前の話
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13歳の頃、ありったけのお小遣いを持って家出をした。
東京に行った。ニュースで見た、トー横に来たら私みたいな子がいっぱい居た。
ここが私の居場所なのだと思った。
家は辛くて苦しくて、でもここは私を受け入れてくれる。
それだけで安心するし、気が抜ける。
13歳で処女を捨てた。
でも平気。トー横で生きていく資金はヨユーで稼げた。
そんなこんなで2年が経って、私はある日、『ニーゴ』に出会った。
ニーゴに救われた。生まれて初めて生きたいと思った。
そしたらさ、出稼ぎの為に東京の浅草ら辺に行ったら、
奏っていう女の子に出会った。
その子がニーゴの作曲家だって知って、思わず興奮しちゃったよね。
そこから、えななんとかamiaとかyukiと仲良くなって。
私もニーゴに入れて貰ったりして、楽しかった。
家出して良かったと思った。
でも、そんな楽しい日々のせいで油断して、
警察に『保護』されて、無理やり家に戻らされた。
その日から、私の時間は止まったまま。
つまらなくて、死にたくて、トー横が恋しい。
私の居場所に帰りたい。
でも世間は許してくれない、本気で親に支配されるべきだって思ってんのかな、警察は。
だとしたら、あの人達は一生私の気持ちなんか分かんないんだろうな。
とにかく、死ねるならなんでも良い。
死にたくて仕方ないの。私だってこうなりたくてなった訳じゃないの。
兵庫になんか帰りたくなかった。
学校はつまらない。
…でも、楽しい事があるんだとしたら、私を認めてくれる人が居るのなら、もう少し生きていてもいいかな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!