その後、暫くして。
今年の新入生は誰も彼も問題児だという事がわかった。
ユウは異世界から来てしまったということもあって何かと不慣れで、それによって問題を起こす…(性格には巻き込まれている)という事が多々。
グリムは言うまでもない。謎の自信も相まって、問題の元凶となり得る可能性が大きい問題児。
そしてこの一人と一匹の他に、ハーツラビュルに所属するエース・トラッポラ、デュース・スペード。
なんと食堂のシャンデリアをぶっ壊すなんて事件を引き起こした。これに関してはあのカラスマスク野郎も可哀想…いや、いい気味だ。
新学期早々、問題を起こしているのは以上。全て一年生だということもそれなりに面白い。
『にゃんでこう、この学園の生徒はキャラが濃いのかにゃあ…』
『寧ろ薄味の生徒の方が少ないんじゃにゃいか?』
ユウ「あれっ、あなた?」
『おー、ユウじゃにゃいか』
ユウ「ごめん、今日は食べ物持ってないんだけど…」
『いいやつだにゃあ』
『でも大丈夫にゃ、今日はもうタダ飯食らった後だからにゃ』
今日のタダ飯はモストロラウンジで余った食材を調理して貰った、いわばまかない。
…まー勿論対価はちゃんと支払った。
”たまたま”アズールと契約していた生徒の弱みを握っちゃったので、それと交換したのだ。
今日作ってくれたのは双子のどっちだか知らないが、あいつらやっぱり料理は美味い。
フロイドの場合、気分で味が底辺にもなることが玉にキズだけれども。
エース「おーい監督生ーー!!…ってあれ、猫?」
デュース「…猫だな。トレイン先生の猫以外にも居たのか」
グリム「俺様のツナ缶はやらねえんだゾ!」
『だからもう飯は食ったって言ってるのににゃあ…』
エーデュース「「…喋ったぁ!?!?」」
ユウ「二人共何故そんなに…」
エース「だっっって猫喋ってんじゃん!!!」
ユウ「グリムも喋るじゃん」
デュース「それは…そうか」
エース「コラそこ納得しない!!」
エース「グリムは魔獣だからでしょーが!」
ユウ&デュース「「あ」」
『息ぴったりだにゃあ』
『まー驚くのも無理ないにゃあ、ただの猫だし』
エース「おまけに中々にゴツい首輪もついてるし…」
デュース「ああ、よく見てみれば首輪にしては凄い作りだな…装飾も繊細で豪華だ」
『色々ある首輪ってことだにゃあ、若造には関係にゃいけど』
「「「若造…」」」
少なくともコイツらよりは年季の入った生き物である。
自分の種類?種族?…なんかそーいうものは全然良くわからないけど、種類や種族によって寿命は違う。
例えば人間と妖精族はかなり寿命が違う。
特にリリアあたりはいったい何歳なのか……考えるだけ無駄だけど。
エース「お前、名前あなたって言うの?」
『そうだにゃ、にゃんか文句あるか?』
エース「違うけど…それ、誰がつけたの?」
ユウ「それは確かに。あなたって猫なんだよね?だったら名付け親が居るはず…」
『知らん』
デュース「!?」
デュース「お前、親が……!?」
『あーこらこらそこ、要らん勘違いをするんじゃにゃい』
グリム「じゃあ誰が名前をつけたんだ?お前にネーミングセンスがあるとは思えないんだゾ」
『カラスマスク野郎だにゃあ』
グリム「なるほど…つまりこの学園に来てから、あの野郎に名前をつけられた、ってことなんだゾ?」
『そゆこと』
グリム「やーっぱり俺様にかかればこんな問題、朝飯前、なんだゾ!」
ユウ「(あの人が猫に名前つけるとは思えないけど…そういうこともあるのか…?)」
デュース「カラス…」
エース「マスク…?」
デュース「この学園でカラスみたいで…」
エース「カラスっぽいマスクをつけてる人なんて…」
『お前らの想像通り、カラスマスク野郎は学園長のことだにゃあ』
デュース「学園長をカラスマスク野郎呼ばわり…!?!?」
エース「てか監督生をグリムはなんでそれで通じてるわけ!?」
グリム「俺様達が初めて会ったときも、そう呼んでたんだゾ?」
『あんな野郎はカラスマスクで十分だにゃあ』
エーデュース「「いやいやいや…」」
デュース「仮にもこのナイトレイブンカレッジの学園長…なのに」
エース「思ってたより大物なんじゃね?この猫」
『まー入学早々シャンデリアぶっ壊すお前らには負けるがにゃあ』
「「「う”」」」
ユウ「言っとくけど僕は壊してないからね!!」
『はいはい、頑張れよ若造』
問題児と名物猫の平凡な日常。
それが訪れると誰も信じて疑ってはいなかった。
これから何が起こるとも知らずに。
赤く気高く、高貴な一つの薔薇があった。
それはやがて鮮やかな赤から暗く重い赤へと変わり、最後には赤黒く染まり、花を散らした。
その薔薇は枯れ果てるか返り咲くか。
「首をはねろ!」
薔薇の女王の、薔薇の棘の様な声が響いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!