第3話

1話
51
2026/06/26 13:21 更新









………どこかで、声がする









___
(……ん…?)




ぼんやりとした声だ




遠くの方で、誰かが何かを話している




けれど、言葉としてはうまく聞き取れない

___
(…誰、だ……?)



意識の底に沈んでいた自分が

ゆっくりと浮かび上がっていくような感覚がする




耳に届く声が

少しずつ輪郭を持ちはじめる

???
………んで
???
んで………?


まだ霞がかかったみたいに曖昧だ

___
…ぅう"………



喉の奥から、小さくうめき声が漏れた




その瞬間——

???
ハッ!?



驚いたような

年配の男の声が響いた




それに続いて

少し高めの女性の声が重なる


???
坊ちゃん?!
???
坊ちゃん、今…!


声が近づいてくる




足音も聞こえる




慌てて駆け寄ってくる

複数の足音



___
(誰だ…坊ちゃん…?)



まぶたが重い




どうにか開けようと力を込める

___
(…う………)



まぶたがわずかに震え、光が差し込む

___
……う……ん…


ぱちっ





眩しさに思わず目を細めながら

俺は目を覚ました



???
あぁ!坊ちゃん!
???
良かった…お目覚めになられたのですね!
???
とても心配したのですよ!
???
もう一週間も寝たっきりで!
???
全く目を覚まされる気配が無い
ものですから…



声のする方に目をやると…




そこには年配の男性と女性が立っていた




男性の方は執事のような恰好をしていて

女性の方はメイド服らしきものを着ている




二人は涙目でこちらを見ていた



___
……。



 
___
(…いや、誰?!)
___
(何ココ!?)
___
(どこだよ!?)
___
(病院……の雰囲気じゃないよな!?)
___
…あ、えと…こ、ここは?


喉が乾いていて

声がうまく出ない




それに

この声は俺の知ってる俺の声じゃない



___
(てか、声なんか変じゃね?)
___
(いつもより高いし…)
???
ここはフォリア樣の寝室でございますよ
???
はっ……!
???
もしや坊ちゃん、記憶が混乱して
おられるのですね!?
___
(まず、フォリアって誰だ?)
___
(…どっかで聞いたことある名前だな…)
???
無理もありません
???
フォリア樣は高熱をだされて
???
ここ一週間ほどずっと寝たきりで、一度も目を覚まされなかったのですよ
???
きっと喉が渇いているでしょう?
???
すぐにお水を持ってきますね!
???
それに早く主治医を呼んでこないと!
???
すぐに戻りますね!
___
は、はい…
そう言って女性は慌てた様子で出ていく。
???
そうだ、今一度自己紹介をしましょうか
???
私はフォリア樣の専属執事兼家庭教師を
しております
セラサ
『セラサ』と申します
セラサ
そして、先ほど出て行った彼女は
フォリア樣の専属メイドを務めている
『プル―ス』です
セラサ
思い出せましたでしょうか
___
あ、はい…
___
ありがとうございます…?










その後…




俺は訳も分からず

とりあえずプル―スという人が連れてきた

主治医と思われる人に診察された



医者
まだ少し気だるいかもしれませんが
医者
熱が完全に下がっていますし
もう大丈夫でしょう
セラサ
そうですか…
セラサ
ありがとうございます
医者
しかし…良かったですなぁ
医者
あのまま熱が下がらず
さらに上がっていら…
医者
…命が危なかったかもしれません
プルース
そんな!
医者
もしかしたらの話ですよ
医者
今はもう大丈夫です
医者
それでは、私はこれで
医者
フォリア樣、お大事になさってくださいね
___
はい…
___
ありがとうございました



医者は軽く頭を下げて部屋から出て行った

セラサ
診察でお疲れでしょうし
お休みになされますか?
___
あ~…そうですね
___
そうします
プルース
では、何かありましたらいつでも
お呼びください


そう言って

二人も部屋から出ていった





パタン





扉が閉まった瞬間

俺は緊張の糸が切れたように

起こしていた体をベッドへ倒す

___
………ふぅ…
___
…やっと一人だ



___
さて、と……



ベッドの上で軽く息を整えながら

ゆっくりと上体を起こし

今自分がいる部屋全体を見まわす




部屋にあるのは本棚に勉強机




ソファに四角いテーブル




クローゼット、ドレッサー




そして俺が今寝ていたベッド




落ち着いた配色で

家具の装飾はシンプルなものだが

一般家庭とは比べ物にならないほど豪華な部屋だ




そしてさっきからしていた違和感をはっきりと感じる




ベッドの高さも、 部屋の広さも

全部“自分が知っている感覚”とズレている



___
(てか……体、小さくないか?)



腕を見下ろす




細い




明らかに“子どもの腕”だ

___
……マジかよ…



混乱しつつも

まずは自分の姿を確認しようとベッドから降りる




足が床についた瞬間

ふらりと体が揺れた



___
うわっ…
___
(目線ひっく…!)



思ったよりも軽い体




重心の位置も全然違う



歩き慣れた自分の体じゃない




それでも壁に手をつきながら

部屋の奥にあるドレッサーへと歩く



___
(……ドレッサーって…)
___
(こんなにデカかったっけ?…)




木製の大きなドレッサー




細かな彫刻が施されていて

明らかに高級品だ




鏡は磨かれていて

部屋の光を柔らかく反射している



___
……よし





震える手で鏡の縁をつかみ

そっと顔を近づける




そこに映っていたのは——








俺じゃない








……けれど、どこか見覚えのある少年の顔だった











2026/06/26 更新・修正

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