前の話
一覧へ
次の話

第19話

世界の日常と非日常【9】
65
2025/09/24 13:00 更新
あなた Said
休日の朝、あなたの叶さんの呼び方は荷物を持って玄関に立っていた。
Kanae
事務所で急な収録入っちゃったから言ってくるね、夕方には帰るから待ってて
振り返って笑う彼その顔は、いつものように穏やかで、安心するのに、扉が閉まった瞬間、部屋の空気がひどく静かになった気がした。



今日は休日。

二人で過ごせると思っていた。

だからこそ、ぽっかりと空いた時間をどう埋めていいのかわからない。
あなた
まあ…たまには一人でゆっくりするのもいいか
口に出してみるものの、心は落ち着かない。


コーヒーを淹れて、テーブルに座る。

カップから立ち上る湯気を見つめていると、なぜだか余計に寂しさが広がっていく。

いつもの隣に大好きな彼が座って、何気ない話をしながら笑ってくれる光景が浮かんでしまうからだ。

気を紛らわせようとゲーム機をつける。けれど、コントローラーを握っていても楽しさは半分。
あなた
あー…これ、あなたの叶さんの呼び方とやるから面白いんだな…
そんなことを呟いて、すぐに電源を落とした。部屋に残るのは静かな時計の音だけ。

午後になると、窓から射し込む日差しが床に長い影を落とす。

ソファに体を預け、ぼんやりとその影を目で追う。

時間が進むたびに影はゆっくり形を変え、気づけば夕方の色へと移り変わっていった。

胸の奥がじわじわとざわめく。

別に何が不安なわけでもないのに、彼がいないだけで、部屋の広さがいつもより増して感じられる。
あなた
…早く帰ってこないかな
小さく呟いて、自分でも驚く。こんなにも待ち遠しいなんて。



玄関のドアノブが回る音がしたのは、そんな時だった。
Kanae
ただいまー
聞き慣れた声に心臓が跳ねる。ソファから立ち上がり、思わず玄関へ向かっていた。



ドアを閉める彼がこちらを見て、少し驚いたように目を丸くする。
Kanae
…そんなに待ってたの?
冗談めかした声に、胸がぎゅっと熱くなる。
あなた
別に…。ただ暇だっただけ
そう答えながらも、頬が熱いのをごまかせない。

彼は靴を脱ぎながら、にやりと笑う。
Kanae
ふーん…ほんとかな?
その声色に、どこか優しい温度が混じっていて、また胸の奥が騒ぐ。

部屋に戻ると、昼間の静けさはもうなかった。

二人で座るソファ、テーブルに置かれる買ってきたお菓子、そして何気ない会話の一つ一つが、こんなにも温かい。

やっぱり、この人と一緒にいる時間が一番心地いい。

そう思いながら、さっきまでの寂しささえ、ほんの少し愛おしく思えた。
毎回胸の奥が熱くなって頬が赤く染まるね。

これが私の手癖

プリ小説オーディオドラマ