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第5話

幹部視点②
96
2025/02/22 15:06 更新
ーータンタン視点ーー
香坂兄ちゃんがダイナマイトで倒れた。
それを知ったとき、言葉がでなかった。
最強の香坂兄ちゃんが…大好きな香坂兄ちゃんが倒れるなんてありえない…ありえない……!
体から嫌な汗が出て、心臓がばくんばくんと煩かった。
怖い、香坂兄ちゃんは、起きるよね…?
「…タンタン」
「辰巳…」
「香坂さんは必ず起きるから安心…しろ」
そういう辰巳の声も若干震えていた。やっぱり、小さい頃から慕っていた兄以上の存在が消えるかもしれないと考えると怖い。

その日の会議は何も考えられなかった。
**
「香坂さんが目を覚ましたらしい!」
「本当!?」
「ほんまか、良かった……」
「分かりきっていたことだ」
香坂兄ちゃんが目を覚ました、と聞いて本当に、本当に安心した。
とりあえず、辰巳と一緒に香坂兄ちゃんのいる病院に行くことにした。
交通法なんて無視して病院に急いだ。
とにかく香坂兄ちゃんの顔が見たかった。
なのに……なのに。
「どちら様ですか?」
胸がズキズキ痛い。喉が痛くて、また心臓がドクン、ドクンといってる。
嘘…だよね……?いつものジョークじゃない……の?
香坂兄ちゃんは本当に全部忘れていた。
マッドカルテルのこと、裏神のこと。そして…自分達のことを。
僕は泣いた。小さい時、教官に打たれた時よりも。
大好きな香坂兄ちゃんはもう、僕…僕達のことを忘れちゃったんだ。
僕だけじゃなくて、辰巳のことも、組織のことも。
涙か止まらない。
初めて教官に打たれた時のことを思い出す。
その時は香坂兄ちゃん、「立ちなさい」って言って慰めてくれた。
でもその香坂兄ちゃんは今僕達のことを覚えていない。
優しかった目が怖くなった。
辰巳も今にも泣きそうな、なんとも言えない難しい顔をしてずっと黙り込んでる。いつもなら、言葉をかけてくれるのに。

でもそれだけやっぱり辰巳も心が痛いのかな。
なんでこうなったんだろう。
マッドカルテルの奴ら、絶対許さない。死んでも絶対に殺してやる。
でもやっぱり、香坂兄ちゃんが僕達のことを思い出すまでは生きることにしよう。

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