第15話

「会いたい、その気持ちが」
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2026/06/27 21:07 更新
夏休みが始まってから、毎日が少しずつ
違う色に染まっていく気がした。

学校のチャイムが鳴らなくなって一週間。
俺はベッドに寝転がりながら、天井を見つめていた。
エアコンの音が静かに響く部屋で、
スマホを握りしめる手が、少し汗ばんでいる。

先輩からの連絡が、今日もきていた。
夏休みになってから、連絡してくれる回数が増えた。

それだけで、今日も胸がいっぱいになる。




《おはよう。宿題捗ってるか?》




俺は思わず微笑んで、すぐに返信した。




《おはようございます!
宿題は順調です、先輩は元気ですか?》

《元気だけど、宿題全然進んでないわ 笑》




短いやり取りなのに、指先が熱くなる。
学校に通っていた頃は、毎日顔を合わせられた。
廊下ですれ違ったときの視線、
放課後に「またな」って言ってくれる声、
生徒会室での静かな空気。
今はそれが全部、スマホの画面越しだけだ。

俺はベッドから起き上がり、窓を開けた。
熱い風が部屋に流れ込んでくる。
夏の匂い__アスファルトの熱と、
どこか遠くの花火の残り香みたいなものが
混じっている。




「会いたいな……」




独り言が口から零れた。
最近、先輩との距離が縮まってきた気がする。
目が合うと少し長く見つめてくれるし、
連絡したときの返事も、前より丁寧になった気がする。

_でも、まだはっきりとした言葉はない。

(…いや、これって俺の勘違いなんかな…)








__








その日の午後、俺は自分の部屋で宿題を広げていた。
数学の問題を解きながら、
ふと先輩のことを思い浮かべてシャーペンが止まる。

すると、スマホが震えた。




《今週末、地元の夏祭りあるらしい》




次の瞬間、一瞬息をするのを忘れそうになった。




《一緒に行かないか?》




心臓が大きく跳ねた。
嬉しくて、嬉しくてたまらない。
きっと、俺は今、変な顔をしてるんやろうな。

(先輩に会えるんや…、!)

指が震えて、返信を打つのに何度も書き直した。




《行きます!
時間はいつがいいですか?》

《18時くらいに駅前でいい?》

《はい!大丈夫です!》

《よかった、じゃ、そこに集合な》




「行ける……先輩と、夏祭り」




俺はスマホを胸に抱きしめて、ベットに倒れ込んだ。
胸の奥が熱くて、苦しくて、でもすごく嬉しい。
夏休みの長い一日が、急に色鮮やかに感じられた。




「…はやく、夏祭りの日にならへんかな…」




小さく呟いた言葉は、
少し、浮かれているようだった。



あと、3日__。

待つなんて言葉を捨ててしまいたかった。

先輩と会える。

そう、思うだけで
たまらないほど、心は満たされていって
先輩に会いたい、という気持ちは、
膨らんでいった。

(…はやく、はやく、会いたい…)

わがままだけど、そう思う自分のことは
嫌いじゃない。

そう思えるようになってきたから。


“前よりも、成長してる”


確実にそう思えた。

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