
「今日からこの学校に
 転校してくることになりました。」
なおきり
「君の名前は?」
ゆあん
「ゆあん…です。」
なおきり
「…ゆあん…くん」
ゆあん
「え?」
なおきり
「いや、いい名前だなって!」
ゆあん
そう言って笑う彼なおきりさんの顔は
夕日よりも眩しかった。
ピピピッピピピ
目覚ましの音がなる。
ゆあん
僕は目を覚ます。
ゆあん
昨日、なおきりさんと出会って、
僕はずっとなおきりさんのことばかり
考えていた。
ゆあん
早く会いたい。
もっと話したいと思ってしまう。
ゆあん
「俺、変だな笑」
ゆあん
俺は朝の支度を済まして
学校へ行く。
授業中
先生
次回小テストをやる。
範囲は冬休み前までだ!
きちんと復習しておくように。
ゆあん
「うげっ」
ゆあん
やばいやばい
明日テストかよ!
なんで今言うんだよ!
ゆあん
今日は…ゲームやる時間ないな…
ゆあん
学校終わったら図書館にでも行こう
図書館
ゆあん
「えーとここがこれでこれが…」
ゆあん
ゆあん
「あーもう!分っかんねぇよ!」
ゆあん
「なんだよこれ国家試験かよ!」
図書館の人
「あの…図書館ではお静かに…」
ゆあん
「あ、すみませんほんとに」
ゆあん
僕は同時にすごく顔が熱くなる
ゆあん
「こんなとこなおきりさんに
見られてたら…」
ゆあん
「死ねるな。俺」
なおきり
「僕がどうしたって?」
ゆあん
「あぁ〜!!」
ゆあん
やばい。とっさに叫んでしまった
ゆあん
図書館の人の視線こえぇー
なおきり
「ちょちょ!静かに」
ゆあん
「いや二回目はなおきりさんの
 せいですよね!?」
なおきり
「まぁまぁ。落ち着こうぜ。少年」
なおきり
「僕は本見てたら
 叫んでるゆあんくん見て
 声掛けたんだ」
ゆあん
「叫んでるゆあんくんw」
ゆあん
「あぁーそんなんすね?」
ゆあん
「俺数学の勉強してたら、
 意味分かんないのあって発狂
 してたんですよね」
なおきり
「そうなんだ」
なおきり
「よかったら僕教えるよ?」
ゆあん
「え、いいんですか?」
ゆあん
「ていうか勉強できるんですか?」
なおきり
「えちょ、失礼じゃないw?」
なおきり
「まぁまぁ、見とけって」
ゆあん
「あ、えぇとこの部分なんですけど」
なおきり
「あぁそこか…難しいよね
 僕も最初教科書投げたもん」
ゆあん
「ファンキーすぎません?」
ゆあん
「えぇと…ここは…」
なおきり
「あぁそこゆあんくん
 もっと簡単な解き方あるよ」
なおきり
ガタッ(ゆあんくんの方に寄る
ゆあん
いや顔近っか!
まつ毛なが!
やばい緊張してきた
なおきり
「ゆあんくん?おーい」
ゆあん
「ふぁい!?」
なおきり
「何その声wかわい」
ゆあん
「からかわないでください!プイ」
ゆあん
そんなことを話しているうちに
いつのまにか日が暮れてしまった
図書館の人
「そろそろ閉館の時間です」
なおきり
「え!もうそんな時間!」
ゆあん
「あっという間でしたね」
なおきり
「はい!すごく楽しかったです!」
ゆあん
「俺も!」
なおきり
「それじゃあまた!」
ゆあん
「はい!また明日」
ガチャ
ゆあん
「ただいま〜」
ボフッ(ベッドに飛び込む
ゆあん
「あぁやっば〜、」
ゆあん
「俺絶対顔赤くなってたじゃん」
ゆあん
「はっず…」
ゆあん
「でも、もっと話したいな…」
ゆあん
「って」
ゆあん
「何だ俺!乙女か!」
ゆあん
「もー!なんなんだよこの気持ち!」
ゆあん
「こういうときって誰かに相談する
 もんなのかな?」
ゆあん
「一回知恵袋で聞いてみよう!」
ゆあん
「えぇと」
ゆあん
「【最近会った同性の先輩がいて
  その人と会ってから
  なんかずっとモヤモヤして
  変なんです。
  どうすればいいかでしょうか】」
ピコン
ゆあん
「返信早っ」
回答
【それは、恋というやつだぜ☆】
ゆあん
「なんだこいつ」
ゆあん
「でも、恋か」
ゆあん
「そうだとしたら…俺は…」
ゆあん
「どうしたらいいんだ?」
ゆあん
「はぁ…もう寝よ」
ゆあん
「おやすみなさーい」
ゆあん
「ん…外明るいな」
ゆあん
「今の時間は…」
スッ(時計を見る
ゆあん
「よし!見なかったことにしよう!」
ゆあん
「いやでも今日休んだら…
 なおきりさんに
 せっかく教えてもらったのに」
ゆあん
「まだ間に合うぅ!!!」
ガチャ
ゆあん
「いってきまぁぁす!!」
ゆあん
「はぁはぁ…なんとか間に合った~」
先生
「えぇーでは
 前回予告していた通り
 テストするぞ」
ゆあん
「分かる!わかるぞ!
 解ける!とけるぞ!」
先生
「ゆあん。うるさいぞ〜」
ゆあん
「あ、すみません」
ゆあん
「終わった〜」
ゆあん
一日の授業が終わって
俺は前とは違った気持ちで
昇降口を出た
ゆあん
その先には
ゆあん
女子から告白されている
なおきりさんの姿があった。
ゆあん
「え?」
ゆあん
僕はとっさに近くの物陰に隠れ、
その様子を聞いていた
モブ女子
「お願いします!
 付き合ってください」
ゆあん
告白している女子は
学校でも人気の人だった
ゆあん
「聞きたくない…」
ゆあん
きっとなおきりさんは
はい、と答えるだろう。
見た目もそうだけど、
なおきりさんは優しいから
傷付けないように…
ゆあん
「俺、馬鹿だなぁ」
ゆあん
「知恵袋に聞かずとも
 あのとき会ったときから
 俺はなおきりさんのことが…」
なおきり
「ごめんね」
なおきり
「僕は君とは付き合えない」
ゆあん
「!?」
モブ女子
「言いたかった、だけです…」
タッタッタッタッタ
なおきり
「…バレバレだよ。ゆあんくん」
ゆあん
ビクッ
なおきり
「そんなに驚かないでくださいよw」
ゆあん
「だ、だってぇ」
ゆあん
本当ならここで告白するべきだろう
ゆあん
でも
ゆあん
「いえないよ」
なおきり
「え?」
ゆあん
「いや、なんでもないです」
なおきり
「あ、そうそうゆあんくん!」
なおきり
「今度一緒に遊ばない?」
なおきり
「一緒に行きたいところがあるんだ」
ゆあん
「はい!もちろん!」
ゆあん
「いつにしますか?」
なおきり
「僕は3月がいいかな…」
ゆあん
「じゃあ、3月31日にしましょ!」
なおきり
「っ!」
ゆあん
「あ、予定…ありましたか?」
なおきり
「いや?じゃあ決定ね!」
ゆあん
「はい!」
3月31日
ゆあん
今日はショッピングモールで
なおきりさんと遊ぶ予定がある
ゆあん
待ち合わせの場所で
俺が待っていると…
モブ女子
「あ、おにいさーん」
モブ女子
「すいませーん」
モブ女子
「今時間あったら
 私達と遊びません?」
ゆあん
「あ、いえ
 友達と待ち合わせをしているので」
モブ女子
「そんなこと言わずにぃ」
なおきり
「あの?俺の彼女になにしてんの?」
モブ女子
「え?」
モブ女子
「か、彼女?」
なおきり
「はい。
 俺達付き合ってるんですけど」
モブ女子
「え」
モブ女子
「も、もういこう」
モブ女子
「し、失礼いました〜」
なおきり
「あぁー!」
なおきり
「ちょーびびったー!」
ゆあん
「あ、ありがとうございますっ」
なおきり
「ふふっどういたしまして!」
ゆあん
「じゃ、じゃあまわりますか」
なおきり
「おっけー!」
ゆあん
「いや〜本当に楽しかったです!」
ゆあん
「今日はありがとうございました」
なおきり
「はい!僕も楽しかったです!」
ゆあん
「じゃあ、これで…」
なおきり
「待って!」
ゆあん
「はい?」
なおきり
「さいごにいきたい場所があるんだ」
なおきり
「一緒に、行きたい!」
ゆあん
「プッははは!」
ゆあん
「なんでそんなに片言なんですかw」
ゆあん
「よろこんで!」
ゆあん
「僕も言えてないことがあるので!」
なおきり
「ありがとう!」
なおきり
「こっち来て!」
ゆあん
そこには大きな桜の木があった。
ゆあん
「綺麗〜!」
なおきり
「そうなんだよね」
なおきり
「僕ゆあんくんに伝えなくちゃ
 いけないことがあって!」
ゆあん
「ちょっと待って下さい」
ゆあん
「俺から言わせてください!」
ゆあん
「俺、なおきりさんのことが
 ずっと好きです!」
ゆあん
付き合ってなんて言えない。
だから、この気持ちだけでも!
ゆあん
そう思い、
なおきりさんの方を見ると
なおきり
ポロポロ
ゆあん
泣いていた
なおきり
「ほんとにっ僕なんかでいいの?」
ゆあん
「はい!なおきりさんだからです!」
なおきり
「あぁ…ウグッ」
なおきり
「ありがとう!」
なおきり
「僕もゆあんくんのことが」
なおきり
「大好きです!」
ゆあん
「あ、あぁグスッ」
ゆあん
「大好きです!」
ゆあん
その言葉と同時になおきりさんの
体が透ける
ゆあん
突然の出来事だった
ゆあん
それなのに何が起こるのか
分かってしまうようだった。
なおきり
「ごめん、ごめんねっ」
なおきり
「さっき言いかけた言葉の続きだよ」
なおきり
「俺っ今日で消えるんだ…」
ゆあん
頭が真っ白になる。
ゆあん
信じたくない
いつもの調子だったら
嘘だって笑えてた。
ゆあん
でも、俺の前に広がる光景は本当で
嘘だと思いたい
嘘だと思えない
ゆあん
「なんでっなおきりさんなのっ」
ゆあん
「なんで消えなきゃいけないのっ」
なおきり
「ごめんねっゆあんくん」
なおきり
「僕が今日遊ぼうって言って」
なおきり
「日付が決まって」
なおきり
「それが今日で」
なおきり
「僕最低だけど」
なおきり
「消えるときに
 自分の大好きな人
 自分を大好きだと思ってくれる人」
なおきり
「一緒に消えられて嬉しかったんだ」
ゆあん
「っ」
ゆあん
「そんな悲しいこと言わないで」
ゆあん
「僕はなおきりさんと
 初めて会って一目惚れしました」
ゆあん
「ずっとずっと好きでした」
ゆあん
「だから、なおきりさんが
 消えるのなら…!」
ゆあん
そういうと
なおきりさんは俺に抱きつく。
なおきり
「やめてっ!」
なおきり
「僕の我儘だって分かってる
 僕を大事にしてくれている人に
 こんなことを言うのは
 間違っているのかもしれない」
なおきり
「それでも!」
なおきり
「ゆあんくんには
 笑って生きていてほしいよ!」
ゆあん
「っそんなの!」
ゆあん
あまりにも残酷すぎるよ…
ゆあん
「なおきりさんは消えて
 僕だけが生きているなんて」
なおきり
「最期のお願いだよ」
ゆあん
なおきりさんは
消えかかっていて、
俺は抱きしめる力を強くする
ゆあん
もうすぐだ、と実感する
なおきり
「僕は、ずっとずっと前から
 ゆあんくんのことが」
なおきり
「大好きです!」
なおきり
「だから、君には」
なおきり
「僕の分まで」
なおきり
「生きて生きて生きて生きてほしい」
ゆあん
「分かりました…!」
ゆあん
「約束ですよ!」
ゆあん
「いつか絶対!会いに行きます」
ゆあん
そう言った直後、
唇に柔らかい感触。
なおきり
「また、いつか!」
ゆあん
そう言ってなおきりさんは消えた。
ゆあん
「ウグッあぁ…」
ゆあん
僕はそこで堪えていた涙が溢れる。
ゆあん
唇にはまだ感触が残っていて、
体中を覆っていた温かさもあって、
でも貴方はそこにいなくて
ゆあん
未だ静かに舞い続ける
桜の花びらが憎らしく思えた。
ゆあん
「グスッあぁヒグッ」
ゆあん
言葉じゃ表せないほどの
哀しさと悔しさで、
僕は嗚咽をこぼす。
ゆあん
気づいたら日付が変わっていて
親からくる電話の音も
気にならないほどに。
ゆあん
「また、いつか」
ゆあん
僕はそう言葉をもらした。
そうして、今に至る。
僕は今日もなおきりさんに
話しかける。
もちろん、
返ってくることはないけれど。
桜の木の下で僕は毎日話しかける。
ゆあん
「大好きですよ」
なおきり
「大好きです」
君は笑って返してくれた気がした。
END

プリ小説オーディオドラマ