第41話

#29︰ストーキングお嬢様 ‐終‐
32
2024/12/01 13:25 更新
無茶だ。あんまりだ。意地悪だ。
冗談抜きで嫌がらせだと思う。いや、でも勝手に追いかけてるのは俺の方だったか。
俺は友達から借りた部活用チャリ自転車。白石は黒塗りのリムジン。
わざわざスモーク入りの窓を開けて挑発してこないことから悪意は無いことが感じ取れるが、それでも自転車で車に追いつくというのは至難の業である。
それにこのリムジンが向かう先はどう考えても星香の家だ。
何が目的なのかは分からないが、万が一だ。星香が心配なのは俺も充分分かるが、だからと言って人が人だ。
悪いがあいつを星香の家に行かせることはちょっとよくない事態を招きそうな予感がした。
それでも、歩道橋や自転車しか通れないような抜け道を使うと案外追いつけるものだった。
星香の家に着くのも、向こうのほうが早かったが差は15秒ほどだった。
白石 美香
白石 美香
あら、ついてこれていたんですか。
やっと停車したリムジンから、白石が下車して俺の方を向いた。
本川 正晴
本川 正晴
なんとかな...!それより、そこから先は星香の家の敷地だ。入ることは許されてないはずだぞ。
俺は疲れを見せないために、少し強めの口調で言った。
白石 美香
白石 美香
なぜでしょう?お友達の家を訪問するだけですが...そういうあなたも、この敷地をまたぐことはできないってことでしょうか?
本川 正晴
本川 正晴
俺は星香の友達だから入れるんだ。
白石 美香
白石 美香
私もその”お友達’ですよ?
少し、白石の言い方が強くなった気がした。
白石 美香
白石 美香
それに、私と星香さんの友情に、なぜあなたが口を挟むんでしょう?
本川 正晴
本川 正晴
お前は人が人だ。何をしでかすかも分かんないだろ。
白石は呆れたようにため息をついた。
白石 美香
白石 美香
知ったような口を叩くのですね。
本川 正晴
本川 正晴
...ある知り合いから全部聞いてんだよ。
爽人なら、きっとこう振る舞う。
本川 正晴
本川 正晴
お前が星香を付け回してんのも、...ペットにしようとしてんのも...全部聞いてるんだよ。
白石 美香
白石 美香
・・・
白石は目を細めて言った。
白石 美香
白石 美香
そうです。...私は星香さんを一生、飼ってあげようと目論もくろんでいます。だって...
少し頬を赤らめた彼女は、目を閉じて両手を自分の頬に当てて言った。
白石 美香
白石 美香
だって...私は星香さんに一目惚れしたんですもの。あの透き通るほどの肌に恵まれた顔...!人を魅了する独創的な目にサラサラで長い髪!獰猛どうもうな性格を少しでも隠そうとする健気な姿...!他にも可愛らしい仕草や感情に素直な所や細い腕なのに人並み以上の力や華を育てるのが得意な所や手作りの弁当を幸せそうに頬張る姿や溜まった疲労で授業中ウトウトしている顔やその後ガタッとなって目が覚めた時の顔やそれとは逆で勉強に取り組んでいる顔や先生気取りで伊達メガネをかけている姿もカラオケでは絶対にキューティーハニーを歌う所やホラー映画で怯えている顔や寝顔はもちろん、暑い日に薄着で扇風機の前に居座る姿も日焼けが嫌で海ではずっと砂に埋まっている姿も暇すぎて雲の数を数えている姿も飽きて寝転がる姿も猫が好きなのに猫に嫌われている所もフォー◯ナイトで敵を倒すことしか考えてない姿も夜遅くまでスマホを触っている姿もその後フワ〜って欠伸あくびをする姿も届かない本棚に脚立を使ってもなお届いていない姿も今もさくらんぼの抱き枕と寝ている所もイヤホンが左右逆の時がたまにあることもPCのタイピングは遅いのにスマホのタイピングは早い所も寒がりな所もピノは一個もあげない所や踊ってみた動画を撮ろうにもまず踊れない所も後輩に膝枕をしてもすぐ起き上がられる所も[規制]が擦れて[規制]になる所や昔罰ゲームでブラジリアンワックスを使ったことで鼻の中の毛根が死んだ所も好きな色が実は無いことも迷路が苦手な所もたまにする悪い顔も特定の年上には妹のように可愛がられている所も全部全部全部全部全部全部全部全部全部!!!
私には全て魅力的に見えます。
それほど佐藤星香は周りを良い意味で狂わせるのです。だからそんな星香さんが傷つかないように私が星香さんを飼うんです。
読者の皆はこれを全て読んだのだろうか。
俺はもう目眩がしてきた。もう俺の手には負えないレベルまで、こいつは進んでいたのだ。
でも確かに、こんな奴なら心配は無いのかもしれない。
それでも危険だ。...いや、危険では無いのかもしれない。今のえげつない量の情報から、こいつがどれだけ星香に夢中なのかは嫌というほど分かる。
白石 美香
白石 美香
...すみません。少し取り乱してしまいました。だって星香さんは...
本川 正晴
本川 正晴
わ、分かった!俺の負けだ!だからもう行ってくれ!
逆にこういう奴しか、星香を扱えないのかもしれない。
それに、'ペットにする'とは言っても恐らく正面から星香を知りに来るだけだろう。ストーカーもする必要がなくなるから。
俺は頭を抱えたまま、星香の家に背を向けた。
白石 美香
白石 美香
何をしているのです?あなたも星香さんが心配で来たのでしょう?
本川 正晴
本川 正晴
いや、だって...
白石 美香
白石 美香
あなたも星香さんを大切に思っていることは、必死になって自転車を走らせ、今ここにいるということでもう既に証明されています。
それに、と白石が続ける。
白石 美香
白石 美香
部活をサボってまで星香さんを優先するようなかたに悪い人はいませんから。
白石にうながされて、俺と白石は星香の家のインターホンを押した。



























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蝶子
蝶子
先生、お疲れ様です。
「過去一狂気に満ちた'レギュラーキャラクター'を生み出してしまったかもしれない」と、頭を抱えている葛作先生に、私はただ労いの言葉をかけることしかできなかった。

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