夏休みが始まってから、毎日が少しずつ
違う色に染まっていく気がした。
学校のチャイムが鳴らなくなって一週間。
俺はベッドに寝転がりながら、天井を見つめていた。
エアコンの音が静かに響く部屋で、
スマホを握りしめる手が、少し汗ばんでいる。
先輩からの連絡が、今日もきていた。
夏休みになってから、連絡してくれる回数が増えた。
それだけで、今日も胸がいっぱいになる。
《おはよう。宿題捗ってるか?》
俺は思わず微笑んで、すぐに返信した。
《おはようございます!
宿題は順調です、先輩は元気ですか?》
《元気だけど、宿題全然進んでないわ 笑》
短いやり取りなのに、指先が熱くなる。
学校に通っていた頃は、毎日顔を合わせられた。
廊下ですれ違ったときの視線、
放課後に「またな」って言ってくれる声、
生徒会室での静かな空気。
今はそれが全部、スマホの画面越しだけだ。
俺はベッドから起き上がり、窓を開けた。
熱い風が部屋に流れ込んでくる。
夏の匂い__アスファルトの熱と、
どこか遠くの花火の残り香みたいなものが
混じっている。
「会いたいな……」
独り言が口から零れた。
最近、先輩との距離が縮まってきた気がする。
目が合うと少し長く見つめてくれるし、
連絡したときの返事も、前より丁寧になった気がする。
_でも、まだはっきりとした言葉はない。
(…いや、これって俺の勘違いなんかな…)
__
その日の午後、俺は自分の部屋で宿題を広げていた。
数学の問題を解きながら、
ふと先輩のことを思い浮かべてシャーペンが止まる。
すると、スマホが震えた。
《今週末、地元の夏祭りあるらしい》
次の瞬間、一瞬息をするのを忘れそうになった。
《一緒に行かないか?》
心臓が大きく跳ねた。
嬉しくて、嬉しくてたまらない。
きっと、俺は今、変な顔をしてるんやろうな。
(先輩に会えるんや…、!)
指が震えて、返信を打つのに何度も書き直した。
《行きます!
時間はいつがいいですか?》
《18時くらいに駅前でいい?》
《はい!大丈夫です!》
《よかった、じゃ、そこに集合な》
「行ける……先輩と、夏祭り」
俺はスマホを胸に抱きしめて、ベットに倒れ込んだ。
胸の奥が熱くて、苦しくて、でもすごく嬉しい。
夏休みの長い一日が、急に色鮮やかに感じられた。
「…はやく、夏祭りの日にならへんかな…」
小さく呟いた言葉は、
少し、浮かれているようだった。
あと、3日__。
待つなんて言葉を捨ててしまいたかった。
先輩と会える。
そう、思うだけで
たまらないほど、心は満たされていって
先輩に会いたい、という気持ちは、
膨らんでいった。
(…はやく、はやく、会いたい…)
わがままだけど、そう思う自分のことは
嫌いじゃない。
そう思えるようになってきたから。
“前よりも、成長してる”
確実にそう思えた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。